後日談
その日以来、彼女と話すことはなかった。
わたしを見てほしい――そんなワガママが、突き通せるわけないだろ。
僕は相変わらず、空蝉あさぎの配信を見ている。何も変わらず、オタクたちの奴隷として、一つ低い次元で、今日もご主人さまたる我々に幸せを振りまいている彼女を。
……やっぱり、強い。僕なんかは、こんなことは絶対にできないだろう。まだまだ僕は子どもだ。
***
2年ほど経った。
時が経つのは早いもので、僕はもう大学二年になる。……大学でも、僕は未だに「好き」を見つけられていなかった。
空蝉あさぎは、引退した。それどころか、Vtuber界隈は衰退の一途を辿っている。数々の炎上、ビジネスモデルの破綻、そして大手企業の撤退。これだけのダメージがあれば、数が減っていくのは自明の理。とは言っても、新規参入がないわけではない。
事務所解散後も、その残党は消えて無くなったわけではないし、アニメ文化が日本から消え去ったわけでもない。新しくガワを用意すれば、かつて死んでいったVtuberは容易に復活できるのだ。
友人に、高嶋という男がいる。
同じサークルで、偶然、空蝉あさぎの話で盛り上がった時以来の友達だ。
彼もまた、空蝉あさぎを愛していた。
「おいおい、この子、もしかしてあさぎちゃんじゃないか?」
そう言って、彼は、僕が全く知らないVtuberのチャンネルのリンクをLINEで送ってきた。
すぐに分かる。
……空蝉あさぎの声だ。何十時間、何百時間と聞いたあの少女の声だ。
僕は、すぐにこう返した。
「いや。あさぎちゃんじゃないでしょ」
お疲れ様でした。




