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1話 出会い

初投稿です。気軽に感想、アドバイス等して頂ければ幸いです。

ここは魔界。多くの魔物が住み着き、魔物達は人々の住む世界に現れては、多くの人々から財を奪い、非力な人間を捕えては奴隷にし魔界で重労働をさせるのだった。そんな魔物達を収めるのは恐ろしい魔王サタンであった。

『愚かな民達よ、我が魔王一族の前にひれ伏せ!』

サタンは今日も人々の前に姿を現し、人々を襲うのであった。

『ひぇっ、ま..魔王だぁ。逃げろ!』

人々は一目散に逃げていく。

『ハハハハ、吾輩から逃げられると思うな。貴様らは今日から吾輩の物となるのだ。』

そう言い放つとサタンと魔物達は魔力を使い、人々を追いかけ始めた。

『メデゥーサ、あの逃げ惑う者達を石に変えてしまえ。』

『おやすい御用さ。シャァァァッ』

サタンの妻メデゥーサの魔法によって、人々は次々に石化していった。

『フフフフ、今日も沢山仕留めたねぇ。』

メデゥーサは笑みを浮かべた。

『この者共を魔界へ連れて帰れ。』

『はいっ』

サタンは魔物達に命令した。魔物達は石化した人間達に近寄っていった。と、その時、魔物達の目の前に、眩い閃光が現れた。

『見つけたぞ、サタン!』

光の中から、声がした。

『だっ...誰だ?』

『私はアーサー。悪しき者を成敗する魔道士だ。サタン、お前は大勢の人間を苦しませてきたようだな。その苦しみを、今ここで味わうがよい。』

光の中から現れたのは、魔道士の格好をした、1人の男だった。

『なんだと。貴様、この私が誰かわかっているのか。我が魔王一族の前に、たった1人で現れるとは、愚の骨頂に過ぎん。お前達、あの魔道士を殺せ!』

『オォォッ!』

魔物達はリートに飛びかかった。だが、アーサーは物怖じもせず、呪文を唱え始めた

『神よ、力を与え給え。』

『ウギャーァァァ...。』

魔物達はアーサーの魔法で、一瞬で気絶してしまった。

『なっ、なんと...。』

アーサーの圧倒的な力を目の当たりにしたサタンは、唖然としていた。

『魔王様、ここは私が食い止めます。早くお逃げを。』

『まっ...待て、メデゥーサよ。今残ってるのは、私とお前だけだ。ここは2人で逃げよう。』

『いえ、魔王様のためなら。』

そう言うと、メデゥーサはアーサーに立ち向かって行った。

『まっ、待てぇぇぇ、メデゥーサァァァ!』

サタンは逃げることが出来なかった。メデゥーサはアーサーを石に変えようとしたが、アーサーには通じなかった。

『そ...そんな...。おのれ、アーサーめ、お前を苦しませてやる!』

魔王はアーサーに襲い掛かった。

『いでよ、ブラックホール。』

『ボワーン』

魔王の目の前に、巨大な穴が現れた。

『うっ、うわぁぁぁ!』

サタンはその穴に吸い込まれていった。

『あの世で罪を償うことだな。魔物達よ、命だけは見逃してやろう。だが、お前達の王は封印された。これからは悪事を辞め、反省するがよい。』

アーサーはそう言い残し、その場を去って行った。

一方その頃。

『行ってきます。』

『行ってらっしゃい。』

東京のとあるアパートの一室で、今日も1日が始まろうとしていた。生田 和美はこのアパートで、夫の貴大と長女の亜優、そして次男の圭介の4人で暮らしていた。

『ほら亜優、早くしないと遅刻するよ。』

『うるさい!』

中2の亜優は反抗期で、家族とはトラブル続きだった。

『お母さん、行ってきます。』

『行ってらっしゃい。』

小2の圭介は、亜優とは対照的に元気に登校していった。

『ほら亜優、早く。』

『....。』

亜優は返事すら返さず、不機嫌な顔で家をあとにした。

『はァ、やっと終わった。』

和美は専業主婦として、忙しい毎日を送っていた。忙しいのは、貴大も同じだった。

『生田君、これ入力しといてね。』

『はい、わかりました。』

『カタカタ』

事務担当の貴大は、サラリーマンとして、仕事に精を出していた。

(今日は早く帰れそうだなぁ。)

残業の続いていた貴大は疲れていた。

『では、失礼します。』

仕事を終えた貴大は、飲みの誘いを断り、今日は早く帰って家族とゆっくり過ごそうとしていた。貴大は会社の最寄り駅で乗車し、家へと向かった。

その頃魔王サタンは、ブラックホールの中をさまよっていた。

『うっ、うぅぅぅ。体が動かん。一体いつになったら、ここから抜け出せるのだ。』

サタンが唸っていると、突然、光が差し込んできた。

『ん!?あの光は!』

光はみるみる大きくなっていった。

『うわぁぁぁ!』

サタンの体は解き放たれ、光の中に放り込まれた。

『ザブーン』

サタンが放り出されたのは、池の上だった。そしてその池は、生田一家が住むアパートの近所だった。

『ガハッ、ガハッ、だ、誰か...。』

魔界には海や池が存在せず、サタンは泳ぐことが出来なかった。帰宅途中の貴大は、ちょうどその池を通りかかっていた。

『ガハッ、ガハッ』

サタンの溺れる音が貴大の耳に入った。

『ん?』

音のほうに目を向けると、そこには溺れるサタンの姿があった。

『はっ、大丈夫ですか!?これに掴まってください!』

貴大は池の近くに駆け寄り、設置してあった緊急用の浮き輪をサタンに向かって投げた。

『ガハッ、ガハッ、ん!?』

貴大の声には気づかなかったが、サタンは浮き輪にしがみついた。サタンが浮き輪に掴まったのを確認した貴大は、浮き輪についていたロープを力一杯引きあげた。

『はァ、はァ..。』

『大丈夫ですか...?』

貴大にとって、サタンは奇妙な格好をしていた。頭には角を生やし、気味の悪いデザインで装飾された服に、マントを羽織っていた。貴大はサタンの姿を見た時、コスプレイヤーか何かと思った。

『このままじゃ、風邪を引いてしまいます。家がすぐそこなので、ウチで体を拭きましょう。』

『....。』

サタンには何が起こったのか分からなかった。サタンは体を振るわせながら、貴大の後について行った。

『ただいまぁー』

『おかえりなさい。』

家に到着し、玄関を開けると、奧から和美が出てきた。

『さっ、入って。』

サタンが家に入った途端、和美は驚いた。

『だっ、誰!?この人?』

『近くの池で溺れてたんだ。それで助けたんだけど、びしょ濡れでこのままじゃ風邪を引いちゃうし、ウチで体を拭いたほうがいいと思って。』

『そ...そうね、ちょうど今お風呂が沸いたところだし、体でも流していってください。』

和美は奇抜な格好の男に戸惑いながらも、サタンを受け入れた。

『ほう、風呂か悪くない。では、早速入るとしよう。』

『えっ!?』

サタンの傲慢な態度に、和美と貴大は違和感を覚えた。

『それで、風呂はどこにあるのだ?』

『あっ、あぁ、こっちです。』

貴大は戸惑いながらサタンを案内した。

『ここです。』

『これが風呂なのか!?随分と小さいな。吾輩のような魔王に、こんな陳皮な風呂は似合わんが、今回ばかりは見逃してやろう。』

『はっ...、はあっ...。』

貴大は脱衣場を出て、サタンは風呂に入った。サタンが入浴している間、2人はダイニングで、変な男が誰なのかを話し合った。

『ねぇ、あなた、あの人本当に誰なの?すごく変な格好してるし、話し方も変だし、ヤバい人なんじゃない?』

『コスプレか何かやってる人なんじゃない?』

『コスプレって、こんな平日にあんな格好してる人いないって。しかもウチの近所で。子供達もいることだし、お風呂からあがったら、すぐに帰ってもらいましょ。』

『そうだな、タクシーでもよんで帰らせよう。』

『お父さん!お風呂入ろうよ!』

貴大が帰って来たことを知り、圭介が部屋から出てきた。

『ごめんな、圭介。今、お風呂によそのおじさんが入ってるから、後で一緒に入ろ。』

『おじさん?』

『うん、池で溺れてて、お父さんが助けたんだ。』

圭介は不思議そうな顔をした。

『パタッ』

浴室の扉が開く音がした。

『ふぅ、また随分と酷い風呂であった。あの者達はいつもあんな狭い風呂に入っておるのか。』

脱衣場でサタンが愚痴をこぼすこえが聞こえた。

『せっ、狭い風呂!?』

和美は少しカッとなり、サタンがダイニングに出てきた。

『なんだお前達、まだ飯のひとつも作っとらんのか。魔王である吾輩に、そのような態度をとるとは、この無礼者め!』

風呂を借りた礼も言わず、サタンは飯を作れと言い出した。

『はっ、はあぁ!?』

和美はさらにカッとなっり、察した貴大は、

『あっ、お腹が空いてるんですね。今からちょうど夕飯なので、食べて行きますか?』

と言って和美を台所に行かせた。

『当たり前だ。吾輩に飯も出さんとは、愚か者にも程がある。』

和美は堪忍袋の緒が切れそうだった。

『ねぇ、あなた本気で言ってるの?あんな失礼な人に、ご飯なんて出せないわよ!』

『まあまあ、いいじゃないか。ちょうどお腹が空く頃だし。』

『んん...。』

和美はムスッとしながらも、渋々夕飯の支度を始めた。するとその一部始終を見ていた圭介も台所にやってきた。

『ねぇ、お父さん、あの人がおじさん?』

『おじさん!?』

台所の圭介の声がサタンに聞こえた。

『吾輩はおじさんではない!偉大なる魔王サタンであるぞ!』

サタンは怒りながら圭介の元へ駆け寄った。

『あっ、すみません。息子はまだ小学生でして。』

貴大はサタンをなだめようとした。

『許さん!吾輩を侮辱した罪は重い。貴様らをあの世へ送ってやる!』

サタンはいつもの魔力を使い、2人を殺そうとした。

『はあぁぁっ!』

サタンは呪文を唱えた。だが、何も起こらなかった。

『!?』

サタンは気づいた。魔力が使えないのである。貴大と圭介は驚き、少し恐怖を感じた。

『ちょっと!今料理中なので静かにしてもらえます?』

和美に注意され、魔力が使えないことをしったサタンは黙り込んだ。

『...ふん、今回は助かったようだな....。』

サタンはダイニングへ戻った。

『ご飯が終わったら、絶対に帰らせてね。』

呆然とする貴大に和美は怒った口調で言った。

(そんな...魔力が封印されただと!?)

夕飯を待つサタンは驚いていた。魔力が使えなければ、何もできない。改めて魔道士アーサーの力を思い知った。

『はい、出来ましたよ。』

気がつくと、夕飯が出来上がっていた。その日の夕食は、ご飯、味噌汁、鮭、サラダだった。サタンにとっては、見たこともない食べ物だった。

『なんだこれは!?これがお前達の食事か。』

『そうですけど。』

和美は目を背けながら言った。

『なんだ、この2本の棒は?』

箸も見るのが初めてだった。

『お箸も知らないんですか!?』

呆れた表情で和美が言った。

『きっと洋食派なんだよ。』

焦った様子で貴大がフォローした。

『亜優、ご飯よ。』

亜優は不機嫌な顔で食卓に入ったが、サタンを見るなり目を丸くした。

『誰その人?』

『池で溺れてたのを助けたんだ。』

『ふーん。』

亜優はすぐに表情を戻し、興味の無い様子だった。

『それじゃ、みんな揃ったことだし、いただきます!』

貴大がそう言うと、和美と圭介もいただきますと言って、食べ始めた。亜優は何も言わずに食べ始めた。

『いただきます?どういう意味だ?』

『えっ、どういう意味って、食べ始める時の挨拶ですよ。』

家族一同がサタンをますます不審に思い始めた。そんな家族をよそ目に、サタンはまず鮭に手をつけた。

『このピンクの色をした食い物は、ドラゴンの肝か?』

『それは鮭ですよ。』

貴大はサタンに優しく教えた。この時貴大はサタンは記憶喪失の男性ではないかと、疑い始めた。

『ほう、どれどれ。』

サタンは手を使って鮭を食べようとした。

『あっ、手じゃなくて箸で食べたほうが...。』

『箸?この棒のことか?この棒でどうやって飯を食えというのだ?』

『こうやって使うんです。』

貴大はサタンの前で箸を使って見せた。和美はサタンを睨みながら黙っていた。本当はこの得体の知れない男を外につまみ出したかったが、子供達の前ということもあり、怒りをグッとこらえていた。圭介はさっきサタンを怒らせたこともあり、恐る恐る横目でサタンの様子を伺っていた。亜優はサタンに目も向けず、静かに食べていた。

『うーん、なかなか持ちづらいな。』

始めての箸に、サタンは苦戦した。不器用な持ち方だったが、なんとか鮭の身をつまみ、口に運んだ。

『んん!ペッ!なんだこの塩辛く生臭い味は!これが魔王へ出す飯か!』

海の無い魔界に住むサタンの口に、魚の味は合わなかった。

『そんなに言うなら、もう食べなくて結構です!』

和美はサタンから皿を取り上げた。

『あの、あなた一体誰なんですか?池で溺れてたとか言ってましたけど、こんな平日にそんな変な格好してるなんて怪しいですよ!』

和美はついに怒りを露わにした。

『吾輩が誰だと!吾輩は偉大なる魔王、サタンであるぞ。先程もそう申したはずだ。吾輩の名も知らぬとは、お前達はどこまで愚かなのだ!』

サタンも怒りだした。

『そのサタンって名前は、アニメか何かのキャラクターなんですか?』

サタンをコスプレイヤーだと思っていた貴大は、サタンが誰の真似をしているのか尋ねた。

『アニメ?アニメとは何だ?』

『えっ、その格好はコスプレじゃないんですか?』

『アニメだかコスプレだか知らんが、吾輩のこの装束は、魔王の証であるぞ。』

サタンは席から立ち上がり、自慢げに生乾きの服を見せびらかした。

『もういいです!とっとと帰ってください。』

和美はサタンを帰らせようとした。

『せっかく魔王である吾輩が来てやったというのに、帰れと言うのか!』

『ええ、もう二度ここに来ないで!』

『そうか、なら良い。吾輩は帰ってやる。だが覚えておけ、吾輩にこれほどの無礼を働いたことは、重罪であるぞ。次は魔物を連れて、お前達の命を奪ってやる!』

『ああ、待ってください!』

貴大は止めようとした。だが、サタンは勢いよく玄関を開けて出ていった。

『何もあそこまで言わなくても...。』

『だって、人に助けてもらっておいて、あんな失礼な態度をとるなんて。』

『きっとあの人は記憶喪失だったんだよ。それでこの近所で迷ってたに違いないよ。僕、あの人を連れ戻してくる。』

貴大は急いで家を出ていった。

『ちょっ、ちょっと!』

和美が反対しようとした時には、もう貴大の姿はなかった。

『まったく、何と無礼な奴らだ。けしからん。』

サタンは来た道を戻っていた。そうすれば魔界に戻れると思っていた。

『この場所だったはずだ。あの男に助けられたのは。はて、吾輩はどのようにしてここに辿り着いたのだ?この場所より前の記憶が無いぞ。確かアーサーという魔道士にやられて....』

サタンは帰り方が分からなくなっていた。

『考えていても仕方がない、少しこのあたりを歩けば、すぐに帰り道がわかるはずだ。』

サタンは歩きだし、貴大達のアパートがある住宅街を抜けて言った。

『にしても、ここは奇妙な場所だ。変な色をした家に、あの家族も妙な服を着ていた。それに吾輩の姿を見ても、全く怯えなかった。もしやあの者達はアーサーの一味では?』

未知の世界に考えを巡らせるうちに、サタンは繁華街に近づいていった。繁華街に近づくにつれ、騒がしい音が聞こえ始めた。

『何やら随分と騒がしいな。祭りでも開いておるのか?』

『ブー』

突然大きな音がした。

『!!!』

サタンは驚き、音の鳴る方を振り向いた。

『なっ、なんじゃあれは!』

サタンの目の前に一台の自動車が現れた。猛突進してくる奇妙な物体に驚いたサタンは、咄嗟に道の端へ逃げ込んだ。

『あれは一体なんという魔物だ...。』

サタンは驚きのあまり、足が止まっていた。

『早く魔界に帰り魔物達を連れて、この地を征服せねば。』

信じられない現実世界の様子に驚いたサタンは、いつか魔界がこの世界に乗っ取られるのではないかと不安になり始めた。歩いて行くにつれて、自動車の数も人の数も増えていった。

(やはり奇妙な格好をした者ばかりだ。吾輩のことも恐れていないようだ。それに妙な視線を感じる...。)

通行人はサタンを好奇の目で見ていた。中にはスマホで写真を撮りだす人もいた。

(なんだ...、あの札のような物は?もしやあれでさっきの怪物を召喚しているのか?)

サタンはソワソワしながら、繁華街に出た。

『なっ、なんということだ!』

サタンは目を疑った。目の前には巨大なビルが立ち並び、建物からは光が溢れでていた。そして自動車がそこらじゅうを駆け巡り、スマホを手にした人が大勢歩いていた。

(ここは一体、どこなのだ....)

サタンは棒立ちになり、しばらく動かなかった。サタンの周りにはコスプレイヤーを見ようと、人だかりが出来ていた。その頃貴大は、サタンを目撃した人の情報を頼りに後を追いかけていた。

『はァ、はァ...。こんな所まで来てるのか。ん?あの人だかりはなんだ?』

貴大は人混みの中に入り、人々の視線の先に目をやった。そこには唖然とするサタンの姿があった。

『あっ!サタンさーん、サタンさーん!』

貴大は大声で叫んだ。

『はっ!その声は!』

貴大の声でサタンは我に返った。サタンが自分に気づいたことを確認した貴大は、人混みを掻き分け、サタンに近づいていった。

『こんな所で何してたんですか?』

『いや...、それが...、ここがどこか分からなくなってしまってな...。』

『やっぱり記憶喪失だったんですね。今日はもう遅いので、ウチに泊まっていってください。』

『ほう、そうか。お主がそう言うのなら、今晩はお前の家に泊まってやろう。』

『そうですか。じゃあ、家に帰りましょう。』

相変わらず傲慢な態度であったが、サタンは内心ほっとしていた。貴大もほっとしていた。2人は人々の視線を気にせず、まっすぐ家に帰っていった。家では和美と圭介が心配していた。

『お父さん遅いね。』

『そうねぇ。あんな人助けなくていいのに。』

『ただいまぁ。』

『あっ、帰ってきた。』

和美は貴大が諦めて帰ってくることを期待したが、貴大の後ろには、サタンの姿があった。

『やっぱりこの人記憶喪失だよ。今日はもう遅いし、ウチに泊めて、明日にでも警察に届け出よう。』

『...。』

和美は疲れきって貴大の説得に反論できなかった。

『布団が1枚余ってるので、リビングに敷いておきますね。』

『吾輩が泊まってやることをありがたく思え。』

サタンは礼も言わず、家に上がっていった。

こうして魔王と人間の、奇妙な日常生活が始まるのだった。

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