じーちゃんの思い出
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ダチェラが用がある時は、ダチェラクッションと生野菜を渡しておく。
勿論、産着もクッションもダチェラのお手製だ。
その横にある、くちばしの折れた鳥の様なクッションは、オリホックが負けじと縫った物だが酷い品物だった。
主に、癇癪を起こした時などに、ジニアが振り回している。
『これで、当分はあじあじして大人しくしてんだろう』
ダチェラの頭も甘噛みされて、ジニアのよだれまみれになっている。
『帽子でも被るか……そのうち、姿形が違うなんだと言い始めるかもしれねぇな……オリホックは、容姿は綺麗なガキだったから、雑な俺と違いすぎてたし、それはそれで可哀想な事をしたかもしんねぇしな』
あまりにも違いすぎる養い子達。それから自分。
ダチェラは、仕事一筋の人生だった。他人との交流もさほど無いのに、ましてや子供なんてよく養う気になったものだと、自分で不思議に思ったりしている。
オリホックの時は、血だらけの姿で泣きもせず、大勢に殴られていたところにたまたま通りがかって助けたのだ。
お礼も言わない頑なさが気に入り、養うことを決めたのだ。
ジニアの時は、たまたま前の道で行き倒れた妊婦が店に運び込まれてしまい、世話してるうちにジニアがダチェラから離れなくなっただけだった。
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ダチェラは職人だから、結構危ない作業をしている。
『あんな、ひ弱な生き物を連れ歩く訳にはいかねぇからな。ただ、俺の頭から引き剥がすと、ぎゃん泣きして近所に迷惑をかけちまうから、まあ、面白くもねぇ自分の顔のクッションを作った訳だ』
誰に説明するでもなく、考えるダチェラ。
《以下ダチェラの思い出》
あの、澄ましたオリホックの奴ん時は、結構大きくなってやがったからな。
ジニアと違って、俺にゃなつかなかったが、どう言うんだかフラッと帰ってきやがって。
それからは、まあ、色々助かっちゃいるが、あの溺愛ぶりに驚いちまう。
まあ、俺が与えてやれなかったもんをジニアが与えてやがるから、それも仕方ねぇか。
ふっ、あの仔兎は、隙間だらけの絆を埋めてくれやがったか。
ニヤニヤしていたダチェラは、真剣に火入れを始めた。
だが、思ったより手がかかりやがるがな。
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