初めて
登場人物
ジニア 主人公の竜兎
オリホック ジニアの養い親に育てられた。ジニアには叔父さんと思われている。
ダチェラ オリホックとジニアの養い親。ジニアにはじーちゃんと呼ばれている。
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ジニアが初めて立った日。
オリホックも初めて泣いた。
風の便りに、養い親のダチェラが子供を育てていると聴いたのだ。
あの、朴念仁な男が子育てかと思い、興味本意でわざわざ帰ってきてみれば……。
手のひらに載るぐらいの小さな生き物を、懐に大事に入れていたのだ。
ジニア 「ニーニー」(鳴き声)
『こんなに小さいのに、ちゃんと手足がついている』
この時の驚きと言ったらなかっただろう。
冒険者になりたてだったオリホックの心に、消えそうな命に対して、同病相憐れむの感情が芽生えたのだ。
それだから気になって、とうとう毎回ダチェラの防具屋に帰るようになってしまった。
本当にすぐ死んでしまいそうなくらい弱くて、薬草を何度摘みに行ったかしれないくらいである。
何年も大きくならなくて、オリホックがD級に昇格した頃に、やっと、あの小さい二本足で立ったのだから、感動なんてものではなかった。
本当に、魂が震えるほど歓喜したのだ。
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チョロチョロするイタズラジニアを捕獲。
立ってからの成長は、目を見張るものがあって、とぶは跳ねるはで大変だ。
言葉は遅いものの、沢山食べるようになり動きも素早くなって、あちこちを引っ掻き回すようになったのだ。
ダチェラは、元気があっていいかと放置しているが、帰ってきたオリホックは、家の中の惨状を見て叫びたくなった。
止めさせようと追いかけていたら、遊びだと思ったジニアは、遺憾なく獣性を発揮して逃げ回り、駆け出し冒険者のオリホックの心を煽ったのだ。
だから、ジニアを捕獲した時は、あどけない顔でどや顔してしまった。
ジニア 「んっんっんっ」
と観念した様は、オリホックに狩りの楽しさを教えた。
それからは、瞬く間にオリホックもA級の階段を昇っていく。
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