小さな波
小さな波、心に寄せて。
昔のように砂浜に立って。
考えつくことは変わらない。
主が消えた貝殻が小さな波に拐われて、今日ここに打ち上げられた。
ザーカラカラ、ザザーカラカラ。
濡れるのも気にせず波打ち際に誘われて、今日ここに辿り着いた。
小さな波、心に寄せて。
昔のように砂浜を歩いて。
行き着くところは変わらない。
鋭利が消えた硝子の破片は波打ち際で拐われて、今日ここで拾われる。
ザーカラカラ、ザザーカラカラ。
裸足で歩いたとしても、切り傷の痛みには出会えない。
小さな波、小さな波、足跡をついてきて。
昨日のように砂浜で振り返る。
薄墨の海と空に挟まれた、出来損ないの船は何処?
ザーカラカラ、ザザーカラカラ。
足音は聞こえない。
だけど、歩いて帰る夜の海。