日常の終わり
その日、原因不明の大爆発が起きた。
それにより多くの人の想い、人生が一瞬にして消えた。
人々はこの悲劇を繰り返さない事を誓った。
「学校に遅れるよ〜」
その声で俺…大全宰は目が覚めた。
「八生か…」
戦八生は俺の昔からの幼馴染でこうしていつも起こしに来てくれる。
「早く準備して!」
俺は時計を見る。
「ギリギリじゃねーか!!」
慌てて飛び起きる。
急いで準備し始めた。
しっかりと形見のペンダントを忘れずに着けて...。
「どうしてもっと早く起こしてくれなかったんだよ!」
俺は普段から通る通学路を駆けながら言う。
「ごめん!寝坊した!」
「マジか!」
寝坊二人が必死に学校目指して走った。
キーンコーンカーンコーン
学校の鐘が鳴り響く。
それと同時に教室のドアを開ける。
「セーフ!!」
「アウトだバカ」
先生に怒られ席に着いて今日が始まる。
席に着くと隣の奴が話しかけてくる。
「お前が遅刻とは...八生ちゃんはどうした」
「八生も寝坊したんだよ」
「あー...」
こいつは隣の席の山田。
俺によく話しかけてくる奴だ。
今度は後ろの席の奴が話しかけてくる。
「八生ちゃんはしっかり者だけど、どこか抜けてるからな〜」
こいつは後ろの席の田中。
よく話しかけてくる奴だ。
「いいよな〜お前は。俺は起こしてくれる彼女もいないよ」
こいつは前の席の上田。
毎日、彼女欲しいと言う奴だ。
そして時間が過ぎて行き昼休みになる。
俺を含めた山田、田中、上田の4人で集まり飯を食いながら雑談をする。
そして放課後。
「宰!帰ろう!」
八生が教室まで来る。
「じゃあ、また明日」
俺の言葉に山田達も言葉を返す。
「また明日〜」
「グッバイ」
「八生ちゃんもバイバイ」
川沿いの道を俺と八生が歩く。
「悪いな。毎日起こしに来てもらって」
「別にいいよそれぐらい。今日は私も寝坊したけど」
八生は笑う。
俺と八生はあの大爆発によって両親を失った。
両親を失った俺と八生はお互いに協力し合って今まで生きてきた。
気付けば俺と八生は固い絆で結ばれていた。
八生は昔より笑顔を見せるようになった。
俺は八生の笑った顔が好きだ。
(八生は俺が守る)
俺は昔、八生に言った事を思い出す。
(あの時の約束は未だに忘れて無い。忘れるわけが無い)
八生の笑顔を見ながら再度誓う。
(八生は俺が必ず守る)
次の日。
またしても八生が寝坊した。
「セーフ!」
「アウトだ。これ2回目だな」
俺は席に着く。
「また八生ちゃんが寝坊したのか?」
隣の山田が話しかけてくる。
「珍しいな。2日連続で八生ちゃんが寝坊とは」
後ろの田中も話に加わる。
「不思議な事も有るもんだな」
前の上田も加わってきた。
俺は今日も八生が2日連続で寝坊した以外は何も変わらないいつも通りの毎日がくると思っていた。
しかし今日は違った
それは家に帰る途中で起こった。
八生と話しながら帰る。
ここまではいつも通りだった。
突如それは現れた。
「宰、あれなんだろう?」
「ん?」
それは巨大な亀裂だった。
町の上空に亀裂ができていた。
亀裂は大きくなっていき、中から何かが出てきた。
それが出てくると同時に亀裂は跡形もなくすぐに消えていった。
その何かは銀色のマネキンのような姿をしており、目の部分が怪しく光っていた。
何かは町を見下ろすと足を上げ思いっきり家を踏み潰した。
人々の悲鳴が聞こえる。
サイレンの音が鳴り響く。
俺は恐怖を感じた。
「逃げよう」
「えっ?」
俺は八生の手を取り走った。
しかし逃げる直前に振り返った時に銀色マネキンと目が合った。
銀色マネキンは飛び上がると俺たちの目の前に着地した。
地が揺れ、土埃が起こり、轟音が鳴り響く。
「くっそ!逃げるぞ八生!」
しかし八生は恐怖で腰が抜けていた。
銀色マネキンが手を伸ばし、八生を掴む。
「八生!」
(八生が捕まってしまった!一体俺はどうすれば良いんだ!)
その間に銀色マネキンは足を高く上げ、俺に向かって下ろす。
(八生を助けられなかった...)
八生が叫ぶ。
「つかさぁぁぁぁ!!!」
下ろした銀色マネキンの足は地に着かず、途中で止まっていた。
いや、止められていた。
さっきまで宰が居た所には大きい白い煙が立ち込めていた。
やがて煙が薄れていくとその姿が露わになった。
紅く輝くメタリックな体、光り輝く目、所々から噴出している白い煙。
巨大な紅いロボットが銀色マネキンの足を止めていた。
ロボットは銀色マネキンの足を掴み転ばせると、八生が捕まっているほうの腕を引きちぎり銀色マネキンをぶん投げた。
引きちぎった腕を優しく地面に置くと銀色マネキンに歩み寄る。
夕日を背に輝く紅いロボットは銀色マネキンを見下ろしたいた。
銀色マネキンは素早く立ち上がりロボットに殴りかかったが、紅いロボットはいとも容易く避けると銀色マネキンの頭に拳で強い打撃を与えた。
銀色マネキンがよろけながら後退する。
銀色マネキンは構える。
紅いロボットも構えた。
二人が対峙する。
静かな時が流れる。
銀色マネキンが先に仕掛ける。
回し蹴りを紅いロボットの頭部に向かって放つ。
紅いロボットはそれを腕で防ぐと銀色マネキンの首を掴み、思いっきり地面に叩きつけた。
大地が振動する。
紅いロボットは片方の手で銀色マネキンを押さえつけるともう片方の手を天に掲げる。
掲げた手が変形してドリルに変わった。
銀色マネキンは何かを察したのか、首を押さえている紅いロボットの腕を殴ったり、握り潰そうとするが腕はビクともしない。
必死の抵抗も虚しくその時は迎えた。
ドリルと化した手を銀色マネキンの頭に向かって振り下ろした。
金属と金属が擦り合う音が強烈に響き渡る。
巨大なドリルが銀色マネキンの頭部を削り取っていく。
ドリルの衝撃によって銀色マネキンの体がまるで痙攣したかのように激しく震える。
銀色マネキンは抵抗するが、次第に動きが鈍くなり、やがて動かなくなった。
銀色マネキンの頭部はドリルに削り取られて二分の一が失われていた。
それを確認したら、紅いロボットは立ち上がった。
夕日の逆光によりロボットが黒く染まり、目だけが光り輝いていた。
ロボットは体から飛び出ている管から白い煙を噴出した。
それによりロボットの体が包まれ、やがて町も白い煙に包まれる。
白い煙が消える頃にはロボットの姿は消えていた。
俺は八生のもとに駆け寄る。
「八生!無事か!」
八生は俺に抱きついてくる。
「宰...。良かった生きてて」
「俺は死なないさ。八生。一緒に家に帰ろう」
「うん」
八生は満面の笑みで返事した。
第3回アイリスNEOファンタジー大賞の没案です。
女性向けというのを忘れていました。女性向けってなんだ?(哲学)
せっかく設定を考えたので書きました。
気が向いたら続きを書きます。