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脳内パニック1

 

 なんとか警官を巻いた俺たちは、西部劇でしか見たことのないタイプの酒場に来ていた。



「よーしみんな飲み物きたなー!」


「ってお前…未成年がビールはマズイだろ」



 ああ。勢いで酒頼んじゃったけど、見た目がこれなの忘れてた。異世界でも未成年の飲酒は認められてないらしい、というか持ってくる店員も店員だと思うが。




「俺、こう見えても20歳なんで!」


 適当なことを言ってみる。全員の目が丸くなるのがすぐに分かった。




「俺…?って…今?」


 しまった、…油断した。その瞬間同時に諦めがついた。自分のこと私っていうのは、流石に慣れそうにない。バレたらその時はその時だろう。






「良いでしょ、自分のことなんて呼ぶかなんてさ。子供の頃から俺だったんだよ俺は。」



 ジョッキを握りアピールする。早く飲みたい。


「なんか、ギャップがかわいい…。」


 少女が笑う。


「なんだそれ!お前おもしれえな」


 案外うまくいってしまった…。まあいいか。




 そんな楽しい雰囲気で打ち上げは始まった。金髪君が音頭をとる。


「よーし、それじゃあ…かんぱーい!!」


「「かんぱーい!」」




 ビールのような異世界のその酒を、喉に流し込む。ゴクゴクっという喉の鳴る音が心地いい。


 う、うめえ〜〜〜



 やっぱライブ後の打ち上げのビールはどの世界でも最高だな。


「さすが、いい飲みっぷりだな!」

「わかるぜ!アンシャ後のバールは最高だよな」


 バールって言うんだ、これ。覚えとこ。



 横にいる少女が、じーっと俺を見つめる。


「の、飲む?」


「…結構ですー。私未成年ですから」


 そう言ってピンク色のジュースをストローで啜る少女。俺が年上だとわかったからか、ちょっと遠慮気味だ。



「遅くなっちまったんだけど自己紹介するか!」



「改めまして、俺がイルミナスのリーダーのシャイン!22歳だ。ミューティアは六弦!年上だからって敬語はやめてくれよ。よろしくな」



 ミューティア…ってのはよく分からないが、六弦ってことはギターだな。金髪ギターがシャインね。


「僕はレイ。同じく22歳だよ。ミューティアは四弦、よろしくね。さっきは卑怯なことしてごめんね!シャインがタイマンじゃ君に負けるかもってビビっちゃってさ」


「ビビってねえ。お前が俺もこの子とやりたいって参加してきたんだろーが。」




 四弦のベースの赤髪がレイ君。ようやく名前がわかった、これで呼びやすくなる。



「いいよいいよ。こうして仲良くなれたんだし!私はリサ…18です。えっと…ミューティアは四弦使ってます。バンド解散しちゃったので今は一人で活動してます。」



 リサ、それが少女の名前だった。自己紹介より先に起きた出来事が濃すぎて、名前を知るまで随分かかったように思える。


 レイ君にシャイン君、そしてリサ。みんなの顔をもう一度見渡すと、みんなが私のことを見ているのに気づいた。




「最後、お前の番だぞ?」


 や、やばい。みんなの話に集中しすぎて、自分のこと何も考えてなかった。



 俺って使ってしまったから、本名を名乗ったら本当に変な奴に思われるか…?うーん…



「ひ、ヒナ。俺は乱折(みだれおり)ヒナ、遠いところから来たので知らない事が多いです。よ、よろしく!」



 咄嗟に出たのは、妹の名前だった。この世界で会うこともないだろうし借りさせてもらおう。



「あ。あと、俺にも敬語じゃなくていいよ。」


 これはリサに向けて。



「なんだ田舎の出身なのか、じゃあエンドシティは初めてか。」



 田舎者になってしまった、まあいいか。それよりエンドシティという地名…わかってはいたが本当に知らない。異世界という読みは当たっていたようだった。




「うん、初めて来た。みんなにも会えたし、エンドシティはいいとこだなーって」


「そういえばヒナ、アンシャも初めてって言ってたもんね。どうだった?」


 自分がヒナと呼ばれる事に違和感を感じる。




「すごかった、あれ!何が起きてるかわかんなかったんだけど気持ちよかった。またやりたいなあ。」


 あの時の興奮の余韻がまだ残っている。



「わかるわかる!初めて観客の前でアンシャした時のあの快感は忘れられねえよな。」





「ってかこの世界でアンシャ知らねえって、どんだけ田舎から出てきたんだ…?そんなド派手なミューティア持ってるくせに」




 すいませんね、別の世界から来たもんで。いい加減気になった俺は異世界特有の未知のワードについて聞いてみることにした。




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