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転生プロローグ

 




 これは遠い世界の遥か昔の話。



 魔法に秀でた【ヒムニア族】は、衰退の一途を辿っていた。

 技術力に優れた非魔法族である【フィッキ族】が、未知の力である魔法を使うヒムニア族を迫害していったからである。




 絶滅を恐れたヒムニア族の長は無条件降伏を宣言したが、代償として一族に代々伝わる家宝『ミューティア』を譲り渡すことを条件とされてしまった。



 フィッキ族の間で実しやかに囁かれる噂では、『ミューティア』は全ての者を意のままに操れる力があるとされる神器らしい。真偽のほどは定かではないが…

 フィッキ族軍の大総統もまた、その力を信じる者の一人だった。



 背に腹は変えられないと、ヒムニア族の長は自身の孫娘であり、魔力の優れた『アイミー』にミューティアを授け、フィッキ族の元へ向かわせた。



  ◆



 守護の魔法で身を防ぎながらも、満身創痍でフィッキ族の大総統のいる城へ辿り着いたアイミーは、大事に抱えたミューティアを、倒れるように大総統へ譲り渡した。




 待ちわびたその瞬間だが、大総統は愕然とする。



「なんだこれは…!?」



 樹木を削り、糸を張っただけのソレは一見しただけでは古びたガラクタだった。技術力に優れたフィッキ族からすればなおさらである。

 大総統はソレを一通り触って、家臣に向かってなにやら実験するもその効力がないとわかると、



「…ふざけるな!

 貴様…我々を愚弄するのも大概にしろ!ガラクタなんぞ持ってきおって…!その首今すぐ討ち取ってくれるわ!」


 そう言い放ち、アイミーに投げつける。




 大総統の合図で、家臣が腰に刺した剣を抜きアイミーに詰め寄る。投げつけられたミューティアを震える手で拾い上げるアイミー。



 次の瞬間、激しい衝撃波と共に『ミューティア』が美しい音を奏で始めた。先ほど大総統が触れた時には、そんな気配すら無かったはずだのだが。



(この音色を…この歌を…全ての生命(いのち)あるものに…。)



 ミューティアの奏でる音に合わせ、アイミーが歌う。



 その歌声と音色は城を、そして国を越えて、この世界の全ての者に音楽という概念を与えた。初めて経験する音楽に、聞いた者の怒りは静まり、争うものは剣を手離す。




 持てる魔力を全て使って、この世界の果てまでその歌を響かせるアイミー。力を使い果たした彼女はそのまま息を引き取ってしまう。

 しかし伝説通り、アイミーの願いは音色となって全ての人々の憎しみを消し、世界中の争いを終わらせた。




 この影響と感動を一番強く受けたのは、ミューティアの音色を間近で聴いた大総統だった。即刻ヒムニア族への進軍の中止を宣言、さらに彼らを保護対象とし、アイミーを弔うと、フィッキ族の技術力でミューティアを量産することを提案する。

 アイミーの死にヒムニア族は悲しんだが、それが彼女の導き出した答えなのだと了承した。


 どちらの一族にも反対する者はいなかった。それほど彼女の音楽が人々に与えた影響力が大きかったということだろう。




  ◆





 数十年後。ヒムニア族とフィッキ族の知識を持ち合って様々な形状のミューティアの量産に成功した。だが残念なことに、全てのミューティアは魔力が無いと奏でられなかった。


 魔力を持たないフィッキ族は悲しんだが、量産によりヒムニア族の奏でる演奏は世界各地で聞けるようになり、再び争いが起こることは無くなったのだった。




 こうして一人の少女の演奏で、この世界に平和が訪れた。




 …のだが。



 時は流れ、そんな話は昔話だと忘れ去られる頃…再び争いが起きる。


 それはどちらがより上手く奏でられるか、というヒムニア族同士の争いだった。彼らは気の合う仲間同士でバンドと呼ばれるコミュニティを作り、競い合った。



 フィッキ族はというと…自分の好きなバンドを応援し、勝敗に一喜一憂する者が増えていったのである。





 これではいけない。

 争いの無い世界を願ったアイミーも浮かばれないと、雲の上で遥か昔からこの世界を見てきた神様は思った。


(音楽ニ長ケタ種族ヲ呼ンデ、ヒムニア族ノ馬鹿共ニ分カラセル必要ガアルナ。ドコカノ世界ニソンナノイタヨウナ…。



 オオ!ソウダソウダ、思イ出シタ!)





 神様の持つ水晶に映ったのは、ビール片手にタバコを吸う青年だった。


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