1、始業
このお話は、まつも さんとのリレー小説企画になります。
なので、奇数話は僕の方で上がり、偶数話は向こうで上がります。
軽い恋愛とコメディを妄想してます。
よろしくお願いしますm(__)m
春の穏やかな陽気の我が校舎。
樹齢50年を超えるという校門の桜木は、先日の強風に煽られ、ほとんどの花が散っていた。
始業の時期である。
にもかからわず僕は、いつもの冴えない表情を目いっぱいたたえ、努めて無表情を貫いていた。
校門の向こう側からは学園生活に似つかわしい楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
清少納言に言わせれば、僕は春の明け方にたいそう似つかわしくない存在だろうな、なんてことを無表情で考えつつ、校門に目を向けた。
がしゃあああん!!!
後方から不意に金属音がして、寝惚けていた頭に水を差される。
振り返ると、新しくクラスメイトになった槁本がガードレールに自転車をぶつけ転倒していた。
「いてて……悪いなぁ」
息が切れない程度に駆け寄ってみると、槁本は軽いけがを負っていたようだった。
後続の自転車もいなさそうだし、大して問題にはならないか。
元々、他者にあまり興味が無い僕は、助けを求めるように縋る目をする槁本を無慈悲にも置いていこうとする。
その気配に気づいたやつは、手を伸ばして僕の自転車のカギを綺麗に盗み、自転車をこげなくするというなんとも器用なことをやって見せた。
なお、自転車置き場は校門の向こうでそこまでは自転車を運ばなければならない。
「はぁ……」
僕はあたりに響き渡るような大きなため息をひとつついて。
自転車をそのまま手で運ぶという暴挙に出た。
「おいぃぃぃぃぃ(泣)」
槁本は顔を歪めながら哀れにも助けを求めようとしている。
すまんな、面識のない君の道連れに遅刻になってやるつもりはない。
僕は、もともと一人なんだ。
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「なにしてるの?槁本君に、―――――くん?」
突然、こちらの様子を問いただす声が聞こえた。
他者を不用意に寄せ付けないことを信条としている僕は、急に半径2m圏内に踏み入られたことで、
「ふわっ!」と驚いてあとずさってしまった。
「えっと……」
「あ、すいません悪意はありませんでした。ただ、少しびっくりしただけで……」
謝ったら大抵の人は許してくれるということを僕は知っている。
謝っても許してくれないのは、自分の事を大切に思ってくれている人だけだ。
謝罪して、少し落ち着いたところで改めて、呼び止めてきた人をまじまじと見つめてみる。
学生らしく、後ろでまとめた髪が風に靡いていて、制服もしっかり着こなす、真面目な人、というのがぱっと見た印象だ。
もともと他人には興味が無い。
他人を表す言葉も語彙も知ったことではなかった。
「槁本くんの処置はやっておくから、――――くんは先に行っていいよ。
私は先に荷物片付けておいたし。」
彼女から、やんわりとこの場からの退去を告げられる。
その眼には、「なんで助けてやらないの?」という真面目らしい、少し蔑んだ意志がありありと感じられた。
「違う……」
僕はそいつを貶めようとしたわけじゃない。
「何が?早くいかないと、怒られるよ」
再度、笑顔で諭される。
きっと、「早くいけよ、目障りな」みたいなニュアンスなのだろうか。
その言葉に居た堪れなくなり、僕はその場を逃げるようにして去った。
玄関で再度振り返ると、彼女は、槁本に向けて、優しい表情で処置をしっかり行っている様子が見えた。
「もともと他人には興味が無いからいいんだ。」
一人呟いて靴を履く。
ひもを縛る。
そんな免罪符で、この後ろ髪を引かれるような感情は救われることはついぞ無かった。
しばらく投稿から遠ざかっていてすいませんでした。
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