転生龍は卵の中で微睡む
最近、本当に書いてなかったのでリハビリ気分で書いてます。
どもどもーはじめまして。
まぁはじめまして言う相手もいないので独り言です。
とにかく、誰かに現状を訴えたくて語ってるわけであります。
うん、寂しいな今回の人生も。
人生ではないのかな?
とりあえず自分は人間に生まれ変わったわけではなく、龍に生まれ変わったようです。
ようですって言うのが曖昧なのは許してほしい。
何故ならまだ卵から孵ってない状況なのだから。
というか、だれに許しを請うのかもわからない現状ですが、生まれる予定はずっと先です。
思ったんですよ。
このまま卵の中で微睡んでいれば、立派なニートになれるのではないかなと。
実際そんなことができる生物が地球上に存在はしてはいなかったけれどもここは異世界、まぁ龍がいる世界なのだから、それもありなのですよ。
龍という生き物は常に魔力を持って生まれるらしく、自然界からそれを少しずつ集めていくだけで食事など栄養補給などせずに生きていけるのです。
つまり寝たまま動かない自分には、のんびりまったりと卵の中で微睡んでいけばいい。
いつかは生まれなければいけないけど、タイミングは自分で決めることができるのです。
ちなみに自分の周りには2つほど割れた卵があるはずです。
数百年前に兄弟と思われる二匹の龍がここから巣立って行ったので。
彼らはそれなりに巣立つぐらいの力を身に着けて、旅立っていくわけです。
まぁ番のと呼ばれる彼らの相方の気配がしたとか叫んでましたが、自分にはあまり関係ありませんね。
外の様子は魔力を使って見れるので、彼らの卵は保管してあります。
兄弟ですので、成分は一緒だろうから、こちらの卵の補給とかに使えないか予備として保存してたのが始まりだったんですけどね。
今では別仕様で使っているんですよ。
なぜ卵の中にいるのにそんなことができるかというと、魔力を使って身の回りのことができてしまうというチートができるからです。
卵から生まれてないだけで実際は生まれてるのと一緒?そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、生まれてないものは生まれてないのでいいのです。
それから兄弟たちの卵の利用方法ですが、外壁に使っているんですよ。
彼らの魔力を吸って育った卵の殻はこちらの気配を消してしまう素敵効果があることがわかったので。
ある日、なんとなく殻をかぶせてみたら、気配が消えたことにびっくりしました。
それから研究を重ねてほぼこちらの気配が外に漏れることがなくなりました。
簡単にかぶせることができたのは、こちらの卵が小さいからなんです。
地球基準で言うと兄弟たちの卵は直径3mほどの巨大なものなのですが、こちらといえば直径1mにもならない小型サイズ。
龍なんでそれなりに大きいのは仕方ないとしても、自分のサイズは標準よりも小さいそうです。
チートが使えることがわかってから、外の世界に興味を持ちまして、自分の分身のようなものを作って飛ばしているんです。
あれですよ、無人飛行機みたいなものですよ。
ただ、魔力で作っているので人間のこぶしサイズの小さな妖精みたいなものを魔力を固めて作って飛ばしている感じです。
そして現状、自分が住むこの場所は大陸の端っこにある小さな半島のようです。
大きさとしてはそうだなぁ日本列島で考えるなら、房総半島ほどの大きさかもしれません。大陸にとっては小さな半島かなってぐらいで結構な大きさですね。
別名『死せる半島』やら『龍の墓場』という名さえついていなければ、本当にいい場所なんですよ。
なんでそんな二つ名がついているかというと、両親の話をしなくてはいけません。
昔々、この半島には小さな王国があったそうな。
本当に小さな国で、いつ大陸の大きな国と戦争になってつぶれてもおかしくないような小さな国だったそうです。
そして大陸で大きな戦があってたくさんの国が巻き込まれる事態になったそうです。
この半島の国も巻き込まれるところだったそうです。
その時に目を付けたのが、龍の力だったそうな。
龍と人間は当時も今も変わらないですが、あまり関わらない関係だったそうな。
自然の流れで生きると龍と、集団行動をして群れる人間とは言葉こそ交わせるもの、相違ない相手。
龍は魔力はあるけど、人間の戦いに参加することはない。
ただ、当時龍の魔力を縛り付けて、従えて大陸の戦いに参戦した国があったらしくこの半島の国も、それに思い当たった。
そこに目を付けたのが両親だったようです。
当時、母は生まれたばかりの3つの卵を温めて今自分がいる洞窟の中にいて、父は頻繁に洞窟と大陸を往復していたようです。
何故なら縛られた仲間を助けるために、龍たちが団体行動をとろうとしてたからです。
龍は仲間意識はかなり強い方です。
それ以上に強いのが番との絆ですけど、今はそれを利用された。
母を捉えて、父を束縛しようと考えたのですよ。小賢しい人間の考えることは、自分都合です。
戦争を始めたのは人間ならば、龍に迷惑かけずに自分たちで努力すればいいものを他に迷惑かける時点で自業自得です。
母は生まれたばかりの子供たちのために必死に抵抗した。
父の名を呼びながら、魔力の尽きるまで人間たちと戦って、そして果てた。
番の呼びかけに応えるべく父が駆け付けたころには、母は力尽きて果てていてその亡骸を見た父は壊れた。
龍という生き物は番をとにかく大事にします。
片方を失うと同時に死んでしまうぐらいに、共同体なのです。
父の嘆きは半島にあったすべての魔力の源に届き、カオスとなった。
自分が眠るこの洞窟以外の場所はすべて吹き飛んだと言えばいいでしょうか。
とにかく、ありとあらゆるものが魔力の爆発で吹き飛んで残ったのは自分たち3つの卵のみ。
人も自然も国もすべて。
その後何百年の間、魔力が吹き荒れる大地となった半島はそんな二つ名で言われるようになったとさ。
まぁ概要はこんな感じだね。
つまり、父のお陰で安全な場所を確保したというべきか、誰も入れなくて自力で抜け出せない場所となったというか。
兄弟たちはそれなりの力を手に入れて出てったけど、自分は違う。
小さくてちっぽけなままなので、出れないということにしています。
ぶっちゃけ外に出るのがメンドクサイというのと、父の魔力と残った母の魔力を取り込んでいるのに時間かけているというか。
両親のことでわかったことがあるのですよ。
母は卵を産んだばかりってことで力が弱っていて、人間と戦って負けた。
父はそれなりに強い龍だったのに、母が死んだことによって死んだ。
今後同じことが起きない理由はないよね。
そして自分は小さな卵でしかない龍。
もし番を見つけて守られてるだけで、自分が戦えなかったら番は死んじゃうんだよ。
そんなの嫌じゃないか。
嫌なら足掻こうと父と母の魔力を自分のものにしようと日々頑張ってる。
龍は何千年も生きる生き物で、数は世界中に100匹もいないらしい。
長生きするので子供を作る親が少ないのが理由だとも、番が生まれにくいのが問題だとも言われている。
兄弟たちは無事に番を見つけていちゃいちゃしているらしく、たまにこぶしサイズの分身を飛ばして様子を見に行ってます。
義姉たちはとてもいい龍で、ふらっと飛んでいく小さな自分の分身と仲良く交流してくれます。
いつまでも新婚気分カップルのところにもいれないので、あちこちに分身を飛ばしては人間世界から、自然世界の隅々まで興味の向くまま見学させてもらっています。
本体はまだ卵の中だけどね。
そんなある日。
見つけちゃったんです。あれを。
ふらふらっと遊んでいたら気になる気配を感じたんです。
思わず気の向くまま見に行こうなんて思わなかった自分を誉めたい。
だって、あれは危険だった。
恐れていた気配。
世界中にそんな気配すらなかったのに、ある日突然沸いてきたそう思えるほどの衝撃。
怖くて怖くて、生まれる日また何百年延ばそうと計算して、こぶしサイズだった分身をさらに小さくして、親指サイズにして。
気配を消すために、兄弟の卵の殻を再利用して分身たちのアクセサリーにして。
気づかれないようにでも、気になって。
ずっと近づかないようにしてたのに、小さな気配を感じて。
たぶん本体じゃないからって近づいてみたら。
それはこぶしぐらいの大きさな鱗だった。
ああ、これは元凶の鱗だってわかって。
触りたかったけど、罠の気がして、でも他の誰かが拾ったり持ち去るのを許せなくて。
念入りに念入りに魔力を込めて、自分の魔力を感じさせないように周りに空気の幕を作って。
鱗の一つでも、本人の魔力が残っているならばこちらを感知させられるのを恐れて、それでもほっとくことができなくて。
こんな時があるかもしれないと思って作っていた、分身たちのための住処の1つにそれを持ち込んだ。
それからずっと一匹の分身はその鱗を見て過ごしてる。
離れられないぐらいに愛しいと思ってしまう鱗を。
でも触れてしまうのは怖くて、恐ろしくて。
こちらの存在に気付いてほしくなくて。
これの持ち主がどう感じるのかわからない。もしかしたら本体とはもう繋がってないのかもしれない。
わからないけど、触れることはできなかった。
この数百年魔力の解析と分解を必死にやってきた自分ですが、これだけは手を出せないんです。
怖いって思うのはこじらせた自分のせい。
転生する前に、日本人だった頃からの悪い癖。
そもそも転生する前は、どこにでもいるような奥手のOLでした。
30歳になるかならないぐらいまでの記憶しかないんですが、とにかく男性がちょっと怖くて。苦手で。
それ以上の記憶がないのでそのころに何らかの理由で死んだのかもしれません。
そんな前世の自分が一度やってみたかったのはニートでした。引きこもってのんびり過ごしたい。
対人関係につかれるようなことしたくなくて、好きなことして過ごしたかった。
今卵生活をしていて、それなりに充実した生活を続けているのに。
ひとりで生きることに辛いなんて思ったことがなかったのに。
鱗一つでその理想を奪われそうになっている。
怖い、そう思う。
力はそれなりにつけた。父の魔力はすべて自分のものとしたし、半島に吹き荒れている風は父の魔力に偽装した自分の力だし。
自分だけの、私だけの世界を壊さないで欲しい。
ずっと生まれないまま微睡んでいたいのに。
他の分身がまたひとつ鱗を見つけた。
ああ、愛しい。
結局持ち帰って来るのは別の拠点。
何度も何度も重ね掛けて、持ち帰って愛でる。
いいなぁ触りたい、触れたい。
気持ちは溢れてくるのに見てるだけの自分。
勇気なんて出せないし、もし勘違いだったらどうしよう。
番とは本能が教えてくれるものだと教わった。
だけど、本能のまま動くことが怖くて仕方ない。
それから何十年して、鱗は徐々に増えていく。
拠点すべてに鱗が配置された気がもしてきた。
これってやばいと思うけど、どうしても他のものにこの鱗を奪われるのが我慢できなかった。
そして運命の日。
とても小さな鱗だった。
分身の手のひらサイズなぐらい小さい。
直径1mmぐらいの小さなサイズ。
これは龍の鱗なのかと疑問に思えるぐらい砂のような鱗。
感じる魔力は少ないし、龍の鱗はこんなに頻繁に落ちないし、こんな小さなサイズはないはずなのに、分身の手に収まりそうなぐらい小さい。
油断するつもりはなかった。
だけど、この小さいサイズならばもしかしたら、触れても大丈夫なんじゃないかと邪な思いが過る。
念のために分身の周りに別の分身たちで結界を張る。
他と隔離するために、この分身がもし知られても自分のところまでたどり着くのを防ぐために。
1度だけ、触れてみたかった。
怖いの。恐ろしいの。
自分がどうなるかわからないの。
それ以上に貴方が愛しい。
そっと、その破片に触れる。
温かい魔力が、手のひらから伝わってくる。
ああ、幸せだなって思う。
こんなに幸せを感じられるものなのかと。
怖いぐらいに幸せ、ああ、これを抱いて眠ってしまおうかな。
小さな分身が感じたことはすぐに本体に知れる。だけど、触った分身はこのまま永久に封印することにした。
自分の幸せごと、封印する。
それだって十分幸せだ。
彼が別の番を見つけられる日まで、微睡の中で眠っていよう。
龍が他の番を見つけたって話は聞いたことないけど。
まだ自分は生まれていないのだ。
だから、次の番が先に生まれることもあるに違いない。
眠ろう幸せのままに、生まれないままに。
そう思うままに分身たちすべてを封印することにした。
彼の鱗とともに眠ろう。
いつまでも、いつまでも……
パリッと、どこか割れる音がした。
すっきりしたー!
っていうかこんな話ですみませんでした。
自分勝手すぎる主人公ですが、番のにーさんも結構勝手な人にしたい気分です!