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カラスの花婿

作者: 山内重雄

カラスは神様の使いだといわれています。カラスは人々の願いを神様に届け、それを聞いた神様が願いをかなえてくれます。

 ある村の若者は、村はずれに住む娘に恋をしていました。


カラスは神様の使いだといわれています。カラスは人々の願いを神様に届け、それを聞いた神様が願いをかなえてくれます。

 ある村の若者は、村はずれに住む娘に恋をしていました。娘は年老いた父母と暮らしていました。若者は毎朝隣の村まで出かけます。必ず娘の家の前を通り、一目でも娘の姿を見ることができたならば若者はその日は幸せに感じられました。娘のほうもこの若者に好意をもっていましたが、お互いに気持ちを伝える方法を知りません。娘は若者に会った時には、せめて笑顔で挨拶しようと思っていましたが心が高まり、怒っているような顔になってしまいました。そんな娘の顔を見て、若者は自分が嫌われていると思い込んでいたのです。

 ある朝のことでした。娘の家の前に柿の木がありました。そこにいつもカラスが一匹とまっています。若者は娘に話しかけたかったのですが恥ずかしかったのでカラスに声をかけました。

「あの子が家から出てこないかな。出てきてほしいなあ」

 カラスは若者の願いを神様に伝えました。神様はすぐにかなえました。娘は出てきましたが、若者はカラスのほうをむいていました。娘は勇気を出して若者に挨拶しようと思っているのに若者はカラスに一生懸命に話しかけています。

 娘は少し腹が立ちました。

「そんなにカラスと話すのがいいならカラスと結ばれればいいわ」と心の中でつぶやきました。カラスは人の心を読むことができます。娘の考えを願いだと思って神様に伝えてしまいました。神様は、またしてもすぐに娘の願いをかなえました 。若者は娘の目の前でカラスになってしまいました。最初からいたメスのカラスは若者の妻になりました。若者は何が起こったかわかりませんでした。娘が不思議そうな顔で見ています。顔に何かついているのだろうか、それとも服が破れていたかなと若者は気になりました。体を見たら真っ黒でした。

「今朝は黒い服を着てきたかな、こんなにきれいな黒い服もっていたかな、指先まで黒い。あれ指がない。足がない。鳥の足がある。右足を動かすと鳥の右足が動くぞ」

 若者は自分がカラスになったことがまだわかっていませんでした。こうして若者は娘の願い通りにカラスの花婿になってしまいました。

 カラスの前では本当に叶えたい願いだけを思い浮かべなければいけません。 おしまい


カラスの前では本当に叶えたい願いだけを思い浮かべなければいけません。

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