花屋と中二病!
次回のお話は番外編ですが、その次のお話は本編です!
私的にはこの話に出てくる新キャラクターが一番好きです笑
昼寝をするのにぴったりな穏やかな昼のひと時。
ふかふかの布団で漫画を読んでるとかえでがそろそろと寄って来た。
「そーうーたーさん? あなたもそろそろ社会に貢献してもいいと思うんだけど?」
「率直に言え。」
かえでは目をそらした。
まあ言いたいことは何となく分かるが……
「みんなで一緒に行きたい所があるからバイトして下さい。」
「よろしい。でもどこに行くんだ?」
「今は言えないけれど、きっとあんたの喜ぶ所。」
イラッとするなーなんで俺が理由も言われずに働なければならないんだ? トイレに行って来ようっと。
立ち上がってかえでの横を通り過ぎる。
「まあその反応は想定内だわ。」
「なら分かるだろ? そんなに金が欲しいなら自分でか」
「私にたったの4万払うだけで……けも耳美少女に会えるわよ。」
俺は振り返り、親指を立てた。
「任せろかえで。4万なんて1、2秒で稼いでくるぜ!」
……ということで俺は時給の良いバイトを探すべく、携帯をいじっている。
この世界は車は全く無いし、江戸時代とか明治時代に建てたような和風建築ばっかりだが、携帯やテレビ、家電などは普通にあった。オタクに優しい世界。
やはり体力のいる仕事は時給は高いが、万年引きこもりの俺には無理だし……意外に探すのって大変だなあ。……なにこれ時給良いな!
《 エルフの華屋 ようこそ迷える者達よ。この水の妖精、エマ・マナ様が私の花屋で働かせてあげましょう。
営業時間 朝10時〜4時まで
時給2000円
要: 穏やかな人、あまり文句を言わないひと、中二病に理解のある人
追記 面接は直接来て下さい。 》
……まあ中二病な所意外は大丈夫そうだし、時給高いし、やばそうなら逃げよう。
家から近いし俺にピッタリのバイトじゃん!
エルフの華屋は周りにある和風な家とは違い、洋風で、オシャレなカフェっぽい店だった。
水のの看板には墨で大きな字で《 エルフの華屋 》と書いてある。せっかくのオシャレな花屋がぶち壊しだ。
ドアを開けるともちろんたくさんの花があった。
「いらっしゃいませー!
どの花をお買い求めですかー?」
そこには植物を全力で表した、妖精みたいな服を着た
金髪と緑色の目をした美少女がいた。
「あのー、ここで働きたいと思ってる者なのですが……!」
この人、人間じゃない……! 耳がアニメとかでよくある尖った、エルフ耳だ。だからエルフの華屋なのか。
エルフは目をキラキラとさせながら俺に近づいて来た。
「本当に⁉︎ じゃあ面接開始!」
「え!ここで?」
「第1問! あなたは中二病に理解がありますか?
第2問! あなたは朝9時〜2時まで働けますか?」
このエルフ! エルフって穏やかなイメージあるけど結構自分勝手!
「えーと第1問は、俺は元中二病です。昔は漆黒の化身とか悪の使いとか言って夜中に好きな子の家の隣にある公園で自作の技とかやってました。
第2問は全然OKです。」
エルフは俺の周りを小躍りした。花瓶が落ちそうになるがお構いなしだ。
「やったー! じゃあ今日からよろしくね。えーと私の名前はエマ・マナ。マナって呼んで。あなたの名前は?」
「俺の名前は山口 奏太。よろしくお願いします! マナさん!
ところで、マナさんってエルフなんですか?」
マナはふっ、と笑って前髪をかき上げ、決めポーズをした。さすがは中二病、様になってる。
「ええ、そうよ。私はサラルラ王国第112代女王。希望と水のエルフ、エマ・マナ。真の名をサラルラ・サラルラ・ガブリエラ・マリア・ミーガン・レーガン・ゾーィ・エマ・マナ」
「おー‼︎」
この世界にもファンタジーな人が!
ドアが開いて、客が来た。客は俺に会釈をしてからマナの方を向いた。
「こんにちは上川さん。今日も見事な花だこと。ところでチューリップはどこにあるのですか?」
「こ、こんにちは。チューリップはこっちですわ。」
えーと……エマ・マナ改め上川さんは丁寧かつ素早い動きでピンクのチューリップを売ってから俺を振り返った。
「真の名は上川 和子です。よろしく。あとこの耳はつけ耳です。髪も染めてるし、緑色のカラコン入れてます。」
和子は何も言ってないのにあっさり自供した。
そしてエルフ耳をつかんで外した。下には普通の人間の耳があった。
こんな人だけど、悪い人ではなさそうだしな。
「じゃあさっそく仕事教えて下さい。マナさん。」
「え?……あっ! ええ、いいわよ。じゃあ教えるわよ。」
〈 4日後 〉
4万も貯まったし、マナに言うか……
マナに近づくと気づいたのか俺を見た。
「どうしたの? 奏太。」
「その……俺そろそろ目標金額も貯まったしこのバイト」
マナが俺の腕をがっしりと掴んだ。まさかこんな美少女に腕を掴まれるとは、死ぬ前の俺は夢にも思って……たけど。まあいいや、そんなこと思ってる間にマナはみるみる涙目になっていた。
「辞めないで! 辞めないで‼︎」
俺の腕を前後に揺らす。腕が周りの花の花びらに当たってはらはらと落ちる。
「ちょ、ちょ、辞めませんよ。辞めないから! しばらく休ませてもらいたいんです。」
マナは俺の腕から手を離してニコニコしながら俺の周りを歩いた。さっきの涙目はどこへ行った。
「なーんだそんなことか。もちろんいいわよ! どっか行くの?」
ニコニコしながら花に水をやり始めた。
俺も仕事を再開した。よかったー急だったけど休み貰えて。
「はい、同居人と旅行? に行く予定です。」
「へー! 同居人ってどんな人?」
「えーと、一人は黒髪の女の子で、もう一人は紫髪の女の人です。」
マナの花に水をやる手が止まり、そろそろと近づいて来た。嫌だなー。
「ねえねえ、私もついて行っていい?
私も旅行したいなあーって思って、あ、嫌ならいいんだよ?」
「別にいいですけど、この店はどうするんですか?」
「そんなのテキトーにドアに一週間休みますとかいう紙を貼っとけばいいのよ。」
この世界の人は本当に適当だし、のんびりしている。まあだからこの世界が好きなんだけど。
「じゃあ帰ったら同居人に聞いとくんで、夜に電話しますね。」
「ど、どうせなら携帯持ってる? 持ってるなら連絡先交換しましょ?」
「ああ、いいですよ。じゃあ帰る時にでも交換しますか?」
「分かったわ!」
マナは鼻歌まじりに仕事を再開した。無邪気な性格だなあ。
〈 夜 〉
夜のくつろぎタイムにみんなが集まっていることを確認してからかえでを見た。
「かえでー。お金貯まったよー!」
かえではニコニコしながら寄ってきた。早くけも耳美少女に会いたい!
「じゃあ明日行こう! 早く準備してねー。3泊4日だから。あと朝の9時に家を出るわよ!」
「は? 明日⁉︎ どこに行くんだよ。」
「そりゃあ魔王がいるこれぞ異世界! ファンタジーの国ラマシエ!」
「おーいいね、あそこは観光地
俺は耳を疑った。こんな現実的な世界でも外国にはファンタジーの国があるのか⁉︎
そんなことよりもすぐにマナさんに連絡しないと!
携帯からマナさんに電話する。3秒ぐらいでマナさんの声がした。
「もしもし奏太! 旅行の予定は決まったかい?」
「その……すみませんマナさん。明日行くって言い始めて……」
「分かった! 明日の何時に行けばいい? あとどこ?」
俺はまたもや耳を疑った。何回も疑ってごめんな、俺の耳。でもマナは凄いな! 明日でもいいとか……
「朝の9時に家を出るって言ってたからその前ならいつでもいいですよ。あとラマシエ」
「分かった! 9時ね! じゃあおやすみー!」
電話が切れた。かえでとよしぐもさんが俺の方を見た。嫌な予感しかしない。
「ねえねえマナって誰? 彼女?」
「もう彼女が出来るとは、最近の若者は凄いな。」
「違いますって! 誤解です! ただのバイトの店長です。あ、あとその店長も一緒に旅行行きたいって。」
かえでとよしぐもが顔を見合わせて、笑った。
よしぐもさんってこんな子供っぽい笑い方するんだ。
「ホテルはふた部屋でいいわよね? 私とよしぐも、奏太とマナさんでいいわよね!」
「いいわけないだろ!」
ああ、大変な旅行が始まる。けも耳早く見たい。
見て下さってありがとうございます!次回のお話も是非よろしくお願いします(*´∀`*)