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怒れる父母と決断

夏季休暇が終了し、仕事が再開=>数日ぶりにログイン=>アスセス数、感想ありでビックリ


頭にふと思いついて始めた稚拙ですが、今後ともよろしくお願いします。

「改めて早朝より失礼いたします、陛下。それで、どういうことなのでしょうか?」


 押し殺した怒気で執務室が軋んでいるような錯覚を受ける中、フリードは口を開いた。


「う、うむ!説明しよう!だが、その前になぜ……では語弊があるか、いかにしてここへ来た?リンドブルムにいたため、昨夜の会にはいなかったではないか?」


 震える声を精一杯抑えながらゲオルギウスは疑問を呈した。


「それでしたら、会に出席していた私の“寄子の者たち”が竜を使い潰す勢いで文を届けてくれまして、昨夜遅くに知ったのですよ」


「……は?いやいや、ちょっと待て!竜を使い潰すのはいい、いや良くないが!王都とリンドブルムまでは飛竜の足でも丸1日はかかる!それがどうして四半日も経たずにここに!?」


 大事な質問にどうでもいい質問で返され、こめかみをピクつかせながらも返答したフリードだが、その内容にゲオルギウスは混乱状態である。

 しかし、その混迷した空気を瞬時に凍りつかせたのはフリードの妻のフィーナであった。


「陛下?おかしなことをおっしゃいますわ。私がなんと呼ばれているかご存知でございましょう?」


「う、うむ。最きょ「はい?」、いや!最速の竜だったな!んんっ……いや、だがいくら速くとも体力は持つまい?」


 危うく口を滑らせそうになる王に側近一同冷や汗ものである。実は最恐と知らぬはフィーナとその身内のみである。フィーナは良き妻、良き母なのだ。ただし、その敵に対する容赦のなさを周りが勝手に恐れている。


「それは愛にございます」


「「は?」」


 まさかの根性論である。思わずフリードを除く、その場にいた全員がぽかんと間抜け面を晒してしまった。対してフリードはその通りだと言わんばかりに首を大きく縦に振っている。


「愛です。血肉を分けた我が子が愛おしくない母がどこにおりましょう?そんなことよりも陛下、夫の質問に答えていただけると助かりますが......」


 フィーネは攻撃的な笑顔で先の質問に対する返答を促した。気のせいだと思いたい。口からチロチロと火が見える。あれ?竜化していませんよね?


「し、承知した!はじめに――」


 ゲオルギウスは一通り、自身が気絶したことも含め昨夜の会場での出来事を説明した。

 

 また現在、ジークが書き置きを残して昨夜遅くから行方知れずになっており、いまも兵をあげて探しているが未だ見つかっていないことも余すところなく伝えた。


 説明が終わると執務室は先ほどとは比べものにならないほどの重圧に満たされた。フィーナの手には握り潰された扇子だった物がより恐怖を引き立てた。

 フリードの手にはゲオルギウスから渡されたジークの書き置きとジークが使っていた竜騎槍があった。ただし、槍の握りの一部がメキメキと音を立てて細くなっている。

 フリード、そのあたりでやめないとポキっといきますよ。

 

「で?なにかおっしゃることはございませんか、陛下?」


「あ、ああ、この件はネヴィアと件の者を問い詰め、すみやに――」


「結構!!」


 続けようとしたゲオルギウスの言葉を一括で遮ったフリードである。本来であれば、最上位の不敬にあたるがそれを指摘させない、いや、したら逝くと思わるだけの憤怒の化身がそこにいた。


「陛下、我々は臣下であるが人であり感情がございます。ゆえに!陛下の子のしでかした事とはいえ、詫びの一つも聞けないとあっては、もはやこれまで」


「ま、待ってくれ!すまなんだ!この通りだ!娘もここに呼んで謝罪させる!だからこの通りだ!」


 フリードの逆鱗を土足で踏み抜き、ゴリゴリしていたことに慌てたゲオルギウスはメンツを投げ捨てて頭を下げた。しかし、


「不要ですわ、陛下。他人に言われて下げた頭になんの価値がございますか?それに、この場にクソむす、失礼。姫さまが現れたら私たちは抑えられなくなりそうですので」


 バッサリである。当たり前ではあるが、母の逆鱗もゴリゴリしていた。

 しかも竜である分シャレにならない。


「これより先、我らリンドブルムは王族・・に対する一切の助力を断ります。無論、我が領から取れる資材、食料を含めた物資、兵力などの人材の派遣もです」


「頼むっ!それだけは勘弁してくれ!」


 フリードの下した決断にゲオルギウスはパニックである。

 なぜならリンドブルムはここ、ペンドラゴン王国の経済の約20%を占め、屈強なリンドブルム出身あるいは派遣される人材は国防の一翼を担う。

 さらに恐ろしいことに、リンドブルムに世話になり感謝の念を抱く者も多く、単純にリンドブルム分の国力が落ちるだけとはいかないのが安易に予想できるからだ。


「ご安心めされよ。リンドブルムの義務である原生林の“氾濫”はこれまで通り抑えます。我らも愛する国を滅ぼすつもりはございません」


 心配しているのは、そこじゃない!とゲオルギウスは心の中で叫んだ。

 だが、これ以上の不評を買って最悪内乱という流れを避けたいのか、もはや黙って頷くしかなかった。


「息子のこともありますので、我らはもう行きます。陛下、これがとの今生の別れとなりましょう」


 返事を聞くよりも早く、フリードはフィーナとともに執務室を後にした。

 

「どうしてこうなった……」


 死人のような顔のゲオルギウスはぽつりとこぼした。

 そこには伝統ある大国の王としての威厳はかけらも残っていなかった。

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