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竜騎士は竜をとったらタダのひと?  作者: 文高
成長と出会いの章
20/20

リンデはやっぱり目立ちます

街でのお話

『ジーク〜〜起きってー!』


「ぐほっ!?」


 いつのまにか寝落ちしてしまったらしいジークの腹部をめがけてリンデはボディプレスをかました。


『おなかすいた〜』


「げほっ、てもう昼近い!?ごめんリンデ!」


 普段よりも眠りが深かったのか、いつもなら依頼をこないしている時間帯に目を覚ました。

 身だしなみを軽く整えたジークはリンデを定位置に乗せると宿に併設されている食堂へ向かった。


「ん?お〜い、ジーク!こっちだ」


 食堂へ着くとシチューを片手にしているゼノに声をかけられたふたりだった。どうやらゼノのランチタイムとかぶったらしい。


「すいません、ゼノさん。寝坊してしまったようです……」


「まぁ、気にすんな。昨日はいろいろあったし、今日は嬢ちゃんとゆっくりと街でもみてまわるといい」


 申し訳なさそうなジークにゼノはそう提案した。


「そうですね……そうしま『ジークはやく〜』はいはい、わかったから頭を揺らさないで」


 空腹のお姫様はそんなもの後にしろと言わんばかりにジークを急かした。さすが竜──フリーダムだった。


「すいません、ランチひとつとこの子に何かください」


「はいは〜い、ってリンデちゃん、ジークくん、今日はランチこっちなんだね」


 ジークに対応したのは宿を切り盛りしているゼノの妻──ノインだった。茶色のポニーテールがよく似合う働き者の女性だ。ゼノとは20以上年が離れているらしく、ジークよりいくつか年上程度らしい。

 初めてゼノから紹介されたとき、貴族間でもあまり多くはない年の差婚に驚愕したジークだった。


「ええ、ちょっと寝坊してしまって……」


「そっか〜、とランチだったね。リンデちゃんはお肉でいいのかな?」


「クルルウ!」『昨日のヤツね!』


「いいみたいです」


 わかったわと言ってノインはオーダーをとって厨房に届けた。

 そして少し待っていると料理が運ばれてきた。


「はい、ジークくんには今日のランチ、ラージカのシチューとガーリックトーストね。そしてリンデちゃんには骨つきブレードラビットの香味焼き」


『わーい!』


「ありがとうございます」


 リンデは昨日の夕食に味付け肉を食べて以来、『もう生肉はイヤ!』と食事に関しては野生を捨てたらしい。この時ばかりはジークの頭から降りて、とても嬉しそうに小さな両の手で器用に骨をおさえてアグアグと肉を食べている。

 

 一足先に食事を終え、小休憩していたゼノはその光景をみて「いい食いっぷりだね〜」ともらしていた。


「ところで、ハックエストをまわる際にオススメはありますか?」


「そうだな……俺は市場がいいと思うぞ。この街は王都に近いとはいえ、セギラ平原とザッハーク大樹林に挟まれるように存在しているから交易所としての一面がある。たまに珍しいものがあったりして面白い。他にも出店なんかで活気があるぞ」


 昼から街をまわってみるにあたり、ゼノにオススメを尋ねたジークだった。しかし、人通りが多く、確実に頭上リンデに注目が集まるだろう場所だった。


「ああ、間違いなく注目されるだろうな。けどな、遅いか早いかだと思うぞ?だったら早いうちにお前の“陸竜”だと認知してもらった方がいいだろ?」


 ゼノ曰く、噂で情報が変に伝わるよりも実際に目にしてもらい、真竜という真実から遠ざけたほうがいいとのことだった。


「ああ、なるほど」


 ゼノの意図を読み取ったジークは、市場に行くとこにした。

 ちなみにふたりがやや真剣な話をしている間、リンデは油でベタベタになった手をノインにふいてもらっていた。人には懐かないとされる真竜だが、ゼノのノイン=ジークに無害+美味しいご飯を持ってくる=いい人という方程式が成り立ち、ある程度心を許していた。

 リンデ、少々チョロくありませんか?


『よいしょ、よいしょ』


 そうして綺麗になった手でジークの頭によじ登るリンデに周りはほっこりしていた。


「じゃあ、行ってきます」


 リンデを装備したジークは護身用の剣のみをぶら下げたラフな格好で市場へと向かっていった──。


「やっぱり、すごい見られてるな……」


 四方八方から視線を感じていた。それもそのはず、


「クア!キュー!クルゥ!キューキュー!」『すごい!あれも美味しそうね!あ、肉!ああ迷っちゃう!』


 頭上の竜が大はしゃぎしていたからだ。その甲斐あって、市場に入ってから5分もしないうちに市場中の視線を釘付けにしていた。


「よう、あんちゃん!珍しいの乗っけてんな」


 どうしようかと悩んでいると、近くの屋台のおっちゃんから声がかかった。


「ええ、“陸竜”の子供です」


「えらいなついてんな〜。よし、サービスだ。1こやるよ」


 そう言って店主は黄色い物をジークへと渡した。


「これは?」


「バーナって言ってな。結構南の領や他国では一般的な果実らしい」


「いや、そんな貴重なものいただけませんよ!?」


 手渡されたバーナが貴重なものだと思ったジークは慌ててお金を取り出そうとしたが、店主に止められた。


「いいんだよ。そこまで貴重ってわけじゃない。毎年相当量とれるらしくて、仕入れ値はどちらかといえば安い。それに今渡したやつは、今日売れなかったら俺が食うつもりだったから気にするな」


 ジークは気にせず食えと促す店主の好意に甘えることにした。バーナの皮の剥き方を店主から教わり、中の身を取り出すとリンデと半分にして口に放った。


『あま〜〜い!!』


「果実とは思えない食べ応えですね。とても甘くておいしいです」


 ふたりは口いっぱいに広がる芳醇な甘味に舌鼓をうった。うっとりとするふたりに満足げに笑う店主であった。


「気にいったら、持ち帰りにどうだい?3本で20ドラク(銅貨2枚)だ」


 商売上手な店主らしい。リンデはいたく気いったようでバシバシと催促している。


「はは、じゃあ6本ください」


「ありがとよ。おまけに1束(10本)で40ドラクにしてやるよ」


 そういうとドサっとバーナの束をどこからか取り出した。驚きつつも代金を支払い、品物を受け取ったジークだった。


「また来てくれよな!」


 店主と別れたジークだったが、市場の奥へ進むごとに似たようなやり取りが行われた。宿へ戻るころには両手いっぱいの食べ物とすっからかんになった財布がそこにあった。

 ゼノには「何やってんの?」と、ノインには「晩御飯いらないね」とそれぞれ呆れられた。がっくりとするジークの隣には、山のように積まれた串焼きや果物を美味しそうに食べるリンデがいた。


『げぷっ』「うぷ」


 しばらく食べて続けたリンデでのお腹は丸く膨らんでいた。一緒に食べていたジークもまた限界だった。


「まあ、街の奴らに知ってもらえて何よりだな?」


 満腹で苦しそうなふたりを見てゼノは笑っていた。


「うう〜」


 辛そうではあるが、どこか幸せそうなジークがいた。


 この日ヘックエストにマスコットが誕生した。まだ年若い少年の頭に乗っている幼い竜だ。なんでもその幼竜は賢く、グルメらしい。美味しいものを飼い主の少年におねだりして財布を軽くするそうだ。しかもその仕草が可愛らしく、少年に悪いとは思ってもついつい試食させ、購入させてしまったと市場の人々はのちに語った。


 余談ではあるが、数か月後バーナが竜の好物であるという情報が出周り、辺境では他国の間者、密猟者たちがバーナを片手にした状態で竜に近づき、ガブっとされたとかどうとか……


バナナひとふさ400円……高い!


次回はお使いではなく依頼withリンデです。

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