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竜騎士は竜をとったらタダのひと?  作者: 文高
成長と出会いの章
18/20

ジークはこうして竜に押しかけられた

ほぼ漫才劇になってしまいました。

*ドキーさんのなまりは青森出身の人の津軽訛りというものを参考にしました。そのためなんちゃって訛りだということを念頭にお願いします。

 小ぶりな真竜はジークを視界に収まると一目散に飛んできた。


「クルァァァ」


 そしてジークの足に頭をこすりつけている。まるで母に甘える子供のようだ。


「え?え?」


 戸惑うジークだが、それよりも驚いていたのは竜飼育のスペシャリスト、ドギーだった。


「俺も冒険稼業を長い間やってたが、真竜を間近で見たのは今回が初めてだが、こんなことありえんのか、ドキー?」


「んなわけあるかぁ!こんなところに真竜がいるのでさえおかしいのに、真竜が人になつくなんて聞いたことねぇさ…どうなってんだぁ?」


 困惑する3人とひたすらジークに甘える1頭という混沌として空間が出来上がっていた。


「とりあえず、ジークどうすんだ?」


「どうすんだといわれてもどうすればいいんでしょう?」


 状況を打開すべくジークに丸投げしようとしたゼノだが、無理とわかっていたのだろう「だよな」といって引き下がった。


「えっと、ドキーさん…この状態ですけど、竜をみせてもらうことってできますか?」


「いや〜、残念だけんどジークはもう他の竜さ近づけね」


 ひとまず、目的を果たしてから考えようと問題を先送りにしたがドキーから返ってきたのはジークをどん底に落とす一言だった。


「実は、あっちさ陸竜が固まってるんのは、その真竜ば避けるっつうか怖がってまってだと思うんだ。朝だば、みんな散らばってたんだが、ちょっと前にソレがここさ来てから一か所さ固まってまった。で、現在進行形でジークさ全力で匂いづけてらがら、たぶんジークさも近寄らねびょん」


「そ、そんな……」


 あんまりといえばあんまりな理由で陸竜たちに近づけなくなったジークは思わずしりもちをついてしまった。もう一度竜に乗れると希望を抱いたが、数分でそれを粉みじんに打ち砕かれたのだ。


「ク、クルル?」


 そんなジークを心配してか、小さな真竜が寄り添った。


「あ、ああごめんね?」


 無垢な竜に当たるわけにもいかず、ジークは心配してくれてありがとうと言ってなでていた。その姿はとても悲壮感が漂っていた。


 だが、それを見ていた保護者と飼育係は顎が外れんばかりに口を大きく開き、声を失っていた。それもそうだろう。竜は気位が高く簡単にはなつかない。さらになついたとしても絶対に触らせない場所がある。そう、顎の下の逆鱗である。もし間違って触ろうものなら主であっても全力でド突く、それが竜である。そのはずなのだが……


「ああ、ここがいいのかい?ハハハ……」「キュ~~~」


 思いっきりなでなでしていますね、ジーク。


 ジークはショックで気づいていないのだろう。心なしか目の焦点があっていない。そんな状態のなか撫でられている真竜はもう腰砕け寸前だ。


「おいおい、ゼノ。俺、夢見てんだか?」


「ドキー残念だが、現実だ。さっきからビシビシ感じる真竜の圧がそれを証明してる。なんでジークは平気そうに撫でまわしてんだよ……」


 ジークのナデナデはしばらく続けられた。

 その後ようやくショック状態から回復したジークは、今度は自己嫌悪に陥っていた。というのもジークで口からだらしなく舌をたらし、仰向けで失神して真竜がそこにいたからだ。

 失神している真竜がヘヴンな状態だったのは救いだろうか?


「ジーク……お前なにしてんの?」


 ゼノがそういったのも無理はない。どこの世界に竜を失神するまで撫でまわす奴がいるというのか。ドキーもジト目である。


「え、っと……ごめんなさい」


 謝るしかないジークだった。


「で、ゼノ?こうなってしまったがどす?」


「まぁ、ジークに竜がやれないってんじゃ仕方ねぇ。帰るか、悪いなドキー」


「いいって。こっちこそなんかすまん」


 真竜を見せるだけだと思っていたが、まさか、こんな事態になるとは想像してなかった。しかし、その原因に引き合わせてしまったために、ドキーは妙な罪悪感抱かずにはいられなかった。少なくともこれから先、真竜のにおいや気が消えるまでジークは竜に近づけないのだから。


「じゃあ、ドキーさん。失礼します。今日はありがとうございました」


 そう言って帰ろうするジークだが、やはり声に力が全く感じられなかった。


「ル?ク、クルルァァァ!!」


 牧場を後にしようしたとき、ジークはがばっと起きた真竜に突撃された。


「ちょっ、何、わ、待って!?」


 ぐいぐいと来る真竜にジークはタジタジである。


「おい、もしかして、連れてけって言ってんじゃねぇの?」


 その通りと言わんばかり竜は一声鳴いた。


「え、いいんですか、ドキーさん。真竜ですよ!?」


「いや、真竜はうちで飼育してるわけじゃねぇべさ……むしろ連れていってくれるとこっちは助かるんだが(ボソ)」


「ちょっと!?」


本音が駄々洩れである。


「まぁいいじゃないか。名誉なことだぞ?」


「ゼノさん!?」


「しかたねぇだろ。それに考えてみろ。仮にこのまま置いて帰って、後でひとり?で追いかけてハックエストに来られた方が厄介だ。野生の真竜が来たなんてことになったら大混乱だぞ?」


 ゼノは諭すようにいうが、


「いや、それ僕が連れて帰ってもあんまり変わりませんよね!?」


「ちっ、気づいたか」


 結局のところジークに押し付けようとしただけである。変わるのは野生かどうかの部分だけだ。


「ジーク、その真竜の目を見てみろ。どうだ?置いていけるか?お前を必要としている小さな存在を置いていけるのか?」


「うぐ……」


 ばれてしまってはしかたがないので、ゼノはジークの情に訴えることにした。

 ジークも口車に乗ってしまい、つい真竜と目を合わせてしまった。キラキラとつぶらな瞳が愛らしい。そして置いていかれるとわかっているのか今にも泣きそうなくらい潤んでいる。

 こうなってはもうジークの敗北は決定的である。元竜騎士として自分を必要としてくれる竜を放っておく気にはどうしてもなれなかった。


「……わかりましたよ。一緒に来るかい?」


 竜はそのことばを待っていたとばかりにジークの胸に飛び込んだ。反射的に抱きかかえたジークだったが、次の瞬間危うく落としそうになった。


「痛っ!?」


 真竜はジークの首筋に嚙みついていた。食いちぎるというほど強くもないが、甘噛みというほど弱くもない。しっかりとした歯型とわずかに血がにじむほどには嚙まれていたらしい。そして竜は口に付着したジークの血をなめとっていた。そこはかとなく色っぽい仕草だった。


 さらに今度は自分の首筋を爪で傷つけ、わずかに血の付いた手?をジークの口に突っ込んだ。


 突然の行動にジークは驚いたが、事態はおもったよりも深刻だったらしい。


「お、おいジーク……お前さん、まさか“契約”したんだか?」


 ドキーはそんなまさかといった様子である。ジークは“契約”の意味が分かっておらず首をかしげている。


「竜の番はお互いを唯一とするんだべ。そして番になるとき互いの首を噛んで血をなめとりその証とする。これを竜騎士にならって“契約”と呼ぶんだけんど……」


「……え?」


 ジークは理解が追いつかない。いや、聞き間違いだろうと思っているのだろうか。だが、ゼノは無情にも現実を告げる。


「つまり、その竜に番認定されてるってことだぞ、たぶん?」


 ジーク、齢16にして所帯をもつ。ただし相手は竜である。


「はぁぁぁ!?」


 叫びたくなるのも無理はない。竜をもらいに来て、誰が竜を”嫁に”もらうことになると想像できようか。しかも不意打ちで……


「いや、僕人間、この子は竜ですよ!?」


「愛の前には些細なことさ。お互いを思いやる気持ちがあればなんとかなるさ」


「種族はなんともならんでしょう!」


 愛が何たるかを説く妻帯者ゼノだったが、ジークの言い分はもっともだった。


『わたしじゃいやなの?』


 ゼノと言い争っていると悲しげな声がジークの頭に響いた。


「え?」


 突然響いた声にあたりを見渡したが、あたりには3人と1頭しかいない。不審に思っていると


『こっちよ。わかる?』


 再び声がした。そして、呼びかけられた方に目をやると小さな真竜がいた。


『やっと届いた!よろしくね、ジーク!』


「……ドキーさん、なんか竜が喋ってるんですけど」


「なに!?声さ、聞こえた!?だば、間違いね。番さなった」


 ジークはもはや逃げられない。番となった竜は、お互いの位置を把握したり、離れていても声が届くと言われていた。図らずも、ジークがそれを証明する形となった。

『それに乗るなら、私にしなさい!』


 うなだれるジークに真竜は提案した。初めは断っていたが、グイグイくる真竜に根負けしたジークは嫌な予感を感じつつも渋々真竜にまたがった。


「「「……」」」


 無言になる3名である。確かに竜に乗っているように見えなくはない。ただし、一般的な感性を持っている人がこの光景を見たならば、竜を捕らえようとしているようにしかみえない。


『行くわよ!しっかりつかまってね!』


 「どこに?」というよりも早く、真竜は飛び立った。その小さな体からは想像できないほどしっかりとした羽ばたきである──地面から2mほどであるが……


『ふぐう、ふぶう、ぬぁぁ!!』


 番となったため女の子でだろう真竜はおおよそ、女性が出していい声ではない気合の入った声を上げながら必死にホバリングしていた。

 いたたれなくなったジークは「もう大丈夫だよ」と声をかけて下ろしてもらった。やはり騎乗は無理だったかと肩を落としていると


『ま、待って、ジーク!あと、もう少しで成竜になるか!そうしたらきっと体大きくなるから!』


 と焦ったように真竜から声が聞こえてきた。

 ジークとしても無闇やたらと真竜を連れまわしていいものかと悩んでいたが、“捨てられる痛み”を知っているジークにはやはり置いていくという選択はできなかった。


「大丈夫、おいで」


 そういって手を差し伸べると真竜は悲しそうな表情を一変させて、嬉しそうはしゃいだ。


『あ、そういえば、まだ私の名前言ってなかったわね。私アークリンデっていうの』


「そうか、よろしく。アークリンデ……リンデでいいかい?」


 もちろんよと花の咲いたような笑顔(ジーク主観)をみせて、より一層ジークにスリスリした。しばらくじゃれついているとふと、リンデは思いついた。


『そうだわ!成竜になるまで私がジークに乗ればいいんだ!』


 ナイスアイディアと言わんばかりのリンデはジークの体をよじ登り、頭上に鎮座し4つの足でしっかりとホールドした。

 ──ジークは竜の兜(ナマモノ)を装備した。


「あれ、重くない?」


『女の子に重いっていっちゃダメ!』


 そんなつがい漫才をやっていると、ゼノからそろそろ帰るぞと声がかかり、ひとり増えた同行者(ジークの兜)を連れ立って、ハックエストへと戻っていった。

 帰り間際、陸竜たちが真竜とは別の意味で驚愕していたのはジークたちには預かり知らぬことであった。

 ジークはまだ知らない。竜と人が番になること──その本当の意味を。


ようやく竜を出せました。ひとまずこれでこの章の3分の1〜2分の1くらいになります。


成竜:人間でいうところの肉体が成長しきった段階。竜の場合は体が一気に成長する。だいたい生まれてから10年程度。その後は数百年間成竜の期間を生きる。また、成長するのは体だけではなく?



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