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幕間〜実は歓喜する出来事だった〜

フリード視点の話です

 あの日――ジークがネヴィアに婚約を一方的に解消された日の深夜のリンドブルムにて。


「フリード様、夜分遅くに失礼します」


「どうした?」


「こちらを……寄子の方が火急の件とのことで」


フリードは執事から受け取った文を読み進めた。

そして読み終わると――そこには満面の笑みが浮かんでいた。

え?


「ようやく、やらかしてくれたな」


「文にはなんと?」


「ジークが婚約を破棄されたらしい。原因はくそ娘ネヴィア|だそうだ。しかも不貞を働き、別のやつと契りも結んでいたらしい」


「なんと!――おめでとうございます!」


あれ?


「こうしてはおれん。手を打たれるよりも早く城へ行かなければ!フィーナ、フィーナはどこだ!」


ことの次第を聞いたフィーナは大喜び。

 あまりの嬉しさにフィーナはいつもよりも調子が良く、あっという間に城へ着いた。

その時にスピードを出しすぎて着地が荒くなったのはご愛嬌。

 

そして執務室での一件を終えた後、王都にある別宅に2人はいた。

すぐにリンドブルムに折り返すほどの体力はさすがに残っていなかったので、休憩するために立ち寄った。


「やりましたね、あなた。ようやくジークをあの悪女から救い出せました」


「ああ、長かった……王家から打診を受けてからもう6年か……」


「おめでとうございます。旦那様、奥様!!」


万感の想いを吐露する2人がそこにいた。

まわりの使用人たちも嬉し泣きしている。


そう、実はリンドブルム勢はこの婚約に反対していた。

もちろん、ネヴィアがまともであれば何の問題もなかったが、蓋をあけてみればアレである。

かといって、「あなたの娘の性格が悪いのでお断りします」とはいかない。

よっぽどのことがない限り、王家からの打診された話を断ることはできない。


しかし、このたびその『よっぽどのこと』をしてくれたので、これ幸いにと城に突撃したのだ。

執務室でも怒りながら内心で歓喜するという器用なことをしていた。

――それを隠すために、思わず槍を一本ダメにしてしまったが……

 

「しかし、ジークにも困ったものですね」


「まあ、そう言ってやるな。あれは変に義理堅いというか、義務に縛られる傾向にある。今回の一件はある意味ではジークにとっていい方に働くかもしれない」


「そうですね。あの子ったら「名誉なことですし、僕には才能がないので仕方がないです」といつも、自分を責めるようなことばかり……」


「ああ、しかもそれが無自覚だから余計に心配だった。今回暴走したのはこれまでの淀みが爆発したのだろうな……しばらく好きにさせるか」


 我が子を心配しながらも、長年の憂いが解消された2人は嬉しそうに笑っていた。


「しかし、よかったのですか?王家と縁を切って……」


「ああ、問題ない。あくまで縁を切ったのは王家とだけだ。他の家とはこれまで通りの付き合いをしていく。無くなるのは国、王家からの依頼だけだ。今回の一件で、少しは反省してくれることを願う」


「では、独立した方が早かったのでは?」


「そうだな。確かにそれも悪くない。だが、王家以外の全てがこちらに付くわけではない。そうして内乱になれば、傷つくのは民だ。それに同じ竜騎士同士で争うなど愚かなことはしたくない」


「ふふふ、あなたらしくて安心しました」


 あくまで守るべきは民だというフリードにフィーナは「意地悪な質問でしたね」と言って微笑んだ。


「それにな……リンドブルムだけでも結構手一杯で、これ以上面倒を抱えこみたくない」


 リンドブルムには広大な原生林が広がり、そこから取れる資源と原生林に水源を置くであろう豊富な水で農業が盛んである。

 しかし、その恵みに比例して、原生林は王国でも屈指の魔境であり、モンスターも強い。

 さらに、他と比べると氾濫の頻度が高く、安全からは程遠い。

 それでも領民が安心して暮らせるのは歴代のリンドブルムの守護者たちのおかげといえるだろう。


「これからどうしますか?」


「少なくともこれより先、王都に来ることはないだろうから、この屋敷を売却するか」


「失礼します、旦那様。でしたら、それは我々におまかせください」


「そうか、頼むぞ。さて、フィーナ体力はどうだ?」


「問題ありません。さすが、我が家の使用人達ですね。十分に休めました」


「よし。ではセバス、後は頼んだ。王都の件が片付いたら皆を連れてリンドブルムへ来い。寄子に言っておくから、護衛してもらえるだろう」


 執事ーセバスは「お心遣い感謝いたします」と言って早速売却のために動き出した。

 そしてフリードとフィーナはリンドブルムへと帰還した。

 帰還後に、フリードは家臣団を集めこれからの方針を話し合った。

 また、ジークはしばらく自由にさせておくことが家族会議で決定した。

 その際に、「とうさま、キライ!」とお兄ちゃん大好きっ子の娘――エレナに言われたフリードはショックのあまり、危うく槍を持って原生林に突撃するところを使用人たちに止められていた。

 フリード、やっぱり親子ですね。


 後日、ジークからの手紙がハックエスト発で届けられ、無事を確認するとほっと胸をなでおろしたリンドブルム一同であった。


自分の考えと周りの考えは常にイコールではありません。

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