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ジークは欠陥をさらしロックオンされる

説明文が多めだと思います。

新キャラ追加です。


*ようやくword 上で棒をつなげたり、点々を中段にもってくるコマンドがわかりました。しかしながら、web上でずれていたりしたときはご連絡いただければ幸いです。

「すごい!」


 組合についたジークは目を輝かせてあたりを見渡した。

 商業組合と冒険組合が同じ建屋の中にあるのだろう。剣や鎧を身につけた冒険者。恰幅のいい商人らしき者。誰かの使いだろうか、ジークよりも幼い子供もちらほら見える。整然としていた騎士団の集会場とは真逆の──混沌とした様子が逆に新鮮だった。


「おいおい、今までどんな生活してたんだよ?まあいいや、こっちだ」


「よう、アネット、おはようさん」


「あ、ロイさん、おはようございます。どうしたんですか?こっちは依頼受付じゃないですよ」


 ロイはジークを連れて組合の一角へ進んでいくと、カウンターにいる女性、アネットに親しげに話かけた。


「ああ、用があるのは俺じゃなくてこいつだ。身元は俺が保証する」


「あ、どうも初めまして、ジークと申します」


「これはご丁寧に。新規入会をご希望の方でしたか?初めまして、アネットです。新規の総合受付を担当しております。それでご希望はどのようなものでしょうか?」


「とりあえず冒険組合を希望してるんですけど、実はあまりよく知らなくて……」


「ご安心ください。そのための私たち受付担当ですから。それでは──」


 アネットは組合について説明を始めた。


 1つ目は階級についてだった。

 貢献度、強さなどに応じて最下位の10級から最上位までの特級があること。また、等級は一律ではなく、それぞれ個別のクラスが存在する。つまり『討伐』『採取』『探索』である。


『討伐』は文字通りのモンスターの討伐依頼をこなすことで戦闘力に依存し、倒したモンスターの討伐証明部位を持ち帰り、完遂となる。『採取』は指定された資源──植物、鉱物、モンスターの討伐部位以外の特定部位を採取する。簡単そうに思えるが正しい知識と採取技能がなければゴミを取ってくることになるので難易度が地味に高い。

『探索』は主に未開拓地の開拓、マッピング、新種のモンスターの発見など力、知識、経験などの全てが必要になるため平均等級はあまり高くない。

 

 2つ目は罰則についてだった。殺人などの重犯罪ではクビ、ライセンスの剥奪。窃盗など軽犯罪は協議の上、一時ライセンスの停止と罪に応じたノルマが与えられるとのことだった。ざっくり言えば、人の道に反することをしないければ問題ないということだった。


「ここまでが基本的なことになりますが、何かご質問がありますか?」


「いえ、大丈夫です。続けてください」


「承知いたしました。続けてですが──」


 戦争などの国同士の大規模戦闘には参戦義務がないため、参戦するかどうかは自由意志による。しかしながら、縄張り争いに敗れたなどの何らかの理由で発生する「氾濫」には一部強制力が働く。断り避難することもできるが、最低でも民の避難誘導、陣地構築などに助力しないと組合内での評判が最悪になり、結局やめる羽目になるからだ。

 

 また、階級が上がってくれば依頼を指名されることがあるが自身の力量を加味して断ることが可能であり、特にペナルティはない。

 

 最後に組合からの指名依頼は断ることができないが、その任務は非常に難易度が高いものがほとんどのため、2級以上の上位メンバーにしか発令されない。


「と、以上です。ご質問はありますか?」


「えっと、指名依頼はどういった方から?」


「そうですね。基本的には以前依頼を受けた方で評判がよかった方をご指名される、というのが、ほとんですね。ただ稀に評判を聞きつけた貴族の方が指名してくる場合があります。断ることはもちろん可能ですが、腹いせに悪評を広められることもあるので、可能な限り受けたほうがよろしいかと思います」


「了解しました。あとは大丈夫そうです」


「では、入会手続きに入ります。こちらの用紙にご記入ください」


 ジークはいくつかの項目が書かれた紙を受け取った。

 項目はそんなに多くはなかった。名前、年齢、出身の3つである。ロイには王都から来たと言ってしまったので、念のため出身をペンドラゴと記入した。


「はい。ありがとうございます。冒険組合に入会される方には試験があります。といっても、どの程度戦えるかを調査するだけですけどね。それに応じて初期登録する『討伐』の等級を決めます。『採取』と『探索』は例外なく10級からスタートします。この後すぐに受けられますか?」


「そうですね。お願いします」


「うし、ここまでくれば俺は必要ないだろ。じゃあアネットあとはよろしく頼む。俺は念のため、ちょっと早めに出勤することにするわ」


「ええ、お任せください」


「ロイさん、ありがとうございました」


 ロイは「今度なんか奢れよ」と軽口をたたいて、ジークと別れた。

 残されたジークはアネットに従って、組合の奥へと進んでいった。

 組合の奥は屋根のない訓練場らしき広間に繋がっていた。


「ジークさん。はじめに魔法を見たいと思います。この位置から、的に目掛けて得意なものをお願いします。あ、消耗品ですので、壊しても気にしないでください」


 そういってアネットが案内した広間の端の方には、ヒト型の的がいくつか地面から生えていた。一部欠けていたり、穴があいていたりとどこか哀愁を漂わせていた。

 

「えっと、すいません。剣を使っていいですか?」


「えっ!?ええ、ど、どうぞ?」


 白線の位置から10歩ほど先にある的に目掛けて魔法を放つ。どう考えても剣を使う要素が見当たらない。「魔法が使えない」あるいは「矢に魔法を乗せたいから弓を使っていいか」とは聞かれたことはあったが、さすがに剣はなかった。狼狽しながらもアネットに許可をもらったジークは慣れた様子でスラリと腰の剣を抜き、そして


魔力付加アームズコート──からの!」


「えぇぇぇぇ!?」


 アネットは予想外の出来事に叫んでしまった。それはそうだろう。ジークは白線より前に出ずに刺突をしただけだ。そして、その剣もジークの手から離れていない。それでも的には小さな穴が開いていた。


「ああ、届いてよかった~結構ギリギリ?」


「ちょ、え、何をしたんですか!?」


「あ、すいません。えっと魔力付加アームズコートで剣の周りに魔力を纏わせました。そして、その魔力を的まで伸ばしました」


「え?そんなこと可能なんですか?」


 混乱するアネットにジークはトリックを説明した。が、意味不明であった。


「そんなにおかしいことですか?例えば、エンチャントした矢を飛ばしても魔力は残った状態ですよね。それに、エンチャントは矢の先端だけで全体ではありません。それって、つまり任意の場所に魔力を集めるように操作したってことですよね?それと同じように剣から伸びるように魔力を操作しました」


「えぇ~~」


 スジは通っている。だが、やれと言われてできるか、といわれるとおそらく否だろう。そんな簡単にできるとは思えない。

 それほどまでに既存の魔法──いや、「技法」は逸脱している。

 声に力のないアネットだが、ここでひとつ気がついた。


「でも、なんで普通に魔法打たないんですか?属性が苦手なら無属性でもよかったんですよ?」


「あ~、それはですね。属性が苦手ということではなくて……見ていただいた方が早いですね」

 

 アネットのもっともな疑問に対してジークは何とも言えない顔で答え、再び的に向かい、


炎弾(ファイアバレット)!」ボッ!──ポフッ


「──え?」


「「……」」


 なんとも言えない気まずい空気である。ジークの手から的に向けて飛び出した炎弾ファイアバレットは、白線から2歩程度の距離で失速し、燃え尽きた。


「えっと……」


「これが理由です。僕の魔法は、離れるとすぐに効果を失ってしまうんです。一般的な魔法は放出型が多く、実用レベルという意味でほとんど使えません」


 そうなのである。ジークは未だに原因不明だが放出型の魔法がほとんど使えないため、体を起点とし、纏うものが多い支援魔法に傾倒した。

 竜騎士時代の訓練試合では近中距離は魔力で伸ばした槍で、遠距離は戦術でカバーして勝ちを拾っていたが、やはり遠距離戦での黒星は多かった。

 ちなみに敗因の7、8割はビッ──失礼、愚竜ネヴィアの身勝手な突貫とカウンターによるものだった。元相棒はなまじ性能が高かった分、脳筋だった。

 ジーク、ほんとに苦労しましたね。


「申し訳ありません。その……」


「いいえ、もう割り切っていますので、気にしないでください」


「ありがとうございます。それでは、次に組合の職員との模擬を「待ってたぜ!!」ってちょって、ゼノさん!」


 アネットに割り込んできたのはゼノという大柄の男性だった。年は父のフリードと同じくらいだが、筋肉のせいだろう、体格はフリードよりもひとまわり大きかった。

 

「いや〜、さっきから見ていたが、小僧「ジークです」、そうかジークか!お前はいい!いいぞぉ!が〜はっはっはっ!」


 何がゼノの琴線に触れたのだろう?実に楽しそうだ。

 その目は新しい玩具を手に入れた子供のようにキラキラと輝いている。だが、見た目がイカついため、他人からゼノを見れば「獲物を見つけた猟師」のようにギラギラと輝いているように見えるだろう。

 実に怖い。その証拠に何がいいのかわからないジークとアネットはドン引きしていた。


「アネット!早速模擬戦を始めよう!」


「ちょっとゼノさん!まだ説明終わってないのでちょっと待ってください!」


「だが!「ステイ!!」──はい」


「んんっ、えっとジークさん、すいません。こちらは当組合支部で新人訓練や試験官を勤めているゼノさんです。この後ジークさんの実際の動きを確認して『討伐』の等級を決定するひとです」


「はあ」


「ではゼノさん。どうぞ」


「よし!やっとだな!ジーク、この後は俺との模擬戦をしてもらう。ルールは簡単だ。俺を倒すか、俺に倒されるか、逃げ切るかのどれかだ。本気でこい。心配するな、これでも元討伐1級だ。それなりに強い」


 アネットにお預けを食らっていたでかい犬──もといゼノが予想以上の強者という事実に驚愕するジークであった。

 それなりどころではない。単純な強さでいえば上から数えたほうが早い。

 普通であれば萎縮するところだ。

 が、そこはジークである。普通ではない──今回は褒めてますよ。


「わかりました」


「度胸もある。ますます気に入った!よし。配置につけ」


 強者との『命をかけない戦い』──つまり鍛錬はジークの望むところであった。

 欠陥があるが故に、工夫で補う以外に強くなる道がないジークにとって、戦いの経験を積む絶好の機会なのだ。

 ……ジークはアビスベアから必死に逃げましたけど『絶対に勝てない相手に命をかける』ことは蛮勇っていいますから、責めないであげてください?

 そして2人は離れた位置で武器を構えた。


「それでは双方よろしいですか?では……始め!」


 アネットの宣言により試験という名の戦いの幕は切って落とされた。

 



ジークは竜騎士時代に伸ばす技能を使っていました。

そして、それを面白いと思った数名に教えているため、珍しくないと思っています。

ただし、その数名は団長、副団長など上位メンバーですが……



ブックマークが5000件を超えているのに気づき、びっくりしました。

少なくともそれだけの方に目を通していただいたということでしょうか?であれば、とても嬉しいです。

今後もゆっくり更新でモヤモヤさせてしまう場合が多々あるとは思いますが、見守っていただければと幸いです。

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