街に出よう
物語は童話や小説、紙芝居など様々な種類がある。全ての物語には何かしらの「作者の意図」が含まれている。物語で伝えたいこと、話の流れそのものや登場人物からの教訓など多岐に渡る。
「七色の橋」はストーリーとLvなどのシステムは分かれている。それぞれは直接影響することは無い。Lvなどのステータスに関係なくストーリーは進んでゆく。
魔法で入り込めるのは童話や小説などの物語。
その魔法をこのゲームに適用するとなるとどうなるのか……
……
奈々と遊希の二人は今、見知らぬ天井を見ながらベッドで寝ている。木の色がくすんでいて年季が入っているのがよくわかる。この場所自体は彼女達よく知っているが、この天井を見たことは無い。
七色の橋はプレイヤーを見下ろすタイプのゲームである。壁や床はいつもよく見ているが天井だけは見ることはなかった。プレイヤーゲームは画面として上からしか見れないからだ。
「んんっ」と小さく伸びをしながら遊希が目覚める。
遊希は見慣れぬ場所で起きることに戸惑いながら、辺りを見回した。それからそこが何処かを理解した。
「ねぇ、奈々、起きて」
隣で寝ている奈々を揺り起こした。
「ん、遊希だぁ、おはよぉう」
眠たそうに目を擦りながらのそりと起きあがり、
「ここどこぉ?」
と尋ねる。
「多分七橋のベグニの街の大宿。」
「え、なにそれ、遊希ついにおかしくなっちゃったの?」
「失礼な、少なくとも『見知らぬお婆ちゃんの魔法をいきなり信じる人』よりかは、まともなつもりだけど~」
2人でふざけたことを言い合いながら奈々は辺りを見回すと、あぁ、始まりの宿か、と理解した。
「そうか、あれか、お婆ちゃんの魔法でゲームの世界に着いたのか……」
「多分そう。だからゲームの通りに進めましょ」
「オーケー」
と、軽く服装を整えてから部屋の外に向かった。
……
始まりの街ベグニ。
七色の橋の中で最も大きい街であるこの街には、ベグニの大神殿と呼ばれる神殿がある。七色の橋ではゲーム開始後、一匹の補助妖精を召喚できる。妖精は八属性あり、火属精、水属精、風属精、光属精、闇属精、鋼属精、土属精、そして最後に無属精である。無属精以外を選ぶと、プレイヤーのその属性の攻撃への耐性と攻撃力が上がり、妖精自体も様々な魔法を使って補助をしてくれる。無属精を選んだ場合は耐性や攻撃力が直接上がることはないが、自身が使う補助魔法の効果を上昇させる。妖精自体も攻撃や回復の魔法は使わず、補助魔法に特化していて、補助魔法しか使わない。ゲーム的に無属精は上級者向けであり、初心者はそれ以外がおすすめである。
……
奈々と遊希の二人は神殿を目指して歩いていく。街中の風景は二人とも見慣れているが、
「プレイヤー以外のキャラが普通に喋ってるのを見るのって不思議」
と遊希が感想をこぼす。
「だね~ あと、ゲームだと見下ろしてたけど、自分の目で見ながら歩くとやっぱり周りの建物が大きく見えてスッゴい迫力だね」
そんな会話をしながら歩みを進めると、二人は神殿前の通りについた。通りの奥に見える大きな神殿は、他の建物と同じように、大きく見える。しかし感じるものはそれだけでなかった。
「なんていうか、スッゴく神聖な感じがする……」
ゲームの時には感じることができなかった迫力を直に感じることができている。
近づいていくにつれて、空気が張り詰めてくるのがよく分かる。神殿の階段を昇ってる間に二人は緊張してきた。
「ねぇ奈々、私達見た目全然旅人って感じしないんだけど大丈夫?」
遊希の疑問ももっともだ。今の二人の格好は学校帰りの制服だ。胸元についているリボンがさらに周りから浮き立つのを助長している。神殿に向かう人は鎧やローブを身につけている人が多い。
このベグニの神殿は「始まりの神殿」と呼ばれている。ここで妖精の祝福を受け、ただの旅人が冒険者となる。だから旅に出て戦闘になっても大丈夫な格好をしている。
そして正式に勇者になる権利を得る。権利を得ると言ってもすぐになれる訳ではない。一定以上の接近戦の能力と、回復、攻撃魔法の技術、そして妖精との連携が必要とされている。すべてをバランスよくこなし、しっかりパーティーを支えられる人が勇者となる。あくまでなりうる可能性を得るだけだ。
そんなときに、
「おいおい、今の時代、嬢ちゃんみたいなのでも冒険者できるのか?さすがにやめとけよ」
「そうだぜ、そんな事しないで俺達とお茶しようぜぇ」
「そうしようぜ」
と声をかけてきた三人組がいた。
「ほら、やっぱりこうなる」
遊希は諦めたようにつぶやくが。
「ねぇねぇ、私初めてナンパされたんだけど!」
と嬉しそうにはしゃいでいる。
「でももっとカッコイい人達が良かったなぁ」
と思っていることを口に出すと、
「は!? 俺らのアニキがイケてないっていうのか!」
「アニキ、コイツらやっちまいましょう!」
と言っていきなり奈々の腕を掴んだ。
「ちょっ、やめてよ!」
奈々が腕を振り払うと、奈々の腕を掴んでいた男が吹き飛んだ。
もう一度言う。吹き飛んだ。
「え?」
吹き飛ばした当の本人も困惑している。
奈々は軽く腕を払っただけなのに腕を掴んでいた男は勢いよく吹き飛んだ。そしてそのまま床をゴロゴロ転がっていき、壁にドスンと音を立てて当たり止まった。
「コ、コイツ化け物だ! アニキ、こんな奴相手する必要ありませんぜ」
と言って別の男が吹き飛ばされた男を介抱しに行った。否、逃げ出した。
「すまねぇな、迷惑かけて。コイツら、勝手についてきてるだけなんだわ、ははっ」
最初の男が笑いながら二人に近付いてくる。
「最近つきまとわれててな、そろそろブチ切れようと思ってたんだ。助かった。」
「は、はあ、そうですか。良かったぁ、『よくも子分に手を出してくれたな』ってボコボコにされなくて、あはは」
奈々は最初こそ怯えていたが、一瞬で普段の調子を取り戻した。
「最近よ、ちょっと声掛けただけでも逃げ出そうとする奴も冒険者になろうとしてんだよ。だから声掛けしながら見張ってた訳よ。それしてんのに、あいつらくっついて来てたから邪魔だったんだよ。それは置いといて、嬢ちゃん達は大丈夫そうだな、邪魔したな、じゃあな」
そう言って男は去っていった。
「今の、何?」
遊希は奈々を疑うような目で見た。
「え、知らないよ。勝手に吹っ飛んだだけだって、わかんないよ」
「そうじゃな……まぁいっか」
「そうそう、気にする必要ないよ!」
遊希は男の事を言いたかったが諦めた。
それから二人は、神官のところに行き、妖精の祝福を受けた。
「古の豊けき世を取り戻さんとす、世界を救わんとすこの者たちに聖霊様の加護よあれ。聖霊様、世界の果てより出でて加護を与えたまえ!」
奈々には無属精、遊希には風属精の加護が与えられた。
本当は4/2に上げたかったけど書き直したくなって時間かかっちゃった(笑)
一話と二話はセットのつもりだったからこっちにまとめて。
小学生の頃とかゲームシナリオとか考えたくて、手帳でゲーム作ったりしてたんです。で、最近なろうで小説読み始めて、書きたいなぁって思ったんです。
見切り発車ですけど時間を見つけて書き進めようと思ってます。
読んでくれる方がいたら幸いです。