表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

つめたい春

作者: 小萩リサ
掲載日:2017/01/24

桜が咲いた。少しばかり乱暴な風に乗って、淡い花びらが飛んでいく。

春には重苦しいものがある。

希望に満ちた空気の、そのまろやかな鋭さ。

肺を満たしては薄く突き刺す暖かさ。

つめたい日常の中にスパイスとしてませた顔をしてやってくる。

しなやかなかぎしっぽの猫が、水溜まりを覆い隠す程の花弁をじっと見つめている。

私は決して春が嫌いな訳ではない。

冬に比べて雪は降らないし、寒くないので霜焼けもできない。

繊細な、美しい色で溢れるので好きな部類だ。

されど、この季節には期待という怪物が大手を振って歩き回っている。

その怪物の持つ爪が私を抉り、その手が心臓を握り潰し、そして耳元で「お前は非力だ」と囁いて呪縛と成していくのだ。

その怪物に殺される前に私は生きていかねばならない。

誰に頼るわけにも行かず、私は生きていかねばならない。

足元で相変わらず水溜まりを見つめる猫のように、非力であるなりの生き方を。

いくら理想を持とうと、いくら決意をしようと非力な者は非力でしかない。

常に真冬の吹雪の中に、薄く突き刺す暖かさと、希望という鋭い刃物を抱えながら、非力でもそれでも立ち向かわねばならない。

この真冬の中に、ほんとうの春を生み出すために。

そのために、つめたい春の怪物に立ち向かわねばならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ