第8節 ~昨今流行のおやじ狩りならぬ、***狩り~
名前 : タチバナ ユウト
職業 : 移動型初級冒険者
レベル : 1
HP : 100/100
MP : 20/20
ATK : 20
DFN : 30
MAT : 10
MDF : 20
INT : 80
AGI : 30
冒険者ギルドで簡単なおつかいクエストを受注した後、俺は更新されたステータスを見ながら小さな満足感に浸っていた。
レベルは1のままなのでステータスの値に変化はないが、職業欄が更新されている。
結局俺は職業選択で“移動型冒険者”の紙をスイナに渡した。
理由は幾つかあるが、一番大きな理由は自分の理想に一番合っていると思ったからだ。
適材適所。
無理な行動は身を滅ぼすものである。
それと、
「絶対になくしちゃいけませんからね?あと、ダンジョンなどで誰かの冒険者タグを見つけた場合はギルドに届けてください。謝礼金を払いますので」
そんなフラグビンビンのお言葉と一緒に、手続きが完了した際にスイナさんから『冒険者タグ』と呼ばれるドッグタグのような物も渡された。
スイナさん曰く、冒険者の身分証明書との事だ。
冒険者タグの裏側には自分の基本ステータスと職業が書かれており、ギルドで更新を依頼すると無料で更新してくれるらしい。
という訳で、無事初級冒険者になった俺は無一文ではどうしようもないので初めてのおつかいクエストに向かっていた。
RPG初回クエストとしておなじみの○○を××まで運んで、的なクエストである。
依頼主は高級宿屋の店主。
内容は使い古された物品を倉庫まで運ぶこと。
内容の割に報酬額がいいとのことで、スイナさんに融通してもらった。
さっさと終わらせて、軍資金を稼がねばなるまい。
宿屋にたどり着くと受付のお姉さんにお願いして取り次いでもらい、店主とあいさつを交わした。
服装について尋ねられたが、遠方の服装で、と言ってごまかした。
それから4時間ほどの肉体労働の末に報酬の銅貨20枚を受け取った。
俺は店主にお礼を言うと、嬉々としてギルドへクエスト完了の報告へ向かう。
今日一日でかなりこの街の中を歩いたので、街の構造はだいたい把握できた。
日が沈み、暗くなってきた街の中をギルドに向け歩いていく。
ギルドで報告を終えたら急いで宿屋を探さなくてはいけない。
そして明日は必要品の買い出しに忙しくなるだろう。
それから森へレベル上げにも行かなくてはいけない。
やることは山済みだが、全てが新しい事で全く苦ではなかった。
毎日必死に生きる異世界ライフも楽しいかもしれない。
大通りを抜け、路地を抜ければギルドが見えてくる。
できればまだスイナさんがいてくれたらいいな、と思いながら俺が路地へと入った瞬間、俺の後頭部を凄まじい衝撃が襲った。
脳が揺さぶられ、意識がとびかける。
地面に倒れこみながら俺は衝撃の正体をぼやけた視界の中で見る。
そこには知らない男が大きな木材を持って突っ立っていた。
いや、よく見れば見た事のある面だ。
確か冒険者ギルドにいた。
「おいおい、今ので死んでないのかよ。まったく手こずらせやがって」
男はそうつぶやきながら手に持っていた木材を放り投げると、腰の剣を抜きながら俺を踏む。
そして、剣の切っ先を俺の胸に向けた。
「残念だったな、新人。運がなかったと諦めろ」
そんな男の言葉を最後に、俺の意識はあっけ無く消えた。
弱肉強食の世界で弱者が狙われるのは必定。
でも、何事にも例外はあるものです。