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“ゲスな男”は異世界の王道を歩む  作者: 三流フラグ設計士 mako17
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第1節 ~本性は隠してプロローグ~

「ちょっと、ユウト!」


日差しが窓から差し込み始めた休日の朝。

まどろむぼんやりとした意識の中、俺は自室の扉が勢いよく開かれる音を聞いた。


またか、といつもながらに思いながら布団を頭からかぶり直す。


それを見た侵入者は他人の部屋である事も気に留めず、ズカズカと入ってくると布団を引っぺがそうと試みる。


「ねぇ!起きてるんでしょ?というか、起きなさい!話があるの!」


ここで拒むと後でめんどくさい事を俺は知っていた。

主に“布団”と“布団を引っ張る幼馴染の機嫌”が、である。


俺は特に抵抗することもなく布団を手放す。

春先なので少し肌寒いが、凍えることは無いので問題ない。


「むぅ、今回はあっさりと布団を・・・」


幼馴染が何か納得いかない様につぶやいているが、いつもの事なので俺は特に気に留めずベッドから起き上がる。

もちろん、目の前には布団を抱えた幼馴染が立っていた。


『 桃井 夢佳 』それがユウトの幼馴染である少女の名前だ。

“容姿端麗”、“文武両道”と神様から二物を与えられた少女は俺の家の隣に住んでいる所謂お隣さん。

なので、小さい頃から知っているし、知られている。


茶髪のセミロングを後ろで束ねショートポニーテルにし、長袖のカーディガンを羽織っている夢佳を見ながら俺は目覚ましを手に取る。


――――――午前7:00


休日にしては早すぎる起床時間じゃないでしょうか、夢佳さん?


夢佳はスポーツが得意なのでスタイルが良い。

出るとこは出ていて、無駄な部分は引き締まっている。

本人に自覚は無いだろうが、朝一番の男には結構につらい状況だ。


朝一部屋へ突入してくることからも分かる通り仲は悪くない。

と言うより、家族間の仲が凄くいい。


お隣さんなので必然と家族がらみの付き合いになるわけだが、俺の母親と夢佳の母親、そして夢佳本人の仲は特に良かった。

そのおかげで玄関の鍵は外からの侵入者( 夢 佳 )を防ぐ為に機能していない。

なんせ、家の中に共謀者(母親)がいるのだから。


ちなみに、俺が夢佳の部屋に入ったことはあまりなかったりする。

とくにここ3年ぐらいは入らせてもらえていない。

夢佳曰く「女の子の部屋に入るのはいけない事なんだよ」だそうだ。

自分の胸に手を当てて、毎朝の行いを思い返してほしいものだ。

まぁ、入る理由もないからいいんだが。


そんな訳であっさりと突破された我が城から、城主()侵入者(夢佳)によって引きずり出されるのであった。


「そんで、話って何だ?」


俺は夢佳の後を追いながら階段を下りると、目の前を歩く夢佳に質問する。

布団を取られたときに行っていた言葉がずっと気になっていた。


「あ!そうだよ!それ!ユウト、1人暮らし始めるって本当!?」


夢佳の言葉を聞いて俺はキッチンに立つ母親を睨む。

ふいっと母親が目線をそらしたので、情報を漏らした内通者はすぐに分かった。


「そうだけど、それがどうした」


俺の言葉にほほを膨らませながら夢佳が振り返る。


「あたし、聞いてないんですけど」


その言葉に俺はため息をつく。


「なんで言う必要があるんだよ」

「ひどい!教えてくれたっていいじゃない!幼馴染なんだし!」


朝一で俺を起こしに来ていることからも分かる通り、夢佳は過度なおせっかいやきである。

買い物から帰ってきたら部屋が綺麗になっているのは当たり前、俺の母親が体調悪くなると我が家の家事全般をこなしていたりする。

そう言えば、最近は俺の母親と一緒にキッチンに立っている姿をよく見る気がする。


「どうせ、家事とかやりに来るつもりなんだろ?」

「そ、それはその・・・」


図星だったのか、夢佳の言葉は小さい。


「1人暮らしなんだから家事全般は自分でやるし」

「何なら、その・・・2人暮らしでも・・・」

「ん?なんて?」


ごにょごにょとしか聞こえなかったので、俺は咄嗟に聞き返す。

そんな俺に「何でもない」と夢佳は答えた。


「でも、場所くらい教えてくれてもいいでしょ?」

「教えたら来るだろ?」

「そ、それは行くけど・・・」

「夢佳の場合、毎日来るだろ」

「・・・・・・」


無言は肯定な証拠だ。

だからこそ、俺は夢佳に新しい家の場所を教えない。

いつまでも夢佳に頼ってはいられないのだ。

自分一人で色々とこなせるようになる為には。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


長い無言が居間を包みこむ。

夢佳が黙り込むなんて珍しいと思い、俺は夢佳の顔を覗き込んだ。

すると、夢佳のほほを伝う水滴が一滴。


俺がヤバい、と思うより前に夢佳が俺の方を振り返る。


「もうユウトなんか知らない!どこでも好きなとこに行っちゃえ!」


大声でそう叫ぶと、夢佳は走って玄関から出て行った。

俺も突然の事に呆然と立ち尽くす。

俺の後ろでは、俺の母親があちゃ~と言った感じに目元を押えていた。



――――――20歳になってから初めての春、俺は初めて幼馴染と喧嘩をした。

意外なところに伏線が張ってある。

そんな作品を僕は作りたい。


※定期的にわざと短い節が入りますが、ご了承を。

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