休話3
……その夜、夜宙は親友に電話をかけた。
―プルるるるるガチャ
『どしたのー、夜宙』
「うん、ちょっとね」
聞かなきゃ。なんで落ち込んでいるのかを。もしかしたら私のこの気持ちを分かってくれるかもしれない。
「何か今日、みせか落ち込んでなかった?」
『なんでー!?なんでそんなにばれちゃうの―!?』
うわっ、ビックリした。え?なに?わたしがたずねる前に誰かが同じことをみせかに言ったってこと?な、なかなかやるわねその人。しかし、凄いわねみせかは。
今のでわたしの心のもやもやを半分以上吹き飛ばしちゃったわ。
『……いや、なんかね、私、本当はもっとできるはずなのに、なんでかできないの。私はもっとできるはずなの。でもできない。……私ってそんなに出来ない子なの?こんなに……普通な子だったのかなって』
みせかはそう続ける。わたしはその言葉を聞いて、同じだ、と思った。
私と同じだ。
『……ちょっと聞いてる?夜宙』
「あ、あぁ……聞いてたわ。や、ちょっと……」
『?』
い、言わないと。わたしもおんなじで、相談する為に電話をかけたことを。
「……実は私もさ、みせかとおんなじようになってるの」
『?なにが?』
「なんでかできないってこと。私はもっとできるはずなんだけど……なぜかできないのよ」
『えー!?やそらもー!?』
……おや?これはみせかも何で自分が出来ないのか分からないのでは?
『えーなんでー?なんで出来ないのよ』
突然そんなことを聞いてくるみせか。
「それが分かれば苦労してないわよーみせか」
『ちなみに何が出来ないのかって聞けるのかにゃ?』
「だーめで―す」
かわいく尋ねてもダメなものはダメだ。恥ずかしいからね。
『でもさぁ、それって結局出来ないってことなんじゃない?』
「あきらめたくないのよ。私はやってやろうって気持ちは持ってるから」
『なんでそんなに頑張ってるのよ』
「なんでって……そりゃあんたもよ。なんで出来ないのにやるの?」
『なんでって………』
質問して、あ、やべと思った。
答えずらいよね、だってみせか、それが分からないんでしょ?
『私は……ちょっと分からない』
そう言うみせかの声は少し震えていた。
『逆に、夜宙はどうなの?』
「私?」
紛らわせるようにこっちに流したみせか。そうね……
「私は……これが私だーって、そう言えるものをやってるのよ。だから、出来なくてもがんばれる。私を見て欲しいのもあるかな、まぁ、いろいろとあるのよ」
夜宙はそれをやっている姿を健一に見てもらいたい。だから頑張る、妥協は許されない。これまで絵夜宙が妥協した事なんて、人生に一度しかなかった。彼女はそれをひどく後悔していたのだ。
わたしは私を照明したい。その気持ちでつき動いていた。
『なんか、すごいね、夜宙は』
「だって、出来ないのよ結局。まぁーもどかしいったらありゃしないわね」
『でもそれって結局気を張り詰め過ぎてんじゃない?』
「………そっか。……でも」
夜宙は続ける。
「それはみせかも同じじゃない?」
わたしがそう言った後、電話の先でむせている音が聞こえた。いけない、仕返しが過ぎたかしら。
「ちょっと大丈夫?むせちゃった?」
『い、いやぁ、夜空は鋭いなぁ』
明らかに慌てているみせかの声。ついで深呼吸をする音が聞こえる。
『んぬぁー!もう!ああそうだよ!わたしはちょっと考え過ぎてたのよ!んなぁー!』
「うるっさいわねぇー!ちょっと静かにしないさいよ‼」
『んにゃー!あーもう!あーもーう!』
「まぁ元気になってよかったわ。それじゃね。うるさいから勝手に切らせてもらうわ」
夜宙はそこで電話を終える。どうやらどっと疲れたようだ。
倒れこむようにしてベットにうもる夜宙。体力やら不安やらを抜かれたようだ。
でも、彼女は分かっていた。
「張り詰め過ぎ、か」
親友の忠告は、しっかりと受け止めよう。
夜宙はあれから仲間にも相談し、どうすればいいのかを一緒に考えていた。考えた結果、凄く単純なことだったのだ。
彼女は、彼女の強みを延ばさず、武器をうまく扱うことに集中し過ぎたのだった。彼女の本当の武器は、それではないのに。彼女の仲間が認めた、ついて行きたいと思った所は、彼女が必死になって練習していたそれではなかった。
夜宙は一旦それをうまく扱おうとすることをやめた。夜空にそってそれは苦渋の判断だったろう、なぜならそれこそがあの動画でやっていたことだし、何より彼女がしたかったことだった。
それを、いったん忘れる。しかしやらないというわけではない。そもそも春先に始めたそれを、秋までに仲間のレベルにまで上げると言う方が無理なのだ。
だから今回は、その武器をあまり使わない、あなたはその本来の武器を十分に生かして。仲間と話し合った結果、そういう結果になったのだ。
本当は嫌だ。
わたしは……
「わたしはもっとできるはずよ……」
夜空はまだそう考える。
これにてやそらの話は終わりです。結局やそらは諦めませんでしたね。みせかはどうなんでしょうかね。
へっへっへ………
次はついに、われらがぱちるさんのお話です。
完全にあなたであり、私でもある。この話を読んだ時、ああたはどう思うんでしょうかね。




