「魔王軍大革命」
第一章は人間側から描くものと魔族側から描くものの交差となります。
従って、この章より人間界を主軸としたものは【】を
魔界を主軸としたものは「」をサブタイトルに使用します。
分かりやすくはなると思いますが、逆に見づらい様でしたら
遠慮なく申し上げ下さい。
私の決断から次の日。
何をどうすべきか、そこから知るために書類と格闘する。
武器はどうなっているのか、魔族はどこまで動けるのか。
軍として動くとき、何匹動けるのか。
色々な要素をかきあつめ、あたかも自分の集めた情報かのように振る舞う。
子供から大人までさまざまな事を知るならピンからキリまで情報を出させた。
人間側の黒い噂も引っかかった他、気になる情報も出てきた。
サキュバス族の待遇改善や、オークなどの武器の状態や規格の統一
対勇者一行用の罠や仕掛け、トラップモンスターの配備改善などが出てくる出てくる。
とにもかくにも改善できる部分から改善して行こう。
サキュバス系列、いわゆる淫魔や夢魔と呼ばれる彼女たち。
彼女たちには人間に化けられる魔術技能を駆使して一度人間界へと向かってもらう。
俗に言うスパイ、内偵という奴だ。
それでいて気に入った男や娘がいたというならそれを骨抜きにして
さらに情報を得るための足掛かりにしてしまえばいい。
この工作には彼女たちも旦那探しをしつつ羽を伸ばせると絶賛を受け
彼女たちの大半がノリノリで人間界の各地に散らばっていった。
それが根っことなり、世界を蝕んでいくのだ。
次に武器……いや、武装の規格統一を行う。
これはどうしても必要な理由がない限りは全て魔合金カイルを使用する。
棍棒以外はロクにつかえないとか、魔術を使うために木製のロッドでなければいけないとか。
そういった理由以外での武装変更拒否は認めない方針を進める。
一部の魔物から重量を危惧する声も上がったが、そこはサイズを調整すればいいだろう。
難なら、隊長レベルともなれば武装の質も上昇させようか。
そう提案した時に、光物が好きな魔物や一部の魔族が反応したがそこは一度置いておく。
装備のグレードアップ、規格武器以外の装備、アクセサリの装備許可など
武装の面だけでも魔王軍はこれだけの改革を行うことができた。
これにはさすがに作る方、いわゆる職人側から文句も出るかと思い
先に打診もしてみたがむしろ彼らからは嬉しい悲鳴が上がっていた。
なんでも、最近は釘だの番だの小物ばかり作っていて大掛かりな仕事が欲しかったらしい。
……ああ。クラウド時代に勇者一行から受けたアクティオン・パレスの傷か。
むしろアクティオン・パレス以外にも色んな住居がダメージを受けているだろう。
それを考えれば細々とした仕事も仕方がない、だろうか。
とにかく、この改革によっていわゆる先兵的なポジションに甘んじていた
オークやスケルトン、ゴブリンなどの武装が一気に強化され軍として様になっていく。
また、私の提案でもあるが種族統一軍による上級部隊、いわゆる親衛隊の配備は
持て余していた一部の魔族のテンションも上がった。
流石にだれがどの種族を担当するかを話し合いで決め切れると思わなかったのか
くじでどの種族を担当するかにシフトし、その結果に幹部たちが一喜一憂した。
ちなみに私はアンデッド種の軍が親衛隊として配備されるらしい。
………これはこれで使えるのではなかろうか?
少なくとも逆に貞操とかが怖い夢魔種とか、むしろこっちが従う側になりそうな竜種でなくて良かった。
さて、ここまで来ると魔界に来られてもそう易々とパレスへの到達を拒む必要があるがどうしたものか。
パレスの位置そのものはアクタエオンが巨大建造物であるが故に、魔界の端っこからでもない限り
わりと天気がいいときは見えてしまう。
魔界だから空が黒く染まってたりとかはない、むしろ人の世界と繋がっているのだから空も同じ具合だ。
いっそパレスそのものを、特殊な結界で包んでパレスを見えなくしてしまう?
……ならいっそ、結界内部には魔族以外に入れないようにしてしまえばいいんじゃないか?
砦や軍事拠点を勇者一行が叩くのは別段問題はないだろう、むしろ彼らからしたら当然。
戦略として当然である以上は、そこに関してツッコミは入れない。
だが戦えない魔族たちに刃を向ける必要はあるものだろうか?
我々が危険にさらさせる理由もあるのか?
それを考慮した結果、ただの住居地区には特殊な結界を張り魔族以外の立ち入りを拒む。
その計画は大きく広がり、魔界そのものを結界に包むことで勇者一行に、ひいては人間に
責められる恐怖を教えてやろうという話になっていた。
……それはそれでいいのだが、随分と大掛かりだな。
そんな結界、どれだけの時間があれば出来上がるのだろうか………。
さて、これが実現するとすれば考えておきたい部分は、何があるだろう。
魔王レーニィの教育計画、だろうか。
……そうだ、それがいい。
知識は私と歴史学者の二人。
魔術はポリアンナ氏が。
そして剣は……どうしようか。
あの人、素手でも絶対になんとかできてしまうらしいんだよなあ……
下手すれば積み木投げておけばいいんじゃないかという次元らしい。
だがまだ、それが真実なのかどうかどうしてもこの目で見たい。
それを見てから、剣……もとい近接技術が必要かを考慮する。
これからかなり魔界は忙しくなるだろうが、人間界はどうなるのか。
魔族より魔族だった人間もいる勇者一行は今頃凱旋といった所か。
……つかの間の平和を楽しんでいると良い。
もうお前たちの時代は終わりへと近づいているのだ。
せいぜい、今のうちに自分たちが世界の頂点であるという驕りを直しておくといい。
それができた人間だったのなら、しっかりと新たな世界でも生かしてやろう。