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8.出発当日の朝

 こんにちは、葵枝燕です。

 連載『救いたがりの死神』、第九話「8.出発当日の朝」をお送りします。

 迷っていたのですが、迷ったところでどうにもならないと思うので、とりあえず送り出します。読み返しつつ改稿するでしょう、多分。

 もう毎度お馴染み感がありますが、今回もリオは人間界にいきません。あと三話くらいしたら、いくと思います。

 それでは、どうぞご覧ください!

 目覚まし時計の音が二つ、刻まれたところで止める。いつものように、すっきりとした目覚めだった。

 仕事らしい仕事をできないまま、早々に役目を奪われた(てい)の目覚まし時計は、どこか不満そうに僕を見ているようだ。いつものことなんだけれど、やはり僕に目覚まし時計というものは無用の長物な気がする。いや、別に邪魔だとか思っているわけではないのだけれど。朝にめっぽう弱い兄さんやナノと違って、僕は朝も夜もわりと元気に活動できるタイプだから、ただ単に必要ないってだけのこと。

 そんなことを考えながら起き上がった僕は、廊下を忍び足で進み、一階へと下りる。それは、以前までここに住んでいた兄さんを起こさないようにするために身に付いた癖で、今は正直必要のないものだった。それでも、あの頃兄に何度も怒鳴られたことは僕の脳に深く刻まれたらしく、兄がいなくなった今でも抜けない棘となって残っているのだ。

 いつもと同じ、静かな空間。両親と三人で住んでいるこの家だが、父も母も共に仕事で忙しく、顔を合わせることはほぼなかった。最近一緒に食卓を囲んだのはいつかと問われれば、正確には思い出せないくらい両親とはご無沙汰だ。寂しいといえば寂しいけど、決して愛されていないわけじゃない。それだけはわかる。

 朝食にイチゴジャムを塗った食パンをかじりながら、僕はもう一度任務のことを思い出していた。

 死亡予定者は、()(ばり)(あい)()。十七歳の女性で、死因は病。任務の心得は――……。

 そこで一瞬思考が停止する。書類を提出したとき、上司でもある兄から特に念を押されたことが、ムクリと音を立てて現れた。

 ――死亡予定者とは極力関わるな。

 関わってはいけない深いわけがあるのかもしれないが、なぜなのかがわからなかった。死亡予定者を深く知ることは、いけないことなのだろうか。しかし、僕は、それを深く考えることをしなかった。関わらなきゃいい、それよりも出発までまだ時間はある、家の掃除でもしよう――そんなことを思い付いていた。

 昨夜は不安しかなかったのが嘘のように、今朝は任務のことをどこか軽く考えていた。よくわからない余裕があった。そうして僕は、残りのパンを口の中へ押し込み、それを牛乳で流し込んだのだった。

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