7.出発前夜
こんにちは、葵枝燕です。
『救いたがりの死神』第八話「7.出発前夜」をお送りします。
前話の投稿から約五ヶ月。迷っていたのですが、そんなことではいつまで経っても投稿できないと思うので、とりあえず投稿します。改稿は……時々読み返しつつやっていくと思います。
更新が五ヶ月も空いたので、前話までのあらすじを書いておきます。初めての実践任務を与えられた新米死神のリオは、任務で必要な書類を上司のザイに提出した――といったところでしょうか。驚くほどザックリしてますね……。
いい加減、リオを人間界に出してあげないとなと思いつつ、今回もまだ人間界にいきません。でもやっと、行ける目処がついたかなって思っています。
それでは、どうぞご覧ください!
必要なものを鞄に入れ、息を一つ吐く。念には念を……という思いから、確認作業を五回はしたからだろうか。何だかどっと疲れが押し寄せてきた。
とはいっても、それほど準備するものはなかった。死亡予定者の書類をまとめたファイルと、普段は名札代わりに使っている身分証、人間界の言葉でいえば携帯電話みたいな形と機能を持った通信機――最低限必要なものは、その三つだけだ。しかし今回の僕の場合、それらに加えて、兄から頼まれた買い物をするという任務がある。つまり、人間界のお金やら、お土産を入れる用の鞄やらも、持っていかなければならない。まあ、それを入れても、たいした荷物にはならなかったんだけど。
「初任務、かぁ……」
正直なところ、実感はあまり湧いていない。日付が変わって、明日の昼には人間界へと行かなければならない。それはつまり、ファイルに書かれた死亡予定者――戸張藍音の命を刈らなければならないということだ。
「命を刈るって、何なんだろ」
兄からは、今までの任務の流れなどは教えてもらえなかった。いや、そもそも僕は、誰にも任務について訊かなかった。それは多分、一人でもできると恰好を付けたかったからなのかもしれない。今頃になって、それを後悔し始めていた。
こんな調子で、本当に僕は大丈夫なのだろうか……。そんな不安だけが強くなっていく気がする。ずっと願っていた初任務だというのに、こんなことでいいのだろうか。こんな僕に、ちゃんと務まるのだろうか。
「どうしよう……。不安しかない……」
そう言葉にしてしまうと、ますます不安ばかりが膨らんでいく。僕はそれを振り払うように、頭を振った。
不安に思っていても仕方がない。やってみればきっと、どうにかなるはずだ。そうやって、自分で自分を奮い立たせるしか、やることはなかった。
「頑張れ、リオ」
いよいよ明日、僕の初任務が始まるのだ。待ち焦がれた、実践任務じゃないか。そう思って、僕は僕自身を励ましたのだった。




