3.ナノ-1
こんにちは、葵枝燕です。
『救いたがりの死神』、第四話でございます。
新キャラが出ます。女の子です。
それから、途中で話が切れます。長くなりそうだったので、分けました。物足りないかもしれませんが、ご了承いただければ幸いです。
それでは、第四話、お楽しみください。
ファイルを閉じる。何度見ても変わらない事実が、そこにあるだけだった。
戸張藍音という少女は、十七歳でその生を終える。理由は、病。
それだけの事実が、単調に書かれているだけだった。何度も何度も確認しても、僕の見間違えではなかった。変えられないことが、そこにはただ記録されているだけだ。
報告書の内容を思い出しては、不安と哀れみだけが強くなる。その所為で、忍び寄ってくる気配を感じ取ることができなかった。
「リーオっ!」
「ふぎゃあ!」
声と共に、背中を襲う衝撃。考え込んでいた所為で、何の対処もしていなかった。自分でも間抜けだと感じるほど変な声が、口からこぼれ出た。
「ごめん。大丈夫?」
心配していそうな言葉の並び。そっと、振り向いてみる。しかしそこには、それとは裏腹な表情がいた。衝撃の主は、楽しそうに笑っている。
「大丈夫そうに、見えるのかな……?」
色々衝撃が抜けきらないまま、訊ねてみる。
「んー……そうは見えないわね」
「謝る気は……?」
彼女は、考え込むように顎に手をやる。その表情も、精一杯思考を巡らせているらしかった。やがてその手を外すと、彼女はパッと笑顔になる。
「ないわね! むしろ、謝らなきゃ駄目なの?」
「あぁ、はい。そう言うと思ったよ」
訊いた僕が莫迦だった。そんな思いで、彼女を見た。
「何よぉ。ちょっと暗いオーラ背負ってたから、元気付けてあげようと思ったのに」
「ナノ、余計なお世話って言葉知ってる?」
ナノ。それが彼女の名前だ。僕とは同期であると共に、幼馴染みでもある。ナノという言葉の語源は、ギリシャ語で「小人」を表すnanosであるらしい。それが表すように、彼女もまた小柄な体躯をしている。
「余計? せっかくあたしが気遣ってやったのに、その言い草はないんじゃないの?」
「気遣いって、そんな恩着せがましくするものじゃないと思うんだけど」
ナノは頬を膨らませる。それは彼女がよくやる表情で、「つまらない」という意思表示だ。自分の感情がすぐ顔に表れる、それが余計に彼女を幼く見せるのだ。
「それで、何でナノがこんなところに? 僕をからかいに来ただけ、じゃないでしょ?」
「そんなに暇じゃないわよ」
ムッとした表情のまま、ナノは言う。
ナノのいる部署は、事務作業の全てを取り仕切っている。書類の整理や管理、勤務している死神全員分の給与の管理などなど――少し前まで僕もかかわっていた部署だ。だから、その大変さの一端は知っているつもりだった。
「何かね、うん。やっぱあんたに回ったんだなって思って、それで……」
「ん? 何、どういうこと?」