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プロローグ:選考会開幕

一言だけ。このページを見てくださりありがとうございます!!

「も、も、あった!」

 書店で同人誌を選んでいる若者が一人。名前を霧島宏人きりしまひろとという。いつもはその場で本を選んで買っているが今日はとある本を探していた。



「なぁ宏人、モエ燃えはっぴぃライフっつう同人誌の漫画があるんだけどさぁ、知ってる?」

「なんだよそれ、はじめて聞くんだけど」

「それな、神の座を手に入れられる大会に参加できるチケットになってるらしい」

「は?」

 宏人は大げさに言ってみる。

 バカバカしいのもそうだが、神の座ってなぁ。直ぐにそう思った。

「まぁそう言うなよ。昨日都市伝説を扱ってるサイトに久しぶりに行ってみたらそんな話題があってよ…」

「で、今日俺にあったら買ってこいと?」

「すまん!今日塾だからさ、ね?」

 頭を深く下げて頼み込む。

「分かった。みてくるよ」



「本当にあったなんてな…」

 宏人はほんの少しだけ驚いた。だがそこに一冊しかなかったので直ぐにレジに持って行くことにする。 


「ありがとうございました」

レジ係りの店員が頭を下げると店の奥からもう一人店員が出てきた。

「今の本、タイトル覚えてるか?」

「モエ燃え……とかいうやつでしたよ。それが?」

「おかしいなぁ。そんな本入荷した覚えが無いんだよ」


「じいちゃん、ただいま」

「おかえり。今日は何買ってきた?」

「同人誌とフィギュア。ダブり出たんだけど、じいちゃんいる?」

「どれ見せてみな」

 宏人のじいちゃん、名前を泰蔵たいぞうという。

 泰蔵も学生の頃には宏人の様にフィギュアを買っていたりしていた。だがここ数年でまた萌えが流行りだし、老いた今でもアニメを見たりフィギュアを買ったりしているのだ。

「ほぉ、よく出来とる。ミルちゃんはやっぱり良いのぉ」

 思わず泰蔵の顔に笑みがこぼれる。

「じいちゃんはミル子がお気に入りだもんね」


 泰蔵とアニメを見た後、自室で買ってきた同人誌を机に広げた。

「モエ燃えはっぴぃライフだっけ……胡散臭いというか、露骨というか」

 宏人は失笑しつつも手にとって読んでみる。中身はなかなかで、悪くない。ストーリーにしても絵にしてもだ。

 最後のページを開くと紙が一枚落ちた。紙には文字が書いてあるようだ。

「あれ?」

 紙を拾って読んでみる。


お知らせ


次代の神を決める選考会を開催いたします。皆様奮ってご参加下さい。詳細は次の通りです。


参加条件

超能力や人間離れした技を使うことの出来ない普通の人間であること。


優勝賞品

神の力とその地位


参加方法

下記の空欄に参加者本人の署名をお願いします。募集終了後に開会の宴にご招待いたします。


「な、なんだこりゃ…まじかよ」

 書店で都市伝説級の本を見つけ、更に伝説は事実だった。これ程驚いた事は宏人が生きてきた中でもそうは無い。だが更なる驚愕が宏人に突きつけられる。

「は、はい?なんですか、これ?」

 思わず声を上げた宏人が見たのは紙の最後、署名を書く空欄の少し上。そこには、募集終了までと刻まれたデジタル時計風のイラストが書いてあった。

「この時計…動いてる?」

 募集終了は今日の深夜十二時。それまでに署名すれば参加できるのか?というよりも、これって本当なのか?手の込んだ悪戯だよな、きっと。でも署名ぐらいは、良いよな?何が起きるってわけでもないし。

 宏人の手はペンを探す。

 すかさず握る。

 名前を書く。

 ため息が一つ。

「まさか、ね」

 宏人はなんだか解放された様な気分になる。

 それでも期待はあった。都市伝説が現実として目の前に現れたのだ。一生に一度、あるかないかの経験なのだ。これを逃す手は無い。

「宏人ぉ、ご飯だぞー」

 泰蔵の声が響く。宏人は現実に引き戻された。


「ねぇ、じいちゃん」

「なんだ?」

 泰蔵特製のカレーを頬張りながら、

「神様ってさ、この部屋の夜景よりもっとすごい景色が見られんのかな?」

 宏人と泰蔵が住むのは高層マンションの一角。宏人の両親が用意したものだ。

 父は職業柄海外出張が多く一年で宏人と会うのは数回程度。母もテレビ局に勤めていたが昨年アメリカ支局に異動となり、まず会えない。

「なんだ、そりゃ。新しいアニメのキャッチコピーか?」

 福神漬けを食べながらビールを一気に飲み干す。

「いや、そんなんじゃないけど」

「でもお前の言う事も嘘じゃないかもな。まぁいい、じいちゃんアニメ見るぞ」

 そう言って食器を片付ける。片付け終わるとDVDを選び始めた。

「何見るのさ?」

「今日は劇場版が良いのぉ。どれ、じいちゃんが高校生だった頃の流行のを見るか」

 泰蔵が選んだのはロボットアニメだった。ロボットアニメが衰退した今では滅多に眼にする機会がない。そんなロボットアニメは宏人にとって新鮮だ。


 エンドロールを見終えた時には午前十二時を回ろうとしていた。宏人は選考会の事を思い出す。

「そろそろ寝るね。おやすみ」

「あいよ。おやすみ」

 宏人は真っ先に机に向かった。宏人は選考会のお知らせの残り時間を確認する。後二分程に迫っていた。

「そろそろか……?」

突然同人誌が青白い光を放つ。光は少しづつ強さを増していく。最後には部屋を飲み込む勢いになっていた。



「大丈夫ですか?起きてください!!」

 誰かが宏人の体を揺さぶる。宏人は目を開けた。宏人を起こしたのは執事らしき人物だった。

「こ、ここは?」

 深い眠りから覚めたような感覚のせいで完全には状況を把握できていない。

「選考会の、開会の宴の会場でございます」

 宏人は周りを見渡した。お気に入りのキャラのポスター、ネットオークションでフルコンプした自慢のフィギュア、今までに買った漫画の数々、すべて無い。

 宏人が気が付いたところは床一面に真紅のカーぺットが敷き詰められ、壁には豪華な装飾、そして目を見張るような巨大なシャンデリア、そのぐらいしかない。どうやらどこかの豪邸のようだ。

「では会場にご案内いたします」

 宏人も急いで付いて行く。

「ここでございます」

目の前には豪華な扉がある。宏人は思わず

「で、でかい……随分と豪華だな」

「左様でございます。この屋敷で一番に美しい装飾と執事一同自信を持って言えます」

 執事は誇らしげに語る。

「では中にお入り下さい。ほかのお客様もお待ちです」

 宏人はその巨大な扉を開ける。

 そこには数え切れないほどの丸いテーブルが並び、先程までとは言えないが豪勢なシャンデリアが幾つも煌めいている。

「ようこそ。席にご案内いたします」

「ど、どうも」

 宏人の気分は高級フランス料理店に来た気分になっていた。去年家族三人でクリスマスに食事をした店に何処と無く雰囲気が似ている。

 案内された席に座ると周りの椅子にも何かが座っていた。どれも人の形をした霧の様だ。

「霧?ガス?」

 宏人が触れようとする。

「おいおい、俺は霧でもガスでもないよ。どうやら自分以外の参加者はこうやって誰だが分からないようにしてるみたいだ」

「そ、そうなんですか」

「主がご到着です。皆様お静かに!!」

 執事の一人が声を挙げる。といっても誰が誰だか分からないこの場所が騒がしくなる事もなかった。

 宏人が先程入ってきた扉が開く。屋敷の主、神が登場した。

 宏人の容姿の推測は完全にはずれた。白いスーツに立派な髭をたくわえた老人だ。人間と何ら変わりは無い。神は早足で部屋の一番奥に設置された椅子に向かって歩く。そしてゆっくりと椅子に座り込んだ後話し始めた。

「今日は参加者の皆に感謝する。これだけの人数が集まるとは」

 そう言って辺りを見回す。宏人も見回した。ざっと百人は居るだろうか。

「知っての通りだと思うが、私は皆が神と呼ぶ存在である。私もそろそろ引退かと思ってね……おっと、話すと長くなる。ではルールを説明しようか」

 会場が少しざわめく。

「今、君達が所持してるであろう同人誌モエはぴだがこれは全部で本編が五巻、それと番外編が二巻ある。本編を五巻集めたならば神に相応しいかどうかの審査を受ける事ができる。これにいち早く合格したものに神の座を与える」

 会場のざわめきは激しくなった。

「簡単すぎるんじゃないのか?」

 誰かが言う。

「そんな事は無い。巻数が増える程冊数は少なくしてある。そして、ここからがこの選考会の醍醐味だ」

 不敵な笑みを浮かべてまた喋りだす。

「この漫画、所持している者に特別な力を与えるのだ。それは巻数が増えるたびに強化される……つまりだ、戦って奪い合えという事だよ」

「それでは、巻数が少ないものが不利だ!」

 また誰かが不満をこぼす。

「大丈夫だ。街や、山間部にモンスターを配置しておく。それと戦い勝利すれば、少しずつ力が強化される。これなら安心であろう?」

 ざわめきは止まない。誰かが質問する。

「手持ちの同人誌モエはぴを失ったらどうなる?」

怪物モンスターと化す」

 空気が一瞬凍ったが、直ぐに皆騒ぎ出した。もちろん宏人もだ。

「まぁ良い。詳しいルールはルールブックを読みたまえ。さぁ、大会ラリーの幕開けだ!!フッフッフ……ハッハッハッハァァ!!!!」

 また青白い光が周りを包み込む。

 


「うわ!」

 ドタン!

 宏人が次に目を覚ましたのは自分の部屋だった。体勢からするとベットから落ちたようだ。

 夢?こんなリアルなのは始めてかもしれない。

「あ〜あ」

 夢じゃなかったらなぁ、どんなに面白いだろう。でもモンスターはごめんだ。

 一人呟いているとベッドからノートの様なものが落ちてきた。どうせ同人誌だろ、宏人は拾い上げて表紙を見た。

「選考会…ルールブック……」

 思わず手が震える。

「はぁ。しゃぁねぇ、頑張りますか」

 何とかなるさ、と楽観的になる。カーテンを開けると太陽が昇ろうとしていた。

 戦いの始まりを予兆する様に。


ここまで読んでくれたあなた、更に感謝です。続きのアップは出来るだけ早くにしたいと思っています。次回も楽しみに待っていただければ嬉しいです。

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