一-七
No.13
三人の後を追うようにして、エレベーターの前に立つ。三人はあからさまな嫌悪の目を向けて、こちらを睨んできた。
「俺たちは、君が嫌いだ」
一人の男が言った。私だって好きではない。二人は男で、一人は女だ。皆黙ったまま待っていると、エレベーターが来た。
私は、お先にどうぞと言った。三人はこちらを睨んで、エレベーターに乗って行ってしまった。次のエレベーターを待つことにする。
エレベーターに乗り、下の方の階(動物園は地下にある気がする)に行くことにする。動物園とはどんな感じだろう。
地下に着いたようだ。ドアが開く。緑色の床が続いている。黄色の線が引いてあり、それを辿って行くと、更衣室があった。私は自分の服を脱ぎ、そこにあった青い服に着替えた。長靴があったので自分の靴を脱ぎ、それに履き替えた。
着替え終わったところで、この動物園(まだ分からないが)の職員らしき人物が来た。眼鏡をかけた男だ。私と同じ格好をしている。彼は、僕に着いて来てくださいと言った。私は案内されるままついて行った。
「ここは動物園ですか?」
「ええそうです。小さいけど、動物園です。これから園内に入る前に塵を除去してもらいます」
彼と私は塵を強風で除去する装置の中に入った。そこから出て、洗面所で念入りに手を洗い、アルコールを手に吹き付け、マスクを着け、キャップを二枚被り、ゴム手袋をはめた。私は疑問に思い、
「ここは本当に動物園ですか?」と再び聞いた。当たり前じゃないですかと彼は言った。
自動ドアの前に来た。この先が動物園だそうだ。彼が先に入り私もそれに続いた。
園内に入る。私はここに来たことがあるような気がする。別の所だっただろうか?
動物園の中は大きな水槽が所狭しと並べてある。全ての水槽は水で満たされており、その中に犬が沈んでいた。私は前を行く職員に尋ねた。
「この動物園は犬しかいませんね」
「ええ、そうなんですよ。小さい所なので」職員は恥ずかしそうに言った。
犬を一頭一頭見て回る。床が水で濡れていて、園内も何処となく汚れているような感じだ。それぞれの犬は水に浸かったまま動かず、眠っているように見える。色々な種類の犬がいた。どの犬も息一つせず、水の底で体を伏せていた。途中で職員に、
「何故犬を水槽に入れているのですか?」と聞いた。彼は、
「透明な板で囲むためです。水もガラスも犬を守っているのですよ」と答えた。
この工場の様な動物園を二人で回っていた。二頭の犬の入った少し大きな水槽があった。私は何故か気になって見ていると、二頭の内の一頭が目を開いた。そして体を起こし、上方に泳いで行き、水面に顔を出した。息をする犬もいる、と不思議に思った。
「この犬はどうなるんですか?」
職員は答えずに先に行ってしまった。水面に顔を出していた犬は、疲れたようで、また下に沈んでいった。底に着いた犬はこちらに顔を向け、私の目を見た。タオルを取ってくれ、と聞こえた。私はタオル(横に掛けてあった)を取り、水槽に投げ入れた。犬が水槽から出てきた。
その後、犬は逃げ去り、私は動物園の職員にこっぴどく叱られた。私は床の掃除を命じられた。
そしてこの動物園は火事になった。あの犬が火を点けたのだ。




