表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/39

一-七

No.13

 三人の後を追うようにして、エレベーターの前に立つ。三人はあからさまな嫌悪の目を向けて、こちらを睨んできた。

 「俺たちは、君が嫌いだ」

 一人の男が言った。私だって好きではない。二人は男で、一人は女だ。皆黙ったまま待っていると、エレベーターが来た。

 私は、お先にどうぞと言った。三人はこちらを睨んで、エレベーターに乗って行ってしまった。次のエレベーターを待つことにする。

 エレベーターに乗り、下の方の階(動物園は地下にある気がする)に行くことにする。動物園とはどんな感じだろう。

 地下に着いたようだ。ドアが開く。緑色の床が続いている。黄色の線が引いてあり、それを辿って行くと、更衣室があった。私は自分の服を脱ぎ、そこにあった青い服に着替えた。長靴があったので自分の靴を脱ぎ、それに履き替えた。

 着替え終わったところで、この動物園(まだ分からないが)の職員らしき人物が来た。眼鏡をかけた男だ。私と同じ格好をしている。彼は、僕に着いて来てくださいと言った。私は案内されるままついて行った。

 「ここは動物園ですか?」

 「ええそうです。小さいけど、動物園です。これから園内に入る前に塵を除去してもらいます」

 彼と私は塵を強風で除去する装置の中に入った。そこから出て、洗面所で念入りに手を洗い、アルコールを手に吹き付け、マスクを着け、キャップを二枚被り、ゴム手袋をはめた。私は疑問に思い、

 「ここは本当に動物園ですか?」と再び聞いた。当たり前じゃないですかと彼は言った。

 自動ドアの前に来た。この先が動物園だそうだ。彼が先に入り私もそれに続いた。

 園内に入る。私はここに来たことがあるような気がする。別の所だっただろうか?

 動物園の中は大きな水槽が所狭しと並べてある。全ての水槽は水で満たされており、その中に犬が沈んでいた。私は前を行く職員に尋ねた。

 「この動物園は犬しかいませんね」

 「ええ、そうなんですよ。小さい所なので」職員は恥ずかしそうに言った。

 犬を一頭一頭見て回る。床が水で濡れていて、園内も何処となく汚れているような感じだ。それぞれの犬は水に浸かったまま動かず、眠っているように見える。色々な種類の犬がいた。どの犬も息一つせず、水の底で体を伏せていた。途中で職員に、

 「何故犬を水槽に入れているのですか?」と聞いた。彼は、

 「透明な板で囲むためです。水もガラスも犬を守っているのですよ」と答えた。

 この工場の様な動物園を二人で回っていた。二頭の犬の入った少し大きな水槽があった。私は何故か気になって見ていると、二頭の内の一頭が目を開いた。そして体を起こし、上方に泳いで行き、水面に顔を出した。息をする犬もいる、と不思議に思った。

 「この犬はどうなるんですか?」

 職員は答えずに先に行ってしまった。水面に顔を出していた犬は、疲れたようで、また下に沈んでいった。底に着いた犬はこちらに顔を向け、私の目を見た。タオルを取ってくれ、と聞こえた。私はタオル(横に掛けてあった)を取り、水槽に投げ入れた。犬が水槽から出てきた。

 その後、犬は逃げ去り、私は動物園の職員にこっぴどく叱られた。私は床の掃除を命じられた。

 そしてこの動物園は火事になった。あの犬が火を点けたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ