三-八
No.35
私はベッドに寝転んでいる。ドアが開き、骸骨が入って来る。
骸骨 わっ、まだいた。
私 おっ、何ですか? 誰?
骸骨 人骨です。さっきあの殺人鬼が殺されましたよ。もうあなたも、此処に居る必要ないよ。
私 あ、そうですか。(私は体を起こす)それで今度は何処に行けば。
骸骨 ……何処って言われてもなあ。もう行く所はありませんよ。それに此処はあなたの夢の中でしょう。本当に、人を殺しておいて。変な人だなあ。
私 ?、僕は気が付いたら此処に居たんだけど。行く所が無いなら寝てますよ。
骸骨 あなたは何も認めないから、何時まで経っても死なない。そんなに生きていたいのか? まあ……、もう全て殺してしまったんだからいいじゃない。そんなに寝たいなら、一緒に寝てあげる。(私の隣に座る)
骨の手が伸びてくる。私の額に冷たい骨が触れ、髪を撫でる。私は頭蓋骨に少し残っている皮と毛髪を見ている。しゃれこうべが私の顔に近づき……。
私は目が覚めた。ずいぶん寝ていたようだ。起き上がろうとするが、まだ手足は繋がれており、動かせない。私の額に巨大な槌の面が触れている。私の周りに居た四人の人間たちは皆、立ったまま、固まっている。
これはどういう事だろう? 何故誰も動かないんだ? 何をさせようとしているのか? 何故私は死なないのだろう? 何を求めているのか?
眠たくは無いが、また目を瞑る。全てが止まっているなら、起きていても疲れるだけだ。ただ、もう余計な情報が入ってこない事だけが幸いだ。私はまた夢を見る事になる。
少し眠った。また目が覚めた。私は何の夢も見る事が出来なかった。辺りは変わらず、全てが止まっている様に感じる。私はこのままなのだろうか? この槌は落ちる事はないのか。
(無いかもしれない)時間が経った。私は辺りを観察し、考え、疲れたら眠り、また起き、見て、思考し、また休んだ。辺りは何も変わらず、何度動かしても、手足の枷を外す事は出来なかった。声を出したりもしたが、反応は無かった。
私は空腹も感じず、また、いかなる欲望も欲求も感じない。静かな気分だ。私は手を見る、私の手は真っ黒である。光も止まっているのだ。まるで影の様だ。私は私の影になった。私は私が殺した。それを今更のように感じる。
外の世界、またその外の世界、そしてその外の世界はどうなっているのだろう。私だけ止まったまま、全ては進んでいるのだろうか。もう何かを知る事は無い。私はこの様な世界を望んでいたのだろう。欲している物が手に入るという事は良い事だ。
以前の記憶を辿ってみたりする。ずっと辿っている、と、またここで、この石の寝台に横たわっている自分に辿り着く。私はあまり記憶が無い。自分が何をして来たのか、また何をしようとしていたのか。
腕や、足を、動かしている。どのくらい動かしただろうか。外れた、一つ、二つと。私は感動し、歩き回る。この小さな世界を、隈なく歩き回った。上に行き、また下にも行った。もう特に言う事は無い。
私は全ての終わりが来るまで此処に留まる。私は全てが終わる所を見るつもりでいる。それとも此処だけ止まっているのだろうか。全てが終わっても此処だけ在るのだろうか?




