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三-七

No.34

 私 僕はあなたの言っている事は嘘だと思っていますけどね。だいたいあなたの話はおかしいな。第一、僕の人生は僕のものだし、誰のものでもない。あなたの話だとまるで、あなたの持ち物のように言っていますが。まあ僕から言わせれば嘘だ。第二に、僕はあなたと会った事があるが、それは二回だ。今回で三回目で、仮に多くても四回ぐらいではないですか? 一回目は生きている時の夢で、二回目は死んでから、三回目は今です。ひょっとしたら、夢の中でもう一回ぐらい会っていたかもしれませんが、まあどっちにしろ、あなたはその仕事をしていましたよ。三つ目は僕はあなたに誰かを殺せと命令した覚えはありませんね。何故そんな嘘を付くのかわからないな。嫌なら断ればいいじゃないか。でも、彼の言う事も少しはわかります。僕も少し弱気になった時に、彼の助けを(命令などしていません)借りたいと思ったことはあります。でもそれだけで、自分が殺したいとも、ましてやあなたに命令などしていません。そして四つ目に、おそらく、彼より私の方が苦しんできました。私はその苦しみに耐えられず、自殺をしたのです。彼から逃げる為ではない。私は彼が何かに悩んだり、苦しんだりしている所を見たことが無い。何時も淡々としていますよ。彼には人間的な苦悩が一つも見当たらない。きっと自分が助かる為に嘘を付いているのでしょう。

 紳士 皆さん、彼は本当の事を言ったことが無いのです。だから本当の事がどういうものか知らないのです。彼は生前も死後も、そして此処に来てからも、一つも本当の事を言っていません。……私は彼に言う事はありません。全てを騙した彼にはそれ相応の罰が下されるでしょう。(紳士は私に向き直り)あなたは知っているはずだ。自分が後から来た事を。自分が全ての始まりであり、元凶であるのを。あなたの為に犠牲になった物や事が、どうなったか、知っているはずだ。あなたが全て悪いのです。僕が殺したのではなく、あなたが殺したのだ。あなたは誰でもないのですよ。だから生命も無いし、また交わされる約束も無い。

 男1 君の話はわかった。ここに座りたまえ。(紳士はベッドに座った)

 男2 君の話に共感する所はあった。しかし、君が殺したという事実は変わらない。

 男3 彼の(私の)話とだいぶ食い違いがあるな。それに彼を殺す気でいたな。そして私たちも殺そうとしたな。

 男4 君は言い訳に終始していて、反省が無かったな。自分を正当化し過ぎて、少々滑稽だったな。軽く話しすぎて、重みが無かったな。私たちはこれから、合議をする事にする。


 男四人部屋から出て行く。私は椅子に腰掛けて、紳士の方を向く。


 私 終わりましたね。どうですか?

 紳士 まあ、此処に来る前から考えていた通りですね。そういえばあなたは「通り」を抜けて来たそうですね。どうですか?

 私 別に何も。まあ、色々ありましたよ。

 紳士 あなたは見たでしょう。そしてまた係わり、約束を破った。あちらでもこちらでも。あなたがきちんと約束を守り、私に殺されていれば、それで世界は完成したのです。

 私 僕はそうは思わないな。始めからあなたが誰も殺さなければよかったんですよ。まだ認めないのですか?

 紳士 あなたは喜んで考えていただけで、生きて、生活していたのは私ですよ。あなたの言い訳は聞き飽きました。おそらく僕は死ぬでしょう。あなたに殺されるのです。あなたは何時まで居たいのですか?


 (暗転)



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