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一-一

No.7

 昔見た夢の話をしよう。私はマンションに働きに来ている。このマンションにはおそらく全ての部屋に風俗関係の店が入っている。そのマンションの上の方の階。一つの階には七つの部屋がある。端の部屋には若い夫婦が住んでいる。その次の部屋には若い風俗嬢が客を待っている。この階の真ん中の部屋が私の勤め先だ。ここは風俗店の受付になっている。ここで受付をした客をホテルへ案内し、女の子を向かわせるのだろう。

 私は部屋に入るが仕事がわからない。部屋には机と椅子の他なにもない。私の手には首がある。サングラスをかけた中年の首だ。髭が生えている。私の仕事はこの首をこの受付の椅子にきちんと乗せることだ。でないと受付をする人間がいない。私は椅子に首を載せる。首は椅子から転げ落ちてしまう。また首を載せる。転げ落ちる。椅子が壊れているのだ。私は何度か挑戦し、椅子の上に首を載せる骨を掴んだ。無事椅子の上に中年の首を載せることができた。

 また以前この様な夢を見た。私は大きな会場にいる。誰かが壇上で演説をしている。周りの聴衆は皆聞き入り、話が終わると会場全ての人々が立ち上がり拍手をする。私は壇上の横に掛かっていた絵画を見ていた。その絵は太陽系を描いたものだ。巨大な太陽が中心に描かれ、それを取り巻く太陽系の惑星が描かれていた。稚拙な絵に思われた。おそらく壇上の人物が描いたものに違いない。でも下手というほどではないかな。

 私は家に帰る。家で父が私にまた明日も行けと言う。私は何とか言い訳をして行かないようにしている。まあ行かないだろう。

 もう一つ夢の話。私は修行していた。洞窟で坐禅を組んでいた。壁には雑草が生い茂っていた。私は壁を背にして座っていた。立ち上がって歩く。すると私はある事に気づく。

 私の座っていた左右の草は他の草に比べ大きく成長していた。私もなかなかのものだ。そして私の座っていた所にあった草は(私が背にしていた草は)全て枯れていた。人間完全なことはない。良かった。

 夢の話ばかりしているのは何故だろう?

 現実の話をしなくてはいけない。現実の話―――。それはできない。何故なら私は死んでいるからだ。死んだ人間は物を見ることができないし、音を聞くこともできない。匂いもかげないし、感じることもできない。頭を使うことも、体を使うことも、金を使うこともできない。現実の話もできない。現実的な話もできない。超現実的な話ならできるかな。

 私は超能力者ではないし、霊能力者でもない。最近流行っているな。まあ、私が見ることができるのは夢だけだ。死んだ人間が夢を見ることができるのかって? できると思うけどなぁ。現に私が見てる。まあ、話に付き合って下さい。皆さんもじきに見られますよ。

 もう死んでしまったので先はないのですが、生前の私の話を少し。私は会社員でした。たしか金融関係だったかな。違うな、学校の教師でした。いや、塾の講師でした。教え子が沢山いました。パン屋でした。毎朝起きてパンを焼いていました。何か違うな。漫画家でした。ヒット作品を描いていました。全て嘘です。本当は私にも思い出せない。私はどんな職業だったか? それは私が聞きたい。

 まあ、とりあえず、私は私の人生を生き、社会的に働き、遊んだり、恋愛をしたり、悩んだり、笑ったり、昼寝をしたり、飯を食ったりしたわけです。それ以外何かあるのかな。

 それで、ある日私は死んでしまった。原因は何だろう。おそらく事故死と思われる。交通事故です。運転が上手くないから。

 しかし、ここは変わった風景が広がっている。



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