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三-三

No.30

 七色の蛇は白黒の蛇と金色の蛇が居る所に向かう。白黒の蛇は透明な球体を見ている。金色の蛇は透明な球体を見ている。七色の蛇も透明な球体を見る。

 三匹の蛇は透明な球体を取り囲むようにその周りを回る。

 白黒の蛇は這って進み、問いを発する。

 「我々は物事をはっきりとさせなければならないのではないか? 全てを善悪にしなければならないのではないか? 物事を良し悪しで判断しなければならないのではないか? 価値を定めなくてはならないのではないか?」

 金色の蛇は這って進み、問いを発する。

 「物事は高いものと低いものがあるのではないか? 全てを貧富に分けなくてはならないのではないか? 物事に美醜を付与しなくてはならないのではないか? 有限と無限を見極めなくてはならないのではないか?」

 七色の蛇は這って進み、問いを発する。

 「物事は分類しなければならないのではないか? 全てには順序があるのではないか? 物事に基準を付けなくてはならないのではないか? 始まりから終わりまでを辿らなくてはならないのではないか?」

 白黒の蛇は金色の蛇に訊ねる。

 「物事それぞれに価値はあれど、価値に高低や貧富や美醜、有無はあるだろうか? 価値とはただその人が定めるものではないだろうか?」

 金色の蛇は七色の蛇に訊ねる。

 「物事それぞれに有限と無限はあれど、有無に分類や順序や基準、その終始はあるだろうか? 有無とはただその人が見るだけのものではないだろうか?」

 七色の蛇は白黒の蛇に訊ねる。

 「物事それぞれに始まりと終わりはあれど、はっきりした事や善悪や良し悪し、その価値はあるだろうか? 始まりと終わりはただその人が辿るものではないだろうか?」

 白黒の蛇は七色の蛇を欲する。

 「私は色々な物事を見てきた。それらは善悪では計れないものであった。それらは良いとも悪いとも言えないものであった。価値を定める事が出来なかった。よって私は分類し、それらに順序を付けた上、基準、すなわち私に於ける物事の価値を定めたい」

 七色の蛇は金色の蛇を欲する。

 「私は重たい物を背負ってきた。それらは分類する事が出来なかった。順序を付ける事が出来なかった。それらは繋がりが無く順番が無かった。基準を決定する事が出来なかった。よって私は最高のものと最低のもの、富んだものと貧しいもの、美しいものと醜いものに分け、私に於ける物事の基準を決めたい」

 金色の蛇は白黒の色の蛇を欲する。

 「私は力を感じていた。力は高くも低くもなかった。力に貧富はなかった。力に美醜を付ける事は出来なかった。力が有限か無限か見極める事が出来なかった。よって私は善悪を知り、その良し悪しを定め、価値、すなわち私を有限にして無限に導くものを見極めたい」

 この様に三匹の蛇たちは語り合った。

 透明な球体の中に人間が居る。外に居る蛇と同じ様に、三人で話し合っている。小さな球体の中の世界で、彼らはお互いが、お互いを理解できずにいた。

 蛇たちはそれを見守っていた。


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