三-一
NO.28
森の中に青い洞窟がある。その洞窟は、静かで暗く、空気が澄んでいる。
洞窟に池がある。地表に落ちた水が、少しずつ濾過され、滴って出来た小さな池だ。
奥に進むほど、光が入らず暗くなり、音が入らず静かになり、風が入らずひっそりしている。
時折、水がポタリと降る。空気が湿っていて、全てが濡れている。
森の外に広い草原がある。その草原には風が強く吹き抜け、遮るものが無い。
草原には大きな岩がある。少し人の手が加えられた岩だ。ゴツゴツした岩だ。
その岩は円に成る様に配置されている。この岩たちは夜が来るのを待っている。狂気と恍惚を誘う、喜びの配置。
岩は三重の円に配置されている。一つの円は世界を示し、一つの円は感謝を示し、一つの円は力を示す。
大地に対して月が出ている。小さく、何も与えないように、静かに動く。
月に雲がかかる。雲はその弱い光を隠し、大地に力を与え、目覚めさせる。
時折、月は強く光を出す。自身を求め、欲しているような、そんな感じがするから。
木星に対し火星がある。火星は性急な素早いものが好きだ。
常に言葉を投げかけ、また常に疑問を投げかける。そして何よりも早く、正確な解答を求める。
その表面はささくれ立ち、いつも苛立っている。そして意味を投げかけ、意図を求める。
火星に対し木星がある。木星は雄大な、そして、知る事の出来ない謎に満ちている。
常に諸々の原形を身にまとい、それらは、動き回り、渦を巻き、模様を創る。
それらの原形には、根底が無く、またその上にかぶせる言葉も無い。ただゆっくりと進み、結果を求めない。
森の中に石が転がっている。大小様々な石だ。石は雨に打たれ、地に飲み込まれ、風に晒され、耐えている。
石は考え、その考えは駆け巡り、また石に還る。少しずつ壊れ、土に帰る。時折、別の場所に行きたいと願う。
森の中に木が生えている。それぞれの木は、それぞれに光を求め、葉を広げ成長する。それぞれの木は、それぞれに水を求め、根を張り巡らせ伸びていく。
木は考え、その考えは幹を太くし、それぞれの季節に違う装いを見せる。時折、変わらないものを願う。
森の中に川が流れている。流れる水は光を反射し、何も受け取らない。全てに己が行き渡るように、小さく、細くなり、隅々まで流れ、満ちていく。
水は万物の源であり、それ自身である。それ故、届かない所は無いと思い、押し寄せ、流す。時折、気が変わり、全てを奪おうと思い、取り上げ、持ち去る。
森の足元に大地がある。森を支える土は、群がり、集まり、力を溜める。全てが集まるように、諸々を受け入れ、これを増やし、豊かにしていく。
土は生命の揺り籠であり、それ自身である。全てを統合したいと思い、寄り集め、押し上げる。時折、気が変わり、全てを手放し、突き放し、見捨てる。
そして、その土の中に眠る無数の死体がある。




