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2人のいない世界なんて耐えられない。

~深瀬side~


みんな殺された


榊原によって殺された


せめて、あの世でまた会うことは出来ないかと望んでいたのに


会うこともままならない


だって……………


































俺、生きてんだぜ?




…………………………






「…………さん、…………か……さん。深瀬さん!!」


看護士らしき人のその声で目が覚めた。

「…………………ぇ?」

「……!先生!!深瀬さんが目を覚ましました!!」

目が覚めた……………?

何で?俺は殺されたんじゃなかったのか?

「あの、ここは………………?」

「病院よ。あなた一週間も眠り続けていたから、本当に死んでしまったんじゃないかと心配したのよ?」

「あ、そうですか…。」


そこまで言われてハッと気づいた。



「……………二人は!!?」

「え?」

「俺が倒れていた側にあと二人、男の子と女の子がいませんでした!?」


「あ…………………その子たちなら…………。」


看護士さんは震えながらテレビを指差した。





『…………次に、○○市のアパートで二人の高校生と思われる少年と少女が遺体で見つかった事件についてです。二人とも身体に切り傷・刺し傷があり、少年が包丁を持っていたため、自殺したと見て捜査を進めています。なお、少年の身元はまだはっきりとしておらず………………………』












言葉も出なかった。


だって、その“少年”と“少女”が誰かを知っていたから。


2人とも死んだ。


そのくせに自分は生きている。


榊原は、本気で俺を殺そうとは思っていなかった。


それか、殺すという行為を恐れて本気でやり切ることが出来なかった。


どっちにしても、なんでだよ。


どうして俺が1人にならなきゃいけないんだよ。




「あ……でもお母さんはまだ入院しているけど、命に別状はないって。ね、だから落ち込まないで。」


フォローしてくれているつもりかもしれないが、今の俺には全く響かない。



「じゃあ、一旦戻るけど、何かあったらすぐに呼んでね。決してムリしちゃダメよ?」



そう言い残して看護士さんは病室を出て行った。



…………パタン



病室に沈黙が走る。

恐らくこのドア一枚の先には医師や看護士たちが俺を看病するためにあれやこれや施してくれているんだろう。


だが、もう俺はその恩恵を受ける気にはなれなかった。







2人のいない世界なんて耐えられない。


もし、俺が死んだら、母さん今度こそ悲しむだろうな。

それでも、ゴメン。やっぱり………








2人のいない世界なんて耐えられない。






軋む身体を支えながら、ベッドの側に置いてある自分のカバンに手を伸ばす。

そしてその中にあったビンを手に取る。


ビンの中身はいわゆる睡眠薬。榊原のことで休めなかった時期に、よく眠れるようにと事前に買っていたものだ。



まだビンの中には30粒くらい残っている。


俺は睡眠薬を手に出し、ロクに説明書も読まないまま、それを全て飲み込んだ。


もう、後戻りは出来ない。



薬を飲んだ直後、激しい睡魔が襲って来た。

今寝たら、次目覚めることは二度とないだろう。




母さん、看護士さん、本当にゴメン。



俺、榊原と吉本さんがいない世界では生きていけないや。



俺、もうすぐこの世を去るから。



最後まデ………………親不孝デ……………………ゴ…メン…………ナ………サ……………




………………………………








しばらくして看護士さんが入ってきた時、俺はすでに息を引き取っていた。

しかし、その時の俺の顔は、それはそれは幸せそうな顔だったらしい。






































(……深瀬くん。深瀬くん!)


(…!吉本さん!?)


(うん、ひさしぶり!やっと…会えたぁ…。)


(わわっ、ちょっ、よ、吉本さん!)


(ずっと、寂しかった……。)


(……ゴメン。…………そういえば、榊原は?)


(榊原くんなら、向こう。なんか………あわせる顔がないんだって。)


(ったく、何を今更。おーい、榊原!!)


(………(ビクッ))


(…………もう怒ってないからさぁ、こっち来いよ!)


(……………深瀬くん。僕は、君を監禁したうえ、吉本ちゃんを殺したんだよ?そんな僕が、今更…………)


(余計な御託はいいから。だったらさ、お前、何で俺を最後まで殺さなかったんだよ?)


(そ、それは………………)


(………………まあ良いや。理由は大体想像がつく。あとさ、さっきも言ったけど、もう怒ってないから。)


(榊原くん、私も殺されたとは思ってないから。いや、殺されたのは確かなんだけど、その、殺された意識を持ってないって言うか……いや、なんて言うの?………………まあ、私も怒ってないってこと。)


(深瀬くん、………吉本ちゃん……………。)


(そりゃあ、親とかにはスゲェ迷惑かけてしまったと思う。だけど、来てしまったものは仕方ないし、どっちにしても、お前らがいないのだけは嫌だった。)


(深瀬くん……………。)


(榊原、一つだけ確認しておく。もう、心を病ませたり、人を傷つけることはしないか?)


(……うん!絶対にしないし、したくない!深瀬くんと吉本ちゃんに誓う!!)


(フフッ、良かった。)


(……にしてもあの世って本当に何にもないな。ただフワフワするだけでする事がないし。)


(だったらさ、3人でいつまでも駄弁っていようよ。)


(うん、そうしよっか!)






























結局今回の出来事の黒幕は誰だったのか。



今となってはどうでもいい話。



もう書く必要のなくなった『一文字日記』。



もしも、再びその日記を書く時が訪れるならば、二度と悲劇を繰り返すことはないだろう。



果たして、少年少女が迎えたのはハッピーエンドか否か。



それは今も会話し続ける彼らのみぞ知る。

これにて『一文字日記』のお話は終了です。


一応この話にはアフターストーリーがあります。もし、その話を希望してくださる方は感想欄などにご自由にお書きください。

また、その他にも何かリクエストがございましたら、お伝えください。


最後まで読んで下さってありがとうございました。

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