この部屋は…………。
9月5日(金)
たいした傷じゃなくて良かった。あんな大げさに包帯なんか巻くから、深い所までザックリいってんのかと思ったけど。
ホントにアイツは心配メーカーだよな、呆れるほどに。
9月6日(土)
すごく疲れた。たいして何もしてないけどしんどかったから、榊原に夕食作ってもらってさっさと寝た。明日起きれるのか……?
にしても、身体が軽くなってきたのは気のせいだろうか。ちゃんと3食たべてるはずなんだが。
9月7日(日)
けいばの何が楽しいんだよ。ただムダに金かけて貧乏になっていくだけだろ。アイツが言うには『そのお金をかけるスリルが面白いんだよ。』って。
意味が分かんねえよ。金がへっていくだけなのにさ。
9月8日(月)
てんきが良い。だけどそとに出る気はなかった。すごく出たいはずなのに、体はうごく気が全くなかった。
俺の体は大じょう夫なのか?アイツもあんなに心配してくれているのにな。
9月9日(火)
さっそうと現れるヒーローってのがかっこいいと思っていたのはいつのことだっただろう。
こんな年頃になって、いまさらヒーローになりたいなんてって榊原に笑われた。いや、おれ自身がなりたいんじゃない。ヒーローにであってみたい。
9月10日(水)
かなりあせった。アイツ料理中にねるとかどんな神けいしてるんだよ。コンロの火がつけっぱなしとか、俺をころす気かよ。危なすぎて目がはなせないからな。しっかりちゅういしておこ。
9月11日(木)
きょうはいろんな本をずっと見てた。レシピ本とか、ずかんとか、ジャンルはバラバラだったけど、見てておもしろかった。
でも何であんなに持ってたんだよ。よけいなところで変だよな、アイツのそういうとこ。
9月12日(金)
ばく撃音で目がさめた。なにかと思い音がきこえた方に行ったら、一か所だけ黒こげになっていた。そこになにがあったのかわからないぐらいひどい有りさまで、ゾッとした。
榊原にきいても、なにも答えてくれない。ただ、『まだ知らなくてもいい』っていうだけ。まだってなに?
9月13日(土)
らくになれば?
そんな声があたまの中をよぎる。この声はまぎれもなくおれ自身の声だ。何も考えられないまま、きづけばベランダからま下をのぞいてた。榊原にとめられたから良かったけど、なんでおれが、そんなこと。
9月14日(日)
にこどう?とかいう動がサイトでボーッとひまつぶしをしてたんだけど、ふと『やんでれ』って言ばが気になった。で、しらべてみたら、あいてにしゅう着しすぎて心がやんでしまうことらしい。
…………あれ?この状きょう、どこかで……。え、まさか…………まじ?
9月15日(月)
これほどまでにたいくつなことがあっただろうか。
なにもできない。どこにも行けない。いそがしすぎるのも大変だけど、ヒマすぎるのもイヤだよな。はやく出たい、こんなとこ。
9月16日(火)
ろくなことがない。紙でゆびをきってしまった。はやく血をとめないといけないのに、一しゅん血のとめ方をわすれてた。すぐにおもい出してばんそうこうをとりにいった。けど、ばんそうこうがなかったから、しかたなくなめて血がとまるのをまった。
じぶんがどんどんおかしくなってるのがわかる。だめだ。しっかりしないといけない。だめだ、だめ、だめ。
9月17日(水)
さかきばらはいいやつだ。こわれかけているおれを見すてることもせずにせわをしてくれる。おれは、しあわせらしい。アイツがなんどもおれに言いきかせている。
でもわかる。おれは、ぜったいにしあわせなんかじゃない。おねがい。だれか、たすけて。
9月18日(木)
れんらくがぜんぜんとれてない。よしもとさんとはなしがしたい。よしもとさんにあいたい。なんで、おれがこんなめに。こんなせいかつ、もういや。
~吉本side~
「な、なにこれ……………!?」
日記はちょうど2週間前から書かれていた。
文面から、深瀬くんが相当危険なことは読み取れた。でも、それより気になったのは、
「なんで榊原くんが関係してるの……?」
榊原くんは深瀬くんのことを忘れるって言ってたし、深瀬くんは深瀬くんで行方不明になっていたはず。
もし、この辻褄を合わせるとしたら……………
「榊原くんが、深瀬くんを……ゆ、ゆうか………。」
そんな、ウソだ。そんなはずが……!!!
そのとき、日記の最後に、もう一日読んでなかったところがあった。日付は今日になっている。そこには、
9月19日(金)
る
とだけ書いてあった。
「る………?」
るって何?これが『一文字日記』の意味?
待って。一文字……………?一文字、一もじ、ひともじ…………………。
「………………………………!!!!!!!」
まさか…………!!
思い当たった節がある私は、バッとその日記を読み返した。
ま、間違いない……………。
じゃあ、この部屋は…………。
真正面にある扉は、意味が分かった途端、地獄の入り口のような気味悪さが漂ってきた。でも、日記が何を表しているかが分かったからには入らなくてはならない。
全てを悟りきった私は、ゆっくりと、ドアノブに手をかけた。