表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

のぞかないでね!

~吉本side~


榊原くんが住んでいるらしいアパートは広くはないけど小綺麗な所だった。

「何にもないけど休んでおきなよ。」

「うん。ありがとう。」

「じゃあ、僕ちょっと台所にいるけど、ゆっくりしててね。他の部屋まわっても良いよ。

あ、でも、一番奥のプレートがかかってる部屋はのぞかないでね!………恥ずかしいから。」

「分かってるよ。」



それからはお言葉に甘えてくつろいだ。そうしたら少しずつ落ち着いて来たので、もう一度冷静になって考えてみる。



深瀬くんは2週間前から学校を休み始めた。


その時にはすでに行方不明になっていた。


そして、おばさんはそれを知られたくなかったから、高熱とウソをつき、隠し続けた。


でも、結局はその不安感とストレスにより倒れ、救急車に運ばれた。



とりあえずここまでは整理出来た。でも、問題はここから。




深瀬くんはどこに行ったの?


深瀬くんは無事なの?


犯人はだれなの?




考えれば考えるほど疑問は募り、頭を痛めつけていく。


やっと落ち着いたと思った心がまたジクジクと疼いてくる。


「どう?落ち着いた?」

気づけば榊原くんがすぐそばにいて、ホットミルクを出してくれた。

「あ、ありがとう。」

「にしても、深瀬くんがね………。」

「榊原くんは何か知ってる?」

「いや、何も。引っ越しと同時に深瀬くんのことは忘れるつもりだったからね。」

「そっか…………。」

榊原くんも何も知らないんだ。ますます希望が失われていく。


「大丈夫?」

「……じゃ、ないみたい。」

「………ちょっとさ、気を紛らわすために一つ話をしようか。」

「話?」

「うん。とある男の話なんだけどね。とある国にある貴族の男がいたんだ。。で、その男は何人もの女性と結婚したんだけど、妻たちがみんな行方不明になっていった。」

「なんで?」

「後に分かるよ。それでその男はしばらく出かけることになった時、新たにできた妻に鍵を渡した。そしてこう言いつけた。『どこにでも自由に入っていいが、この鍵のかかった部屋だけは入ってはいけない。』と。」

「入るなって言われると入りたくなるよね。」

「そう。その妻も好奇心の誘惑に負けて、預かった鍵でその部屋を開けてしまったんだ。」

「それで、どうなったの?」

「はい、ここで一旦休憩。」

「えぇー、何で?」

「話の面白い所は後々言いたいタイプだからね。ちょっと、もう一回台所に戻るよ。」

そういって、ニヤリと笑うと榊原くんは立ち上がり部屋をあとにした。






榊原くんはなかなか戻ってこない。

そろそろ彼の言ってた話の続きが気になってきた。

続きを聞こうと榊原くんの様子を見に行くと……………

あ、あれっ。寝てる。台所の机でよく寝れるなあ……。



………………そういえば榊原くん、始めに『プレートのかかった部屋はのぞかないでね』とかいってたっけ。なんかさっきの男の話と似てるなぁ…。

もし、そこで私がその部屋に入ったらどうなるんだろう。


………………………。



あっさりと好奇心に負けた私は、足音を忍ばせて、こっそりとリビングを出て行った。




音を立てないように、ゆっくりその部屋に向かって歩いていると、プレートのかかった部屋が見えた。そのドアの横に、榊原くんのであろうカバンがあった。チャックが開いてるから、全部丸見えになってる。タオルに、水筒に、ノートに………





って、え……………………………??
















深瀬くんのノート………?



いやいや、まさか。このノート結構売れてるらしいし、たまたま色も一緒だった、そうだよね……。ねえ、お願いだからそうであってよ……。






自分の考えた可能性を否定出来ないまま、私は吸い込まれるようにそのノートに手をのばした。










そのノートのタイトルには、






『深瀬』と、






長い間会ってない彼の名前が書かれていた。








「……………な…………なん、で……………!?」


何で、深瀬くんの日記を榊原くんが持ってるの?


さらに、前までは空白だったタイトルのところに、





『一文字日記』





と、新たに書き加えられていた。


「…………?一文字でどうやって日記を書くの?」


タイトルの意味は分からなかったけど、もしかしたら、あの日からの日記が書かれているかもしれない。

意を決した私は恐る恐るノートを開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ