表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第九話

 長方形の箱に敷き詰められたチョコレートを一つ、口へ運ぶ。チョコは口内の熱でゆっくり溶け、舌の上にまんべんなく広がっていく。

「どう? おいしい?」

 すぐ隣に座った歩波が顔を覗き込んでくる。

「……(にが)い」

「うそ。甘いのをくださいって店員に言ったのよ。そんなはずないわ」

 机の上の箱に、横から手が伸びてくる。

 歩波は買ったチョコレートを自分の口に放り込んだ。ひとしきり味わったあと、不思議そうに首を傾げた。

「ちゃんと甘いじゃない。あんた、味覚までバカになっちゃったの?」

 ため息混じりに、横目が向けられる。言い方には棘があったが、不機嫌さは見られない。むしろ上機嫌だ。

 忍ちゃんを追いかけるため、校門に放置しようとしたときは珍しく本気で怒っていた。尾を引いても仕方がないと半ば覚悟していた。ところが校門に戻ってきた俺を見るなり、歩波は態度を一転させたのだった。薄く笑うばかりで、文句を一つとして言ってこない。俺の部屋に入ってからも、それは続いている。

 気味が悪いが、それが救いでもあった。恋人の機嫌を取っている余裕なんて、今の俺にはかけらも残っていない。視聴覚室を出てからずっと、頭の中は別の女のことで占められていた。

「キスってのは甘くて、楽しいものだと思ってたんだけど」

 視聴覚室での、後輩とのキスは夢だったのではないか? ついさっきの出来事のはずなのに、現実感を喪失していた。口腔内に残るビターな香りだけが、あれは本物だったと突きつけてくる。

「苦いキスもあるんだな」

 考えなしに言葉を垂れ流す唇に、歩波はそっと口づけで蓋をしてきた。

「かわいそうな錬」

 薄暗い部屋の中で、歩波の笑顔のところどころに陰が落ちていた。蠱惑的な笑みだ。誰でもいいから、むしょうに女を抱きたい気分になった。

 俺はその欲求に抗うことはしなかった。

 カーペットの上に、歩波の体を横たえた。どこに唇を寄せても、歩波は嬌声をあげ、受け入れてくれる。俺は逃げようとしていたのかもしれない。あるいは、忘れようと。しかしどれだけ恋人の体にキスをしても、忍ちゃんがくれたチョコレートの味は、いつまでも口の中から消えてくれなかった。

「もうグロい話は…普通の話が読みたいです」

知人にそんなことを言われ、書いてみたのが本作。作中で涙は出てきたけど血は流れなかったよ。俺だって普通の話書けたぜ!^ω^)ノシ

なにげに今年初めての小説です。

今年のバレンタインはチョコレートもらえるかな?

感想などございましたら、このサイトの感想ページに書いていただくか、ツイッターのほうまでリプください。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ