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確執の父子
御徒町一族は美女揃いで、しかも光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
馨は、自らの野望を成し遂げるために父親である太政大臣に頭を下げました。
しかし、息子の腹黒さをよく理解している太政大臣はまだ馨を信用してはいません。
「此度は、柏木への罪滅ぼしのため尽力するつもりです。何も他意はありませぬ」
馨は嘘の涙まで浮かべ、父親を篭絡しようとします。
(此奴が他人のために動くなどあり得ぬ。何か裏があるのだろうが、今は言うまい)
太政大臣も柏木を哀れと思っていたので、馨の提案に乗る事にしました。
「柏木に相応しい役職と官位を帝に奏上しよう」
太政大臣は居ずまいを正して告げました。
「ありがとうございます」
馨は頭を下げ、ニヤリとしました。
左京に太政大臣から柏木の件について文が来ました。
(内府め、何を企んでおるのだ?)
疑い深い元猿は思いました。
「前世の話はするな!」
左京は地の文に切れました。