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柏木、行方をくらます
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
匂の宮と柏木の五番勝負は匂の宮の勝利に終わりました。
柏木は誰もが声をかけるのを憚るくらい落ち込んでいて、左京ですら何も言えませんでした。
数日後、一向に参内しない柏木を心配した瑠里が侍女の茜と葵に命じて、様子を見に行かせました。
「柏木は旅に出ております」
柏木の父親が焦燥し切った顔で言いました。
茜と葵は驚き、瑠里の元に戻りました。
瑠里はその話を聞き、衝撃を受けました。
(柏木様……)
瑠里はその時、自分が柏木に惹かれているのを思い知りました。
「柏木様を探して。何としても」
瑠里は茜と葵に告げました。
でも、茜も葵も寄る年波であまりあちこちには出かけられません。
「そんな事はないです!」
話を大袈裟にする地の文に切れる茜と葵です。
「早速お探し致します」
葵と茜は大村の御息所の侍女をしている美咲にも話し、彼女達の仲間にも応援を頼みました。