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最終勝負
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
匂の宮はあまりの大差に衝撃を受け、項垂れていました。
(このままでは匂の宮が負けてしまう)
一計を案じた馨は、配下の者にある事を命じました。
最後の勝負は書です。どちらの書が良いできかを競います。
墨と筆と硯は朝廷で一般的に使われているものが用意されました。
筆や墨の良し悪しで勝負がついてはいけないからです。
匂の宮と柏木はそれぞれの席に向かいました。
「柏木様」
柏木に声をかけたのは馨の配下の者です。
しかし、柏木はそれを知りません。
「はい」
柏木は声に応じて振り返りました。
「瑠里様が先程から貴方様をごらんになっています。貴方様に勝っていただきたいようです」
配下の者はにこやかな顔で告げました。
「え?」
柏木の顔が真っ赤になりました。
(瑠里様が?)
確かに瑠里がこちらを見ていました。
柏木と目が合い、瑠里が微笑みました。
柏木は舞い上がってしまいました。