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波乱の香対決
御徒町一族は美女揃いで、しかも光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄でもあります。
匂の宮と柏木の焚いた香の匂いが辺りに立ち込める中、見届け人五人と帝、そして中宮の渚の審議が始まりました。
「帝君、どっちもいい匂いだから、引き分けでもいいかな?」
自由人の渚が帝に囁きました。
「それでもよろしいと思いますが。私は右の香の方が香りが奥深いと思います」
帝が言いました。すると渚は、
「じゃあ、私も右にするね」
それを聞いて苦笑いする帝です。
(お上の香に対するご見識は相当なものと聞く。ならば、そちらが我が息子の香だ)
二人の会話を聞いていた親バカ全開の馨は右を選ぶ事にしました。
「樹里様はどちらを選ばれますか?」
鼻が全然利かない元猿が尋ねました。
「前世の話はするな!」
ねちねちとしつこい○○のような地の文に切れる左京です。
「内緒です」
樹里は笑顔全開で応じました。
「そうなんですか」
左京は引きつり全開になりました。