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香対決
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
勝負は四戦目の香対決です。
それぞれが用意した香を焚き、見届け人と帝、そして中宮の渚にどちらが優れているか判定してもらいます。
(父上は今や匂の宮の養父。そして私、美子。左府と樹里様が柏木に味方したとしても我が方が有利だ)
匂の宮の実の父親である馨には勝算がありました。
「では二人共、香を焚きなさい」
太政大臣が告げました。
匂の宮と柏木はそれぞれ作ってきた香を焚きました。
「おお」
どちらからも芳醇な香りが漂い始めました。
(どちらが優れているかではない。柏木が勝たねばならぬのだ)
歪んだ判定をする気満々の左京ですが、
「どちらの香かは伏せた状態で判じていただきます」
立会人の貴族が言いました。
「え?」
ギクッとする馨と左京です。この元動物二人にはまともな嗅覚がないのです。
「前世の話をするな!」
見事にハモって切れる元猿と元馬です。