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次世代の貴族二人
御徒町一族は美女揃いで、しかも光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
太政大臣の仲裁で事は一気に進み、匂の宮と柏木の二人が瑠里を懸けて勝負をする事になりました。
「瑠里の気持ちも確かめませんと」
そう言って少しだけ抵抗してみせた左京でしたが、
「差し支えありませぬ」
瑠里が笑顔全開で承知してしまったので、項垂れました。
「柏木殿」
匂の宮は柏木を見ました。
「匂の宮殿」
柏木も匂の宮を見ました。
「手加減は致しませぬぞ」
匂の宮は微笑みました。
「それはこちらの台詞です」
柏木も微笑み返して告げました。
「そうなんですか」
見届け人の一人となった樹里は笑顔全開で応じました。
「姉上はどちらに勝って欲しいの?」
妹の冴里が瑠里に囁きました。瑠里は二人を見たまま、
「どちらにも負けて欲しくない」
意味深な事を言いました。
「そうなんですか」
冴里は大きく頷いて応じました。
「悔いを残す事なく、勝負しなさい」
太政大臣が二人に告げました。