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吏津玖の策略
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄でもあります。
元猫又の吏津玖の囁きにすっかり取り込まれてしまった柏木は吏津玖の言うがままになりかけていました。
(左府様がお味方くだされば、勝ったも同然)
柏木は妙な期待を抱き始めています。
左京如きが味方になっても、蟻にも勝てないと思う地の文です。
「うるさい!」
どこかで聞きつけた左京が地の文に切れました。
「さあ、早く左京のところに行くにゃん」
吏津玖はニヤリとして更に唆しました。
「はい」
柏木はぼやっとした顔になり、左京がいる部屋へと向かいました。
(次は左京を誑し込むにゃん)
吏津玖は先回りして、左京の部屋へ行きました。
「ご主人様」
まさに猫撫で声で左京に話しかける吏津玖です。
「何だ?」
左京はあからさまに警戒して吏津玖を見ました。
「瑠里様と匂の宮の婚儀を引き延ばすいい方法があるにゃん」
「何?」
身を乗り出す左京です。




