御徒町樹里の源氏物語（四百文字小説）

若菜（上）

左京、女達に説教される

　御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。

　左京は以前と同じく樹里と側室の面々に取り囲まれていました。

「左京様、お気持ちはわかりますが、瑠里様を独り占めにしようとするのはいけませぬ」

　側室の筆頭である龍子（りょうし）が言いました。

　麻耶と髪長は大きく頷いています。

「そうなんですか」

　樹里は笑顔全開です。

「はい……」

　反論の余地がない左京は項垂れ全開で応じました。

「瑠里様と匂の宮様との婚儀をお認めになりますね？」

　麻耶が左京に詰め寄りました。

「どうなのですか？」

　更に髪長が詰め寄ります。

「認めます……」

　左京は顔を引きつらせて応えました。

　龍子達は互いに微笑み合いました。

「そうなんですか」

　樹里は笑顔全開で応じました。

　侍女の茜が使いに走り、瑠里に伝えました。

　身支度を整え、家を出る寸前だった瑠里は、

「そうなんですか」

　拍子抜けして応じました。

（あーあ）

　次女の冴里はそれを知ってがっかりしました。