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瑠里、激怒する
御徒町一族は美人揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
匂の宮は言い逃れはできないと判断し、養父である太政大臣と養母である澄子に全てを話しました。
「そうか。左京殿は、瑠里殿を溺愛しておったからな。致し方あるまい。しばらく待つしかなかろう」
太政大臣は匂の宮を慰めました。
「はい……」
それでも気分は晴れない匂の宮です。
一方、瑠里は、柏木に匂の宮の事を「幼馴染」と言ってしまった事を後悔していました。
「瑠里様」
そんな瑠里に声をかけた者がいました。
「内府様」
それは匂の宮の実の父親である馨でした。馨は瑠里に近づき、
「左府様が匂の宮に婚儀はなかった事にしてくれとおっしゃったそうです」
「そんな!」
瑠里はようやく父が結婚を認めてくれたと思っていたので、驚愕しました。
「それで、匂の宮は意気消沈してしまったようです」
馨は瑠里の反応を見てニヤリとしました。
(父上!)
瑠里は左京に対して激しい怒りを感じました。