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左京、夢を見る
御徒町一族は美女揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
仕事を終えて邸に戻った左京は、その夜、夢を見ました。
「父上、お世話になりました」
長女の瑠里が嫁ぐ夢でした。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開です。
「そうなんですか」
次女の冴里も笑顔全開です。
「おめでとうございます」
侍女の茜とその娘の紅ともう一人の侍女の葵も喜んでいます。
「瑠里……」
一人左京は号泣していました。
「行かないでくれ、瑠里。ずっと私のそばにいておくれ!」
泣き叫ぶ左京ですが、瑠里は牛車に揺られて行ってしまいました。
「さあ、左京様、またお気張りくださいませ」
側室の龍子と麻耶、髪長が取り囲みました。
「ひいい!」
顔面蒼白になり、左京は気を失いました。
「左京様、如何なさいましたか?」
樹里に身体を揺すられ、左京は目を覚ましました。
(それにしても嫌な夢であった)
我に返り、布で汗を拭う左京です。