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匂の宮、気を取り直す
御徒町一族は美女揃いで、しかも光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
匂の宮は、いつかは夫婦にと考えている瑠里の父親の左京に、
「早う我が娘を娶めとってくれるか? さすれば、内府殿も口出しできなくなろう」
そう言われて、驚きました。左京は反対していると思っていたからです。
(左府様に認めていただけたのだ、心配要らぬ)
自分にそう言い聞かせると、匂の宮は仕事場に戻りました。
(結局、柏木殿と瑠里様が何を話していたのか、分からずじまいだ)
匂の宮はそれだけが気がかりでした。
一方、憧れの瑠里と話ができた柏木は有頂天になっていました。
(望みがある。瑠里様と匂の宮殿はまだ許婚という訳ではなさそうだ)
柏木は思い切って、匂の宮の事を瑠里に訊いたのです。すると瑠里は微笑んで、
「匂の宮様は幼馴染です」
恥ずかしさから、そう答えてしまいました。
それがいろいろと混乱を引き起こす元になると思う地の文です。




