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特盛、御所に乗り込む
御徒町一族は美女揃いで、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
馨に丸め込まれた左京は、馨の部屋に護と向かいました。
(父上は母上の事となると、冷静ではいられない)
護は父左京を哀れみました。
「美子は未だに左府様に心があるようです」
部屋に着くなり、馨は心にもない嘘を吐きました。
「え?」
顔を赤らめる左京です。早速樹里に知らせようと思う地の文です。
「やめろ!」
油断も隙もない地の文に血の涙を流して切れる左京です。
「悔しいのですが、仕方ありませぬ。私は二番手ですからね」
自嘲気味に告げる馨です。
(このお方は……)
護は馨の底知れぬ陰険さに気づき、身震いしそうです。
「内府! 我が娘に恥を掻かせるつもりか!?」
そこへいきなり牛丼屋さんが出前をして来ました。
「違う!」
同じボケをかますしつこい地の文に切れる平特盛です。
「と、特盛殿か?」
思わぬ人物の乱入に馨はたじろいでしまいました。