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馨、再び護に詰め寄る
御徒町一族は、光源氏の血を引く由緒正しき家柄です。
樹里と夫婦になった左京の嫡男である護は、実の母である美子の夫となった内大臣の馨に呼び出され、馨の部屋に行きました。
「護殿、気持ちは変わらぬか?」
馨は目だけ笑っていない笑顔で尋ねました。護は背筋をゾッとさせながら、
「はい。私は杉下家の長子で、嫡男です。内府様の養子にはなれませぬ」
「実の母が望んでいてもか?」
馨は目を細めました。護はその言葉にギクッとしました。
(母からそのような話を聞いた事はない)
聡明な護は馨が話を捏ち上げていると考えました。
鋭いと思う地の文です。そういうところは左京に似ていません。
「うるさい!」
真実を指摘した地の文に理不尽に切れる左京です。
「それは真の話でしょうか?」
護は馨を真っ直ぐに見て尋ねました。
思わず身じろいでしまう馨ですが、
「もちろんだ」
更に嘘を重ねました。外道だと思う地の文です。